OneLibrary は AlphaTheta(旧 Pioneer DJ)が主導する、DJソフトとスタンドアロン機材をまたいでライブラリを共有できる新しい規格です。ポイントはこの2つだけ。
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USBメモリに書き出した曲データ(キュー/グリッド/プレイリストなど)を共通化できること
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ソフト → 機材 → ソフトへ“往復できる”(双方向性)
つまり、
「USBメモリひとつで、ブランドを気にせずDJできる未来を作ろう」
という取り組みです。
ストリーミングが主流になり、クラウドDJという言葉も広まりつつある今でも、クラブの現場で最も信頼されているのはUSBメモリです。ネット環境に依存せず、挿すだけで音が出る。そのシンプルさと確実性は、今なお揺らいでいません。
この*音楽を持ち運べる感覚”を次の時代へアップデートしようとしているのが OneLibrary です。
対応ソフト(USBエクスポート対応)
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rekordbox:対応済み
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djay Pro(Algoriddim):対応済み
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Traktor Pro 4 / Traktor Play:対応予定(公式発表済・実装待ち)
*おっと、Serato / Engine DJ は現時点では参加の表明がありません。
対応ハード(USBメモリで読み取り可能)
対応ハード(USBメモリで読み取り可能な機種)
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CDJ-3000X:対応
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CDJ-3000:対応(ファームウェア3.30以上)
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OPUS-QUAD:対応
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OMNIS-DUO:対応
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XDJ-XZ / XDJ-AZ:対応(機種によりファームウェア条件あり)
**クラブの標準機である CDJ-3000 が対応している点は大きい。一方で CDJ-2000NXS2 など旧世代機は非対応。
クラブスタンダードの次世代機「alphatheta-cdj-3000x」登場!
USBメモリが変えるのは「持ち運び方」そのもの
OneLibraryを単なる互換機能として見ると小さく見えてしまいます。
しかし本質は、
USBメモリで“自分の音楽環境そのもの”を持ち運べる未来
を作ろうとしている点にあります。
クラウドは便利ですが、通信やアカウントが前提になります。
対して USBメモリは、
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電波不要
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ログイン不要
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どこでも確実
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人に渡せる/引き継げる
という“物理的自由”を持っています。
期待できる未来
OneLibraryが広がれば、DJの在り方そのものが変わります。
自宅では、自分に合ったソフトやDTM環境で準備し、
移動中や外出先では iPhoneやiPadでも同じライブラリを開いてプレイリストを編集したり、ちょっとした仕込みができる。
そして、クラブやイベントではその場所の機材にUSBメモリを挿すだけで、同じライブラリが再現される。途中で機材やソフトを変えても、積み重ねたライブラリは 資産として生き続ける。
つまりこれからは、機材に合わせてDJが活動を縛られるのではなく、DJが自分の音楽を軸に環境を選べる時代へ近づいていくはずです。
ただし、まだ道なかば
ただし、まだ課題も少なくありません。対応しているソフトや機材は限られており、Serato や Engine DJ は現時点でこの構想の外側にいます。また各ソフトは独自のデータ構造やアナライズ手法を持っているため、キューやビートグリッドを完全に一致させるには技術的なハードルが残っています。さらにMP3のエンコード/デコードの違いによって、楽曲の波形がわずかに変化し、キューやグリッドが数十ミリ秒単位でズレるケースが報告されており、プロDJにとっては無視できない問題です。実際、公式FAQにも「ソフト間の完全互換性は保証されない」と明記されており、双方向の完全再現は“実装に向かう途中の思想”に過ぎないことがわかります。
まとめ──USBメモリはもう一度「自由の象徴」になれるか
OneLibraryは、USBメモリの中に共通の音楽データベースを作る仕組みです。USBが“橋”となり、djayやTraktorで作ったプレイリストも、rekordboxで打ったキューも、CDJで更新した履歴も、ひとつのライブラリとして紐づき続ける世界を目指しています。
面倒だったiOSへの持ち込みや他ソフトへの移行も、USBメモリひとつで現実的なフローになります。
そして興味深いのは、AI DJやストリーミングが話題になっても、曲を選ぶのは人間のままだということです。
レコードを抱えていた時代も、
CDを焼いて持ち歩いた時代も、
USBメモリに変わっても、
本質はずっと同じ。
「自分で選んだ音楽を、自分の手で持ち運ぶこと。」
OneLibraryは、その文化を途切れさせず、次の形へつなぐための仕組みと言えます。



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