昨日(2025/5/28)Logic Pro 11.2 および iPad 2.2 のアップデートがリリースされました。今回のバージョンでは、派手な新機能こそ少ないものの、日々Logicを使い込むユーザーにとって”待ってました”と言いたくなるような、地に足のついた改良が詰まっています。

 

Stem Splitterの進化

Stem Splitterは単一のオーディオファイルからボーカル、ドラム、ベース、そしてそれ以外のパートを分離するという、今流行りの便利な機能ですが、新バージョン11.2では、新たにギターとピアノのステムも抽出可能になりました。

さらに、アカペラやインストゥルメンタルなどのプリセットを選ぶことで、目的に応じた抽出がワンクリックで可能。Submix機能を使えば、ボーカルと伴奏を分けたり、ドラムとベースのみのパート練習用トラックを作ることも簡単です。

この機能の進化により、耳コピやバンド練習への活用が格段に現実的になりました。

好きな曲からギターパートだけを取り出して個人練習したり、ピアノ伴奏だけを抽出してボーカル練習に使ったりと、オーディオ教材としての活用範囲も広がります。

加えて、リミックスやサンプル抽出、作曲の分析用途にも便利で、プロ・アマ問わず多くのクリエイターにとって強力なツールとなるでしょう。

使い方

  1. オーディオリージョンを右クリック
  2. [処理] > [Stem Splitter]を選択
  3. 出力したいパートやプリセットを選んで実行

Flashback Capture の強化

Logicでは以前から「Capture Recording」という名称で、録音ボタンを押し忘れてもMIDIパフォーマンスを後から呼び出せる機能がありました。今回のアップデートでは、これが大きく進化。オーディオ演奏も同様にキャプチャできるようになり、録音ミスのリスクが大幅に減りました。

特に注目すべきは、Cycleモード中の演奏も複数テイクとして自動で記録され、テイクフォルダに整理される点です。これは以前はMIDIに限られていた動作で、オーディオ対応は初となります。オーディオの場合、対象トラックを録音待機状態(Record Armed)にしておく必要はありますが、録音ボタン自体は押す必要がありません。

iPad版にも同様に搭載されており、外出先の制作やモバイル環境での即興にもぴったりの機能です。

 

使い方

[コントロールバーとディスプレイをカスタマイズ]>[Flashback Capture]にチェック

[コントロールバー]に表示されている[Flashback Capture]をオン

 

トラックを検索および選択

プロジェクトのトラックが増えてくると、目的のトラックを見つけるのに手間がかかることがよくあります。

この新機能を使えば、名前や番号を入力するだけで、そのトラックをすぐに検索、選択することができます。

Mac版:デフォルトではキーコマンドは割り当てられていませんが、[キーコマンド設定]から「検索」に任意のショートカットを設定して使えます。

iPad版:トラックエリア上部の虫眼鏡アイコンをタップし、名前や番号を入力することでトラックをすばやく選択可能。

 

Ableton LinkとMIDIクロックの同時使用が可能に

これまでLogicでは、Ableton LinkとMIDIクロック出力はどちらか一方しか使用できず、Linkを有効にするとMIDIクロックがオフになるという制限がありました。

今回のアップデートでは、Ableton Linkによるテンポ共有と、MIDIクロックによる外部機材との同期を同時に行うことが可能になりました。これにより、iPadや他のコンピュータとのセッションをLinkでつなぎながら、ドラムマシンやシンセなど外部MIDI機材へクロック信号を送ることができます。

これは、ライブパフォーマンスや複数デバイス連携において非常に大きな進化です。

 

iPad専用:MIDI Learn 機能の追加

iPad版Logic Proにも待望のMIDI Learnが搭載され、外部MIDIコントローラーとの連携が大幅に強化されました。

使い方はシンプルで、画面右上のメニューボタンから「Learn MIDI」を選択し、Logic内で操作したいコントロールを動かしてから、実際のMIDIコントローラー上のノブやフェーダーを動かすだけ。瞬時にアサインが完了します。

Logicの名プラグイン音源「Sculpture」をMIDIコントローラで徹底操作するのも楽しいに違いありません。

 

メーター表示とロングフェーダーの改善

ミキサー操作の視認性と精度が向上しました。まず、マスターボリュームフェーダーを非表示にしても出力レベルメーターだけを表示できる新オプションが追加され、プロジェクト全体の音量監視がしやすくなっています。

さらに、ミキサーの「表示」メニューからロングフェーダーを選択することで、各トラックのフェーダーが縦に倍の長さになり、より細かな音量調整が可能に。これは物理ミキサーで言うところの100mmフェーダーに近い操作感で、特に細かいレベル設定が求められるミックス作業に効果的です。

使い方

ミキサー画面から[表示]>[ロングフェーダーー]にチェック

 

 

Writing Tools(AIライティング支援機能)

Apple Intelligenceを活用したライティング機能が、プロジェクトノートやトラックノートに統合されました。これにより、要点の要約、文の校正、リストや表の生成、さらには歌詞の創作まで支援が受けられます。

iPad版を含め、Apple Siliconチップ搭載のMac環境でも利用可能。従来のメモ機能が、実用的なアシスタントに進化しました。

 

Quantec Room Simulatorの改良

高品位なリバーブ「QRS」に、実用的なパラメータが追加。初期反射の位相反転Drive設定で空間演出の自由度が向上し、相関メーターのON/OFF切替にも対応。iPad版でも同等の機能を利用可能です。

 

ステップシーケンサーの強化(Mac / iPad)

各ステップにMIDIチャンネル/アーティキュレーションIDを設定可能になり、複雑なビートにも対応。再生頻度制御マルチタッチによるランプ生成変則拍子対応など、iPadでも直感的かつ柔軟に使えます。

 

Dolby Atmos / 空間オーディオの強化(Mac)

今回のアップデートでは、Dolby Atmosや空間オーディオ制作の操作性がさらに向上しました。

ミキサー内のパンナーにエレベーション(高さ)調整用スライダーが追加され、上下方向の音像配置がより直感的に可能に。また、Apple Rendererの設定が整理され、音楽/映画モードの切り替えHead Trackingの有無をシンプルに選べるようになりました。

さらに、2.0 Directモニタリング方式により、Atmosミックスのステレオ確認・バウンスも手軽に行えます。Atmosとステレオの制作を一貫して進めやすくなった点が特に実用的です。

 

新しいサウンドパックの追加

音源やループ素材の面でも、新しいインスピレーションを呼び込むサウンドパックがいくつか追加されました。

  • Dancefloor Rush(Mac / iPad 対応)
    プロ仕様のドラムンベース系ループ、400以上のダイナミックなリズム素材やLive Loopsグリッドが収録されており、即戦力のビート制作が可能です。
  • Magnetic Imperfections(Mac限定)
    アナログテープのざらつきや温かみを再現したローファイテクスチャ。エフェクトやサウンドデザイン用途に最適。
  • Tosin Abasi Pack(Mac限定)
    プログレッシブメタルギターの先駆者、Tosin Abasiによる個性的なリフや奏法、Boutique Ampサウンドを収録。ギター制作に新たな風をもたらします。

 

まとめ

Logic Pro 11.2 / iPad 2.2のアップデートは、見た目の派手さよりも「日々の制作現場に効く実用性」を重視した内容が中心です。特に上級ユーザーにとっては、煩わしかった操作がスマートになり、創作の流れを妨げない設計が随所に見られます。

MIDIとオーディオ両対応のFlashback Capture、強化されたStem Splitter、トラック検索の効率化、そしてライブや同期環境に必須のLink+MIDI Clock併用など、どれも地味ながら制作の現場に直結する“気の利いた進化”です。

iPad版の進化も見逃せず、もはやモバイル版という枠を超えて「本格的な制作ツール」として信頼できるレベルに達しています。

これからLogic Proを導入する方にも、長年使い込んでいる方にも、間違いなく恩恵のあるアップデートです!

 

Logic Pro 11.2

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