Native Instrumentが提案する新しいデジタルDJの形
DJソフトウェアTraktor2.5が先日リリースされた。スムーズに音楽をミックスしていく伝統的なDJスタイルだけでなく、デジタルDJの新たなパフォーマンススタイルとして期待される新機能Remixdeckが最大の目玉。

このRemixdeckはTraktorバージョン2から搭載され始めたSampledeckがパワーアップしたもの。考え方としてはAbletonLiveと同じで、サンプルファイルを様々な組み合わせで再生していくことで、音楽演奏を可能にする。

1つのデッキには4つのスロットが装備されている。各スロットには16のサンプルを読み込むことができ、つまり1デッキにつき合計64のサンプルを読み込むことができることになる。サンプルは、Trackdeckでプレーしている曲をリアルタイムでキャプチャーすることができたり、ハードディスクに保存してあるサンプルからの読み込みができる。

RemixdeckにはTrackdeckと同様に、テンポ、タイムライン、トランスポートコントロール、FXルーティング、シンク機能が搭載されており、Remixdeckをマスターテンポにすることや、DVS(デジタルヴァイナルシステム)や他のコントローラのジョグホイールによるスクラッチ再生も可能になる。

そしてKontrol F1はそのRemixdeckを完全コントロールすることのできる今のところ唯一のコントローラー。Remixdeckのほとんどの機能はマウスを使いソフトウェア上でコントロールできるものなのだが、F1はRemixdeckの持つ可能性をフィジカルに解放してくれる。

 

 

Kontrol F1
F1本体はNI コントローラーX1と同じ大きさで、プラスティックのフェイスプレートに覆われた頑丈な作りだ。持ち運びにも問題のないサイズと重さはとても魅力的だ。

まずF1本体の上から見てみよう。4つのフィルターノブと4つの45mmボリュームフェーダーがならんでおり、4つのスロットをそれぞれコントロールすることになる。フィルターノブは中央で止まり、左に回すとローパス、右に回すとハイパスが働く。ノブ、フェイダー共に作りは頑丈、しっかりとした動きをするのが気持ちよい。フェーダーのキャップは取り外しができ、Trackdeck専用のレイアウトカバー(後ほど解説します)をかぶせることができるようになる。

本体の下に並ぶ4×4のパッド、このパッドを叩きRemixdeckにアサインしたサウンドをトリガーすることになる。さらにその下にはオレンジ色に点灯するミュート・ストップボタンが配置されている。パッドはヴェロシティに対応していないので、NI Maschineのパッドのような弾力性はないが、叩き心地は全く問題がない。ワンショットのドラムサウンドのようなものを演奏することを考えると、日本人の標準的な手のサイズにはこのパッドのサイズはベストかもしれない。

各16のパッドにはマルチカラーLEDによる16種類の色を設定することができる。そしてソフトウェアのF1設定画面からは明るさの設定を行うことができる。

本体中央部には8つのモードボタンとプッシュボタン付きのロータリーエンコーダー、そして小さなディスプレイが並ぶ。ここでサンプルのブラウズやロードやキャプチャー、セーブなどを行う。また、シフトキーと合わせRemixdeckのエディットセッティングを行うことができる。

まずRemix Setを読み込んでみよう

USBケーブルでコンピューターとF1を接続するとパッドが虹色に光りながらF1が起動、Traktor pro 2.5はコントローラーF1を自動的に認識する。ここでまず、Traktorの4つのデッキの中からどのデッキにRemixdeckをアサインするかを設定する。デッキの名称部分をクリックすると選択が可能に。

 

 

Kontrol F1側ではシフトキーを押しながらエンコーダーを回すと、ディスプレーにはdA/db/dC/ddの文字が表示されるので、任意のデッキを選択する。ここでがデッキBが選択されている。

 

 

まずは付属するFree Remix Setを読み込んで見よう。これはTraktor Pro2の登録者はフリーでダウンロードできるもので、1.4Gに及ぶRemixdeck専用サンプルライブラリー。タイトルは全21種、ドラムループやパーカッション、シンセループ、ジャンルはダブステップ、ハウス、スウィング、チルアウト系など。十分なクオリティのサンプルから何かインスパイアされることも多いかもしれない。

 

 

NIサイトよりダウンロードしたファイルをTraktorにインポートしよう。ブラウザーツリーのTrackCollectionを右クリックし、Import Traktor pakを選択。インポートしたいフィルを選択すればよい。

 

 

インポートされたRemix setはソフトウェア左側のブラウザーツリーAll Remix setsに表示される。F1のBROWSEボタンを押し、BROWSEボタンが点滅し始めたらエンコーダーを回しながらロードしたいRemixsetを選択、エンコーダーを押すとロードが開始される。Remixdeckにサンプルが読み込まれるとF1のパッドは様々な色で光る。あとはBROWSEボタンを解除すれば演奏を開始することができる。

 

 

 

演奏してみよう!
一つのサンプルスロットでは一つのサンプルの再生が可能、つまり一つのRemixdeckでは同時に4つのサンプルの同時再生が可能になる。再生中のパッドは強く光り、再生が終わるとそのパッドはやや暗くなる。スロットにサンプルが読み込まれていない場合は光りは灯らない。パッド下にあるオレンジ色のStop/Muteボタンを押すとそのスロットのサウンドはミュートされるが再生は続けられている。シフトキーと一緒にStop/Muteボタンを押すとそのスロットの再生はストップすることになる。

一つのRemixdeckには64のサンプルを読み込むことができるが、全4画面で分割表示されている。1画面に表示されるサンプルは16のみで、エンコーダーを回し、ディスプレイに表示されるP1/P2/P3/P4でページを選択することができる。

Kontrol F1中央にあるSYNCボタンが点灯している間はRemixdeckのテンポは他のdeckのテンポにシンクする。となりのQUANTボタンを押しながらエンコーダーを回すとクオンタイズの数値を設定することができ、QUANTボタンが点灯している間はクオンタイズが有効となる。もしフィンガードラムのようなワンショットサンプルを連打する場合にはこのQUANTはオフにした方がいいだろう。

その他、中央のモードボタンでサンプルのエディット、サンプルの再生方法、パッドの色の変更などを行うことができる。たとえば、シフトキーを押しながらTYPEボタンを押すと二つのボタンが点滅し、PITCHモードに入ったことになる。ここで任意のパッドを押しながらエンコーダーを回すと、±12までのピッチバリューを設定することができる。同じくシフトキーを押しながらSIZEボタンを押すとSPEEDモードに入り、サンプルの再生スピードを±4のバリューで設定することができる。

サンプルをトリガーした後にサンプルをループ再生しておくラッチ再生と、パッドを押さえている間だけサンプルを再生するゲート再生の選択ができる。TYPEボタンを押した後でエンコーダーでtrを選択、パッドが紫の場合はラッチ再生、パッドが黄色の場合がゲート再生を意味している。

 

 

 

シフトキーを押さえると、パッドの脇に記されているKEYLOCK/FX/MONITOR/PUNCH/STOPの起動確認を行うことができる。PUNCHはサンプルを切り替えたときにサンプルが再生した位置を次のサンプルがそのまま引き継ぐパンチイン機能。

 

 

 

 

 

サンプルのオートキャプチャー!!
Trackdeckで再生中のサウンドをRemixdeckにキャプチャーしてみよう。これぞTraktor2.5とコントローラーF1の醍醐味だろう。
まずはキャプチャーするサンプルのサイズを選択する。Captureボタンを押すとCaptureボタンが点滅し、ロータリーエンコーダーを回しながら1/32,1/16,1/8,1/4,1/2,1,2,4,8,16,32(小節)の中から選択することができる。続いてCaptureボタンを押しながらエンコーダーを回し、どのTrackdeckからのサウンドをキャプチャーするかを選択をし、これで設定は終了。あとはCaptureボタンが点滅している間に、任意のパッドをワンタッチするだけであっという間にサンプルがキャプチャーされ、Caputreボタンを解除すれば、即、そのサンプルを再生することができるようになる。

 

デモビデオを作ってみた

そんなTraktor2.5のRemixdeckとコントローラーF1を使ったデモビデオを作ってみた。題材はMaroon5の「Makes me wonder」という曲で、Trackdeckでこの曲を再生しながら適当な箇所をキャプチャー(適当とは言っても拍の頭はちゃんとカウントしましょう、でも適当加減がマッシュアップリミックスを作る上では良い効果を生みます!)。そしてRemixdeckに集めたサンプルをうまくつなぎ合わすとこんなことになります。

 

SAVE!!
苦労して集めたサンプル、苦労とまではいわないのかもしれないが、キャプチャーしたサンプルとサンプルセットに名前を付けてセーブしよう。セーブしたファイルはブラウズツリーから名前を参照できるようになり、後で呼び出すことも簡単になる。また.trak fileという拡張子でセーブされたファイルは他のTraktorユーザーとのシェアが可能になる。

 

ここまで見て、、

このコントローラーの操作を一度経験してしまったら、このコントローラーなしでRemixdeckを使いたいとは思えなくなる程、このF1とRemixdeckは完全な統合を実現している。簡単な操作性と色鮮やかに光るパッドは今までのコントローラーとは違った新しい感覚だ。Kontrol F1から同時にコントロールできるRemixdeckはひとつだけなのが不満の一つ。同時にエフェクターを操作しようと思うと、もう一台別のコントローラーが必要になってくる。

AbletonLiveでできるような緻密なサンプルエディットをTraktorRemixdeckで行うことは難しい。

デジタルDJがこのRemixdeckを使うことによって、そのパフォーマンスの幅は大きく広がることになるだろう。またAbletonLive同様、事前にどのような仕込みを行っておくかによって面白い内容のDJになることも間違いないだろう。

次回はもう少し別の角度からこのKontrolF1を見てみようと思う。

 

 

 

いっかい  Native Instrument Traktor pro2.5とKontrol F1を試してみた その2

いっかい  Native Instrument Traktor pro2.5とKontrol F1を試してみた その3

Native Instrument Kontrol F1

いっかい NI Traktorの新コントローラー F1

 

 

 

2 Responses to Native Instrument Traktor pro2.5とKontrol F1を試してみた その1

  1. djtokizami より:

    traktorS2で曲のマークした部分をf1でもできたのですが、いまいちやり方がわからないので、おしえてください。一列目がマークしたとこだけ光って、二列目は全部緑、三列目は、マークしたとこ、四列目は全部緑になるようにするやりかたをおしえてください

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