SpotifyでDJが再び可能に
長らく封じられていた Spotify と DJ ソフトの連携、統合が、ついに復活しました。
対応を発表したのは rekordbox(AlphaTheta/Pioneer DJ)、Serato DJ Pro / Lite、そして Algoriddim djay。
この3つが同時にSpotify Premiumと連携し、1億曲以上のカタログをDJソフトに直接読み込んでミックスできるようになったのです。
しかも、この統合は 日本を含む世界51の国と地域 で一斉に展開されると公式に発表されています。
(今回の連携に Native Instruments Traktor の名前はありません。
TraktorはすでにBeatport/TIDAL/SoundCloud対応を持っていますが、Spotifyには未対応。今後どう動くか大いに注目です。)
制約と条件
ただし、今回の解禁にはいくつかの条件が付いています。利用できるのはSpotify Premium加入者に限られ、ストリーミング再生のみでオフライン保存はできません。常にインターネット接続が必要となり、さらにSpotifyの利用規約は個人向けを前提としているため、クラブやフェスといった商用現場での使用には依然としてリスクが残ります。つまり、この機能は練習や配信、趣味の範囲で楽しむことを想定したものだと考えたほうが現実的です。
ライセンス問題はどうなった?
SpotifyとDJソフトの連携が長く止まっていた理由は、著作権と利用許諾の問題に問題にあると言われてきました。ストリーミングの契約は本来「個人で聴くため」に限定されており、クラブやイベントでかけるには別の権利処理が必要でした。Spotifyはその点をクリアできず、2019年に一度連携を断念しています。
今回の復活は、権利者と調整を重ねた結果、「個人利用の範囲であれば認める」という条件付きで合意に達したことを示しています。そのため公式発表でも「自宅でのDJ体験」「プレイリストをミックス」といった言葉が使われており、商用現場での自由な利用を認めるものではありません。
Spotifyを巡るもう一つの揺れ
DJにとっては朗報となったSpotify復活ですが、同時にSpotifyはイスラエル問題をめぐる論争の中に揺れています。
英国のMassive Attackは、Spotify CEOダニエル・エクが軍事AI企業に投資していることを理由に、自らの音楽をSpotifyから撤退させると発表しました。「No Music for Genocide」というキャンペーンには400人以上のアーティストが参加し、イスラエル国内で自分たちの曲を配信停止するよう求めています。Spotify側は「軍事企業とSpotifyは別会社」と説明していますが、アーティストたちは「自分たちの楽曲やファンの支払いが、間接的に戦争や武器に加担してしまう」と批判しています。
Spotifyは技術的にDJの可能性を広げながらも、政治や倫理をめぐる問題で大きく揺れているのです。
Spotifyがrekordbox・Serato・djayに戻ってきたことは、DJにとって非常に大きなニュースです。日本を含む51カ国で解禁され、条件付きながらも準備や配信環境に新たな可能性をもたらしました。
ただし同時に、Spotifyはイスラエル問題やCEOの軍事企業投資をめぐって批判にさらされています。便利さと倫理性、その両方をどう捉えるか――DJや音楽ファンにとっても、考えさせられる時期に来ているのかもしれません。
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