Ableton Live × Splice 統合ガイド【2025年版】


“音を探す”と“作る”が同じ場所で完結する時代

私は現在、Ableton Live 12.3のベータ版を試していますが、Spliceとの統合は本当にありがたい機能です。

これまでブラウザ版を開いて音を探し、ダウンロードして、フォルダに入れて……という流れを繰り返してきた人にとって、どれほど作業が効率化されたか計り知れません。

アイデアに行き詰まったとき、私はよくSpliceを開きます。ボーカルサンプルを載せてみたり、ホーンセクションやストリングスのフレーズを差し込んでみたり。そのまま使うこともあれば、スケッチとして保存しておくこともあります。チョップしたり、MIDI 変換してタイミングだけ使ってみることもあります。

そんな“音の実験場”が、いまやLiveの中にそのまま組み込まれました。制作の流れを止めずに、思いついた瞬間に音を探して試せる――それがこのアップデートのいちばんの魅力です。

1. Splice連携とは何か

Ableton Live 12.3では、SpliceのサウンドブラウザがLive内に直接統合されました。外部アプリやブラウザを開く必要はもうありません。

左側のブラウザーに「Splice」という項目が追加され、そこからサンプルの検索、試聴、ドラッグ&ドロップまで、すべてLive内で完結します。

試聴時にはテンポとキーが自動的にLiveプロジェクトに合わせられるため、素材の「馴染み方」をその場で確認できます。

2. セットアップ手順

  1. Spliceアカウントを作成(初めての方)

     まだSpliceを使ったことがない場合は、先に公式サイトでアカウントを作っておきましょう。

     Splice公式サイト

     メールアドレス、Google、またはApple IDで無料登録可能です。

     ※サウンドのダウンロードや利用には有料プランへの加入が必要です。

  2. Ableton Live 12.3 Betaを起動

     左側のBrowserに「Splice」タブが自動で表示されます。

  3. 初回のみSpliceにサインイン

     「Sign in to Splice」と表示されたら、作成済みのアカウントでログイン。認証が完了すると、Spliceライブラリにアクセスできるようになります。

3. 検索・試聴・ドラッグの使い方

LiveのSpliceブラウザーには、音を探すための複数の入り口が用意されています。上から順に、目的別にカテゴリを選んで検索できます。

上から順に並ぶ検索項目

  1. Search Splice

     キーワード検索欄。

     「vocal chop」「acid bass」「jazz piano」「cinematic impact」などを入力すると、Spliceライブラリ全体から即座に結果が表示されます。英語のみ

  2. Instruments(楽器)

     ドラム、ベース、シンセ、ピアノ、ギター、ボーカルなど、楽器別に分類。特定パートの音を探したいときに便利です。

  3. Genres(ジャンル)

     House、Techno、Trap、Ambient、Cinematicなど、ジャンルごとに素材を絞り込めます。制作中のトラックの方向性に合わせて探せるのが魅力です。

  4. Cinematic FX(効果音)

     インパクト音、ライザー、トランジション、ドアの開け閉め、人通り、など、展開や演出に使える効果音カテゴリがたくさん。

  5. Search with Sound

     画面下部にサンプルをドラッグすると、その音に似た素材をSpliceライブラリから自動で検索してくれます。「この音に近い別のバリエーションが欲しい」ときに重宝します。

試聴とドラッグ

  • ▶️ をクリックして試聴。

  • 試聴はLiveのテンポとキーに自動で合わせて再生されます。ループ素材ならテンポストレッチ、メロディ素材なら自動的にトランスポーズされます。設定はSplice画面下の方にあります。

  • 気に入ったサンプルが見つかったら、サンプルタイトルをそのままLiveのトラックにドラッグしましょう。Audioトラックならクリップとして、Drum RackやSimplerにも直接ロード可能です。これで作業完了!なんて便利。

  • 一度使用したサンプルは自動でキャッシュされ、次回以降はオフラインでも利用できます。

 

4. 実際に使って感じたメリット

  • ブラウザを切り替える必要がない。すべてがLive内で完結し、作業の流れが途切れない。

  • テンポ・キー・ジャンル・楽器が自動で一致し、“今作っている曲に合う音”を瞬時に確認できる。

  • “Search with Sound”で似た音をすぐ探せる。テキストでは表現しにくい音の質感も耳で検索可能。

  • 制作スピードが大幅にアップ。音探しから配置までの手数が減り、時間の節約につながる。

Splice統合によって、Liveは「音を探してから作る」ソフトではなく、「作りながら音を探せる」ソフトになりました。結果として、制作の流れが止まらず、作業効率が大きく向上します。

 

5. 注意点と現状の制限(Beta版時点)

  • 現在はAbleton Live 12.3 Beta限定機能(正式版は今後公開予定)。

  • 対応素材はオーディオ(ループ/ワンショット)のみ。

  • インターネット接続が必須(検索・試聴時)。

  • 稀にLive再生中にSplice素材をドラッグするとクラッシュするケースあり。

     → 再生を止めてから配置すれば安定。正式版での改善を期待したいところです。

 

6. Splice プラン(2025年11月現在)

最新のプランと価格は公式サイトで確認できます。

Splice公式プランページ

参考(2025年11月時点の目安)

プラン名   月額(USD)   内容概要
————————————————–
Sounds+    約$12.99/月   毎月100クレジット、サウンド無制限アクセス
Creator    約$19.99/月   200クレジット、AI検索・拡張機能対応
Creator+   約$39.99/月   500クレジット、上位機能すべて搭載
学生割引   約$8.99/月   Sounds+の学生向けディスカウントプラン
————————————————–

 

7. まとめ:制作の“時間”を取り戻すアップデート

Spliceとの統合によって、Ableton Liveはもはや外部音源を扱うだけのDAWではなく、音を探す・試す・使うがすべて1つの画面で完結する制作環境になりました。

テンポやキーを合わせる手間がなくなり、ブラウザを行き来する時間も不要。結果として、制作全体のスピードと集中力が格段に上がります。

Beta版ではまだ安定性に課題が残るものの、この統合がもたらす“時間の節約”と“作業効率化”はすでに明確です。正式リリース後には、Liveがさらに快適な制作環境として進化していくはずです。

Splice連携は、音探しにかかっていた時間を制作時間に変えてくれる。それがこのアップデートの本当の価値です。

 

参考リンク


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