
AIによる楽曲生成サービスで注目を集めているSunoが、ブラウザ上で動作する高機能DAW「WavTool」を買収したことを6月26日に発表しました。
WavToolは、VSTプラグイン対応、ライブ録音、サンプル単位の編集、ステム分離、MIDI自動生成などを備えたプロ仕様のブラウザDAWです。さらに、リアルタイムで音楽制作をサポートするチャットボット機能も搭載しています。
実はこのWavTool、2023年末頃から数ヶ月間オフライン状態となっており、ユーザーの間では再開が待たれていました。今回の買収発表によって、それがSunoとの統合に向けた準備期間だったことが明らかになりました。
SunoはこのWavToolを自社のAI音楽生成システムに統合し、作曲から編集までを一体化したプラットフォームへと進化を図ろうとしている様子です。
Suno共同創業者でCEOのMikey Shulman氏はこう語っています:
「Sunoの初期ユーザーにはプロの作曲家やプロデューサーが多く、AIを取り入れることで新しい創造の形が生まれている」
「WavToolの優れた技術とチームを迎えることで、私たちのビジョンをさらに前進させられる」
WavToolの元CEO Sam Watkinson氏も、「Sunoの価値観とビジョンは自分たちと完全に一致している」とコメントしています。
ただし、現在は著作権訴訟の真っ只中
Sunoは現在、AIモデルの学習に無断で楽曲を使用したとして、以下2つの著作権訴訟を抱えています:
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大手レーベル(Sony、Warner、Universal)による訴訟(2024年より進行中)
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インディーズアーティストによるクラスアクション訴訟(Tony Justice氏らが提起、2025年6月)
Sunoは「公に利用可能な音源を使った」としてフェアユースを主張していますが、問題は今も継続中です。一方で、レーベル側とライセンス契約や出資の交渉も進行しているとの報道もあり、法廷とビジネスの両面での駆け引きが見られます。
急拡大するAI音楽とDAW市場
Sunoは2024年春、1億2500万ドルを調達し、企業評価額は5億ドルに。
DAW市場自体も2024年時点で41億ドル、2032年には66億ドル超に達する見込みとされており(Grand View Research調べ)、今回の買収はその成長を見据えた動きともいえます。
また、Sunoは2024年より自社プラットフォーム上の楽曲制作者に報酬を分配する制度も開始。6月には上位500曲に10万ドルを分配したと発表されています。
AI時代の「音楽制作環境」はどう変わる?
WavToolやUdioのようなAIベースのツールの登場により、音楽制作のハードルは急速に下がりつつあります。
これまで必要だった機材や専門知識がなくても、テキスト入力や直感的な操作で作曲・編集ができるようになり、誰もが音楽づくりに参加できる時代が始まっています。
AIはコード進行やメロディを提案したり、セクションを自動で分けたり、歌詞を差し替えたりと、人の創造性を補完・拡張する存在になりつつあります。
一方で、著作権や倫理面の課題も浮上しています。
誰の作品を参考にしたのか、AI生成物に誰が責任を持つのか――こうした問いも同時に問われるようになっています。
音楽制作は今、大きな転換点にあります。
AIは“特別な人だけの作業”だった音楽づくりを、もっと身近で自由なものに変えようとしているのです。
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