昨日発表されたMaschine mkⅡ ですが、ハードウェアの性能がより高まったということで早くさわってみたい気持ちが高まるばかりなのですが、今日はちょっと冷静になって現段階までのMaschineについての見解をまとめておこうと思います。

 

スタンドアローンモードとプラグインモード

Maschineはスタンドアローンモードとして、もしくはAU/VST/RATSのプラグインモードとして起動、64ビット対応、マルチコアにはまだ対応していません。スタンドアローンモードで作ったプロジェクトファイルをそのままのプラグインモードでも開くことができるのはありがたい話です。

スタンドアローンモードで起動した場合、果たしてMaschineだけでトラックを完成させることができるのか?という疑問が多いと思うのですが、バージョンが上がるごとにその答えはイエスに近くなっていると言えます。

サンプラーマシンとしてだけではなく、サードパーティ製のプラグインソフトウェアを立ち上げたり、外部MIDI機器をコントロールすることもできるようになり、一台のワークステーション型のマシンとして扱うことができるようになってきているのも注目のポイント。音楽のジャンルにもよってきますが、リズム主体のトラックであるのならばMaschineのみでの音楽の制作は可能でしょう。

通常のDAWソフトウェアと比較してみたときには、マルチコアに対応していないことで多くのプラグインを立ち上げることが出来なかったり、ミキサー画面や各トラックのレベルメーターがないことなどを考えると本格的なミックスダウンまでには及べません。しかし大概の人はDAWソフトウェアをメインにしていると思うので、ここは大きな問題ではないでしょう。プラグインモードで起動した場合、ワークフローを損なうことなくグルーブマシンとしての機能を遺憾なく発揮します。

 

♥パターンドラックアンドドロップ

Maschineで作ったパターンをAudioファイルとして、もしくはMIDIファイルとして、ホストアプリケーションやデスクトップにドラック&コピーできるパターンドラック・アンド・ドロップという機能はミックスダウンの作業にはとても便利な機能です。ソフトウェアの青色のドラッガーアイコンをクリック、しばらくらくすると「Done, ready to drag」という指示がされるので、DAWソフトウェアにドロップするだけ。

♥大型のライブセットではホストアプリケーション内に複数の Maschineを立ち上げる必要がでてくるかもしれません。その際はコントローラ(シフトキー+STEP)を押すと右スクリーンにプロジェク ト名が表示されるので、ハードウェアでどのプロジェクトを操作するのか選択することができます。

 

ハードウェア

Maschineコントローラの本質はパッドのクオリティの高さと、感度の高いロータリーノブ。ベロシティ、アフタータッチに対応しているパッドのたたき心地は現在楽器屋に並ぶどのパッドコントローラと比べても遜色がないものです。Maschineソフトウェアとハードウェアの一体感は抜群で、マウスを使わなくてもハードウェアだけでも多くの作業ができるのも魅力のひとつでしょう。Maschine mkⅡはこの一体感にさらに磨きがかけられているとのことで、非常に楽しみです。

また、ソフトウェア上でプログラムの名前やサウンドの名前を書き換えると、その情報がすぐにハードウェアのスクリーンにも反映されるフィードバック機能はとても便利で、ライブパフォーマンス中では重要な情報をハードウェア上で把握することができますが、残念ながら日本語には対応していません。

MkⅡでは色での識別も可能になっていますね。スネアは赤、キックは緑などのパッドに色を付けることができるようになっています。Traktor F1を試してみて思うことですが、これはライブパフォーマンスでは特に助かる機能です。

MaschineハードウェアはMaschineをコントロールするだけのものでなく、ホストアプリケーションで起動している他のプラグインシンセや外部MIDI機器も演奏することができます。パッドの演奏は通常のMIDIキーボードとはひと味違ったフレーズが作れたりする可能性もあるので、ぜひ試してみてください。

 

♥NoteRepeat

ハードウェアのNote Repeatボタンを押しながらパッドを押さえると、設定したクオンタイズでサウンドを連続的にトリガーする機能で、ドラムロールのような効果を作るのに便利。またパッドがアフタータッチにも対応しているので、音に強弱を付けることもでき、単純に演奏が楽しくなります。またシンセサウンドに使った場合はアルペジオのような奏法にもなります。

♥Swing

ハードウェアのSwingノブ、もしくはソフトウェア上のGRVにあるSwingノブを回すと、キット全体、もしくは各インストゥルメントにSwing(シャッフル)かけることができます。通常のDAWソフトウェアではリアルタイムでSwingタイミングを探し出すのはかなり厄介ですが、Maschineだとノブを回すだけでそのタイミングを探し出す事ができ、ハウストラックのようなグルービィーな音楽には欠かせないものです。ライブパフォーマンスでトリッキーな演出をするのにもナイスでしょう。MkⅡではswing専用ノブがなくなっていますが、このあたりはどのような操作感になっているのか楽しみです。

♥PadLink

ひとつのパッドをたたくことで、複数のサウンドを同時にトリガーできる機能。ドラムサウンドはもちろん、幾つかのシンセサウンドを同時にトリガー演奏することができ、新しいレイヤーサウンドを見つけることができます。設定が簡単なのも嬉しいです。

 

 

プロダクションツールとしてのMaschine

Maschineは8つのグループ(トラック)、そして各グループには16のサウンドをインサートすることができ、それぞれのサウンドごとにシーケンスを組み、ピアノロール上でのフレーズ制作ができます。リズムマシンとしてだけではなくVST/AUプラグインをインサートすることができたり、NI Kompleteとの融合が進んだことで、ソフトウェアシンセを使いリズムパート以外のフレーズやメロディを作ることも以前よりもより楽しくなっています。

♥VST/AU

サードパーティ製のVST/AUプラグインソフトウェアをMaschineのサウンドモジュールにアサインする事ができます。ロードが完了するとコントローラの8つのノブにソフトウェアのパラメーターが自動的にマップされているので、ノブを使った操作をすぐに始めることが出来ます。動かした内容をオートメーションとして書き込みもできます。例えば下の画像はSugarBytes Turnadeをインサートしている様子。Turnadaの8つのパラメーターはMaschineのパラメーターと相性ぴったり。

 

♥Konpleteとの統合

バージョン1.7からの機能。Maschineに付属する音源同様に、NI KompleteもしくはKomplete Elementのソフトウェアをブラウザーから閲覧し、プリセットプログラムを選択できます。

たとえばカテゴリーを「BASS」で検索するとFM8のベース、Massiveのベース、といったように数々のプログラム名が羅列されます。これはソフトウェアの選り好みをすることなく、すべてのNIソフトウェアからのBASSサウンドを試してみる事ができるのである意味新鮮。しかし逆にチョイスが多すぎるのも問題で、ブラウザー機能の充実は今後どうにかしてもらいたいものです。

プリセットのロードが完了するとコントローラの8つのノブには自動的にパラメーターがアサインされているので、すぐにノブを回しながら演奏をすることができます。特にNI Massiveとの相性は抜群。Massiveにも付いている8つのMacro ControlノブはそのままMaschineのノブに反映されています。

MKⅡにはMassiveフルバージョンが付属します。

 ♥エフェクター

エフェクターは各サウンドに3つまで、各グループ(キット)には4つまで、マスターには4つかけることができます。現在Maschineに標準搭載されているエフェクターは全22種類。個人的に好きなのはGrain DelayとResochord。どのエフェクターもパラメーターの数も少なく、軽い操作感なのでライブパフォーマンに多く使えそうです。

インサートしたエフェクターのパラメーターも同じようにハードウェアのノブに自動的にマップされ、動かした内容はオートメーションとして書き込みができます。しかしguitarRigのエディットはハードウェアからはしないほうがよさそうです。パラメーターがありすぎでどこを操作しているのか分からなくなります!!

バージョン1.8ではテープ・チューブサチュレーション、Transient Master(ダイナミクス系エフェクト)の追加が発表されています。期待されているサイドチェーン機能は開発中とのことです。

 ♥Auto Wirte

MaschineハードウェアのAuto Writeボタンを押しながら、ノブを動かすとその内容をレコーディングできるオートメーション機能はとても便利です。特にややこしい設定が必要ないのも嬉しいところです。Maschine 1.8ではこのAutoWriteにピン機能が付き、AutoWriteボタンを固定することができ、両手を使ったノブ操作が可能になります。

書き込んだオートメーションデータのエディットはソフトウェアを見ながらすることになりますが、ドットで描かれたオートメーションデータの扱いはやや不便なので、できれば他のDAWソフトのように直線で描かれるといいのですが。

♥MIDI OUT

サウンドモジュールにMIDI OUTを設定すると、ホストアプリケーション内で起動しているソフトウェアシンセや外部MIDI機器を演奏する事ができます。Maschineコントローラが一時的にMIDIコントローラとして機能するもので、外部MIDIマシンを使ったプロダクションには特に便利。MIDI情報としてはノート、ピッチベンド、モジュレーションホイール、サスティーンペダル情報の書き込みができますが、その他のMIDI情報も送信できるようになればよりいいのですが。

しかしAUプラグインで起動している際にはMIDIルーティングの問題が発生し、この機能が使えないようで、VSTプラグインで起動した際のみの機能となってしまうようです。つまりマック版Ableton Liveを使っている場合はVSTでMaschineを立ち上げた方が無難ということなのでしょう。(Logicユーザーの人、ごめんなさい。詳細チェックしてません)

♥サンプラー

シーケンスを組んだサウンドをリサンプリングすることや(インターナル)、外部音源のサンプリング、ハードディスクからのサウンドファイルのインポートなど、サンプリング作業を簡単に素早く行うことができるのには驚かされます。コンピュータのファインダーから直接にオーディオファイルをインポートできるのも便利。スライス機能が特ににパワフル。サンプルを切り分け、切り分けたサンプルは即ピアノロール上にマッピングされるので、サンプルの演奏やサンプルの再構成を素早く行うことが出来ます。またコントローラのスクリーンにも十分な大きさで波形が表示されるので、コントローラだけでの操作も可能です。

バージョン1.8では長いこと待ち望まれていたオフライン・タイムストレッチ、ピッチシフト機能の追加、サンプル波形上での再生場所を示すインディケーターも搭載されることになっています。
大概のDAWソフトウェアと比べてしまうとややシンプルなサンプラーという印象を受けますが、即効性という点では十分のサンプラーでしょう。

 

パフォーマンスツールとしてのMaschine

♥シーン

最終的な曲のアレンジ、たとえばイントロ、コーラス、間奏といったような展開を作る事ができ、最大64までのシーンを扱う事ができます。ライブパフォーマンスでMaschineを使用する例のひとつとして、このシーンを状況に合わせて切り替えながら音楽の展開を作っていく方法が考えられます。

このシーンにはソング機能は付いていません。よってスタジオにおいてトラックを完成させる際にはシーンを完璧に作り込むか、MIDIを使いシーンをトリガーしていく方法が必要になってきます。たとえば外部キーボードの鍵盤Cを押さえると、シーン1がトリガーされるといった具合。つまり前もってホストアプリケーションにそれらの情報を書き込んでおけばシーンをうまく切り替える事ができるようになります。その際にはScene MIDI settingからの設定が必要になります。

シーンの切り替えをリアルタイムレコーディングする機能が付いていないのは残念です。

 

♥Macroコントロール
Maschineにはサウンドをエディットする様々なパラメーターが用意されているわけですが、ライブパフォーマンス最中に動かしたいパラメーターのページ辿り着くのは至難の技。そこで用意されているのがMacroコントロールで、8つのノブに選択したパラメーターをアサインしておくことができる機能。マスター、各グループに設定することが可能です。それぞれのパラメーターを右クリックすると「assign Macro control」と指示が表示され、1~8のノブにアサインすれば設定完了。サンプラーのパラメーター、エフェクターのパラメーター、VST/AUプラグインのパラメーターなどリアルタイムに動かしたいものをアサインしておく便利。もちろんオートメーションとしての書き込みも可能です。

また各MacroコントロールノブにMIDI CCをアサインすることができるので、外部MIDIコントローラーを使ってこのノブをコントロールすることもできます。
iPadアプリLemurを使ったMacroリモートコントロールのアイデアも発表されているので参照してみてください。
逆に言うとMaschineのパラメータはこのMacroコントロール以外にはMIDIアサインができないという問題点を抱えています。

 

ハードウェア2台?

すでにMaschineのユーザーの人でも新しいMaschineを手に入れたい人も多いことでしょう。そうなると2台のハードウェアを同時に操作してみたいと思うわけで、まずは旧型Maschineを2台をつないでどうなるのか実験をしてみました。Ableton LiveでVSTモードとしてふたつのMaschineを起動してみました。

動かない。どうやらMaschine+Maschineは不可能なようです。なんとなく起動はするのですが、どちらか一方のハードウェアがフリーズし、ひとつのハードウェアしか動作しません。

ではこちら。Maschine+Maschine Mikro

これはオッケイ。NIのプロモーションでも使われているような方法ですね。

詳しいことは確認中ですが、新型Maschine+旧型Maschineもおそらく無理だったりするかもしれません。そうなると新型Maschineはプラグインモードで立ち上げ、旧型MaschineはMIDIコントローラーモードで立ち上げ、AbletonLiveや他のMIDIマシンをコントロールすることがベストな方法なのかもしれません。

Maschine mk2とMaschine 1は同時に動作することが確認できました。DAWソフトウェアでMaschineを二つ立ち上げ、ダブルコントローラ使い。プラスMaschine MikroプラスMaschine mikro mk2 もいけるようですね。

 

 

ここまでのまとめ

リズム打ちがあまり得意でない人にとっても素早くいいリズムを作ることができることができるマシンです。音源もかなりかっこいいですが、そのあたりは次回書こうと思います。

リズムマシンとしてだけではなくシーケンサー・サンプラー、スタジオのためのマシンとして、ライブパフォーマンスのためのマシンとして様々な側面を持っている マシンなので、ユーザー自身が様々なアプローチを試すことができるマシンです。

特にソフトウェアの柔軟性を経験してみるとやはりNIのすごさが伝わってきます。ハードウェアのクオリティは今のところかなりのハイレベルだと思います。Mk2はもっと良くなっているのでしょう。

エレクトロニック音楽を作る上ではパッドのような新しいインターフェイスを使うことで斬新なアイデアが生まれてくるような気がします。

マウスを使うよりもパッドを使った方が断然楽しくリズムを作ることができるということは、一度使った人ならば分かってもらえますよね。

 

 

 

 

 

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One Response to Native Instruments Maschineをもっと使ってみる その1

  1. ふくしま より:

    UIの作りのうまさからくる創作ってあると思うんです。そこに私は興味があります。後はライブラリーですね。
    コンパクトさも好き。

    今はMikroをMK2でというのがいいかなぁと思ったりするのでした~。

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