スペイン・バルセロナ発のハードウェアメーカー OXI Instruments は、2021 年の Indiegogo クラウドファンディングで目標額をわずか数時間でクリアし、一気にシンセ界の注目を集めました。その勢いを保ったまま、2025年4月に後継機 OXI ONE MKII を正式発表。Superbooth 25(5 月・ベルリン)での実機展示を控え、早くもコミュニティが沸いています。

OXI ONEとは、最大 64(mkⅠは32) トラックを 128 個の RGB パッドで直感的に操るポータブル・ハードウェア・シーケンサー。内蔵バッテリー、Bluetooth MIDI、USB‑C、そして 8 CV/Gate を備え、モジュラー、DAW、iOS デバイスを 1 台で束ねられる“持ち運べる司令塔”として 2022 年に製品化されました。その機動力と多機能性により、スタジオの作曲からステージの即興演奏までシームレスに対応できる点が高く評価されています。

 

何が新しくなったのか

 

MKII は外寸をほぼ据え置いたまま機能を底上げしました。具体的には 8 トラック化、8 CV+8 Gate 出力(Pipe MKII 使用時)、大型 OLED、micro-SD ストレージ、改良バッテリーメーターなど。「ハードを 1 台で完結させたい」派にとって、まさに“拡張性=余裕”を直接もたらすアップデートです。

主な強化点

  • トラック数:4 → 8
  • CV/Gate:4 系統 → 8 系統
  • ストレージ:本体のみ → micro-SD 対応
  • 表示:小型 OLED → 大型・高解像 OLED
  • 新ファーム:Repetition Engine、強化 Arranger ほか

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ドイツWaldorfの人気シンセサイザー「Blofeld」が、ついにiPad向けアプリとして登場しました。往年の名機のサウンドを、モバイル環境で気軽に楽しめる時代の到来です。

Blofeldは、ドイツのWaldorf社が2008年にリリースしたウェーブテーブル・シンセで、PPG系のDNAを受け継いだ音作りが特徴。透き通ったベルのような音から、エッジの効いたデジタルサウンド、濃厚なアナログ風の音色まで、個性的で奥深いサウンドで今なお現役マシンとして愛されています。

今回のiPad版は、そのBlofeld本来のサウンドエンジンをそのまま移植し、タッチ操作やAUv3対応DAWとの連携に最適化。Logic Pro for iPadやCubasis 3などの環境でシームレスに使用できるほか、Blofeldハードウェアのリモートコントロールにも対応しています。

もちろん、プリセットブラウザや16パート・マルチモード、モジュレーションマトリクス、アルペジエーター、サンプルインポートなどの主要機能も網羅。まさに“iPad版でも妥協なし”といった内容です。

驚くべきはその価格。App Storeで12.99ドル(日本円で2,000円)という手に取りやすさです。一方で、デスクトップ版(VST/AU/AAX対応)は以前から149ユーロで販売されており、そしてさらに、ハードウェア版のBlofeld Desktopは約539ユーロ、キーボード版は約829ユーロで現在も販売されています。その価格差は確かに大きいですが、音作りの柔軟性、操作感、そして制作スタイルによって、どの形態にもそれぞれの魅力があります。

手軽にBlofeldのサウンドに触れてみたい人にとって、iPad版はまさに理想的な入口かもしれません。

 

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ドイツ・ミュンヘンのメーカーNeuzeit Instrumentsから、ライブパフォーマー向けの新しいスタンドアロンMIDIコントローラー「DROP」が発表されました。メーカーの発表によると、この製品は“スナップショット”というユニークなコンセプトを中心に、複雑なハードウェアセットアップをより直感的にコントロールできるよう設計されているようです。

最大の注目ポイントは、機材の状態をまるごと保存・呼び出しできるスナップショット機能。さらに、スナップショットをあらかじめタイミング指定して発動させる「DROP」モードでは、たとえばビルドアップの間に設定を準備しておき、次の小節頭でベースが戻ってくる──そんな展開を自動で演出できるとのこと。即時切り替えやフェードにも対応する「JUMP」モードと組み合わせることで、より柔軟でダイナミックなパフォーマンスが可能になりそうです。

 

 

インターフェースも充実していて、32のエンコーダーや8つのフェーダー、マクロマッピング、MIDIのディレイ調整、CV In/Out端子など、細かな部分までこだわりが見られます。Ableton Liveとの連携にも対応しているとのことで、DAWを使ったセットアップにも向いていそうです。

ただし、あくまで現時点ではメーカー発表の情報に基づいた内容であり、実際の操作感や反応速度、直感的な使い勝手などは、やはり実機に触れてみなければわかりません。実機は2025年5月8日からベルリンで開催されるSuperboothで初公開予定ということで、私自身もこのイベントで実際にDROPを試せるのをとても楽しみにしています。

スナップショットによるライブ演出の自動化という新しいアプローチが、どのような可能性を広げてくれるのか。実機に触れてみた感想も、改めてレポートできればと思っています。

 

neuzeit instrumnets

 

 

Arturia V Collection 11に収録された新音源「Pure LoFi」は、従来のエミュレーションとは一線を画す、Augmentedシリーズの流れを汲む新しいアプローチのプラグインです。この音源は、ワウやフラッター、ノイズ、アナログ感、デジタルのざらつきなど、LoFi音楽のキーワードを網羅しており、LoFi好きが「こういうのが欲しい!」と思う要素が詰まっています。

まさに「音のスケッチブック」のような存在で、アイデアをすぐに形にできる柔軟性と親しみやすさがあります。このプラグインを使っていると、早速LoFiトラックを作りたくなってくることでしょう。

同じくLoFiサウンドに特化したBaby AudioのBA-1と比較すると、BA-1はYamaha CS-01をベースにしたシンプルで直感的な操作性が特徴で、内蔵スピーカーやバッテリーの劣化を再現することで、独特のLoFi感を演出します。一方、Pure LoFiはより多機能で、サウンドデザインの幅が広く、より多彩なLoFiサウンドを追求できます。

 

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Sonic AcademyのSonic Soundsシリーズから、革新的なリバーブ・プラグイン「Vela(ヴェラ)」が登場。現在、誰でも試せるオープンベータ版が公開中です。

「Vela」は、従来のコンボリューション(畳み込み)方式やインパルスレスポンス(IR)に依存しない、新しいアプローチを採用。ノードベース構造による柔軟なリバーブ設計と、グラフィカルなインターフェースによる直感的な操作性を両立したプラグインです。

 

従来とは異なるアプローチ

Velaでは、アーリーリフレクション(初期反射)とレイトリフレクション(後期反射)を個別にコントロールでき、密度やディケイ、ダンピングフィルターといったパラメーターを時間の経過に沿ってエンベロープで細かく調整することが可能。カーブを描くような操作で、滑らかで自然なリバーブテールを直感的に作り上げることができます。

さらに、Lexicon、Bricasti、TC Electronicなどの有名ハードウェア・リバーブのサウンドを、IRを使用せずアルゴリズムベースで再現。プリセットとして用いるだけでなく、そこから自由にサウンドを発展させていける柔軟性も備えています。

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ふとした瞬間に流れ出し、いつまでも止まらない「あの曲」。頭の中で延々とリピートされ、気づけばつい口ずさんでしまっている…。あるいは、メロディが脳内で勝手に再生され続け、集中できなくなったり、イライラしたり。音楽制作に取り組んでいる方なら、きっと一度は経験したことがあるのではないでしょうか。

日本語では「頭から離れない曲」や「脳内で再生されるメロディ」といった説明的な表現が使われますが、英語ではこの現象にイヤーワーム(Earworm)──“耳のミミズ”というちょっとユニークな名前がついています。

このイヤーワーム現象について、アメリカの科学メディア Scientific American のポッドキャスト「Science Quickly」では、脳と記憶、感情の関係性などを交えながら、科学的な視点で深掘りしています。

 

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