今日は、前から気になっていたAIツール「MicroMusic」を、プラグインシンセVitalと組み合わせて試してみました。オーディオファイルを食わせると、Vital用のプリセットを自動生成してくれるという、少しニッチな「オーディオ→シンセプリセット」型のAIツールです。
画面上では、PLUCK / PAD / SUPERSAW / PWM / PRESET BANKといったAIモデルを選べるようになっていて、それぞれ別々のプリセット群で学習された“キャラ違いのエンジン”になっているようです。
Macの場合はブラウザから使えるWeb版(無償)があるので、サイトを開いて、コピーしたい音色のオーディオファイル(ワンショットでもループでもOK)をそのままドラッグ&ドロップするだけでスタートできます。 まとまった楽曲ファイルをそのまま放り込んだ場合は、内部で自動的にステム分離が走り、取り出された各パートごとにプリセットを生成させることも可能です。 Web版の無料プランでは設定はかなりシンプルで、オーディオを放り込むと自動的に5つのVitalプリセットが生成される仕様になっており、「とりあえず候補を5つくれるAI耳コピツール」と考えると、最初の入り口としては十分遊べる印象です。
有料版 (Replicate) にアップグレードすると、生成するプリセット数を指定できるほか、VitalだけでなくSerumやSerum 2向けのプリセットも出力できるようになります。

今回はSuno AIから書き出したパートファイル(ベースやボーカル)に加えて、自分のHDに眠っていた各種オーディオファイルもいくつかピックアップしてMicroMusicに食わせてみました。 素材のタイプは、パッドやオルガン、シンセリードといったワンショット/ループが中心です。

ベースやボーカル、ドラムに関しては、元のキャラクターをそのままVital側に移植する、という意味ではやはり限界があり、「このトラックのこの音をそっくりそのまま再現する」という用途にはあまり向いていないと感じます。 一方で、パッドやオルガン、シンセリードのように、音程とハーモニーがはっきりしていて、持続成分の多いシンセ系の素材は比較的相性が良く、PluckやSupersaw、PWM、PadといったMicroMusic側のAIモデルと素直に噛み合ってくれる印象でした。
結果的には、「うわ、完全に同じ音だ!」というレベルの完コピ感があるわけではありませんが、方向性が似た音が5つほどまとまって出てくることで、「ここから先はVitalで自分好みに仕上げる」という新しいワークフローが見えてきます。
Vitalというシンセ自体が、いまもなお安心してメインに据えられるクオリティのウェーブテーブルシンセであり、しかもフリーでほぼ制限なく使えるという事実も、この組み合わせを試してみたくなる大きな理由のひとつです。

「Vitalだからこそ成立するワークフロー」
これまで音楽制作の現場で「AIツール」といえば、ステム分離やノイズ除去、マスタリング補助など、どちらかと言えばオーディオを直接いじるタイプのものがほとんどでした。 それに対して、MicroMusicのようにAIがシンセプリセットそのものを生成してくれるツールは、仕組みもワークフローも少し違っていて、触ってみるとかなり新鮮に感じます。 出てくる音がすべて即戦力というわけではないものの、ときどき自分では思いつかなかったような意外な音を鳴らしてくれたりして、「プリセット」という存在が以前よりちょっと愛らしいものに感じてしまうのも面白いところです。
これまでは、プラグインを開いて誰かが作った既存プリセットを延々とブラウジングするのが当たり前でした。 そこに、「AIに一度素材を聴かせてゼロからプリセットを何個か生やしてもらい、その中から気に入ったものを自分で仕上げる」という選択肢が加わるのは、これからのシンセとの付き合い方として、なかなか“アリ”な方向性かもしれません。
なお、MicroMusic自体はごく最近出てきた最新世代のAIというわけではなく、2023年ごろから配布・紹介されているツールです。 モデルの世代だけを見ると「最先端の研究成果」というポジションではありませんが、その分、VitalやSerum向けにきちんと実用レベルのワークフローが整えられていて、「古いけれど、今でも十分遊べるAIプリセットジェネレーター」という立ち位置にいると感じました。
そして何と言っても、VitalもMicroMusicも基本的な範囲はどちらも無料で使えます。 「AIにプリセットをざっと作ってもらって、そこから自分の耳と手で仕上げる」というこの遊び方は、コストゼロで試せる新しいワークフローとして、一度触ってみる価値がありそうです。




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