この2年間様々なiOS音楽アプリを試しています。モバイルツールとして、タッチスクリーンを使った新しい音楽制作のツールとして、ドラムマシン、シーケンサー、シンセサイザー、サンプラー、エフェクターなど様々な種類のアプリが揃っています。それぞれのアプリは個性的で面白いものではあるのですが、コンピューターを使ったプラグインソフトウェアのようにそれぞれが連携をとることができないのが現在のiOS音楽の問題点。たとえばドラムマシンでリズムを作り、そのオーディオファイルをシーケンサーに持っていくまでにはAudio Copy/Paste機能もしくはiTunesやe-mailなどを使ってエクスポートしなければならないなど、作業に時間がかかってしまうことや直感的な操作ができないのがいまいちなところでした。そこに登場するのがAUDIOBUSという新しいiOSテクノロジー。

以前、iOSアプリLoopy のディベロッパーA tasty pixel のMichael Tyson氏にインタビューをしたときに彼がふれていた「iOSの歴史を変えることになるであろう大プロジェクト」というのが、このAUDIOBUSのことだったわけです。

このAUDIOBUS、iOSの内部オーディオルーティングを可能にするもので、たとえばお気に入りのシンセの演奏にMoogのエフェクターFiltatronを加えることができたり、レコーディングアプリAuriaにシンセやドラムマシンの演奏を直接レコーディングをすることができるようになったりするもの。つまりいままで個別に使っていたアプリがモジュラーシンセのように組み合わせすることができるようになり、いままでできなかったいくつかのアプリを同時に使う音作りが可能になります。たとえば下のサンプルはSound Prismの音をNLogシンセを通し、Loopyにレコーディングしている例。

 

構想から長い時間を経てついにアップルから認可がおり、現在テスト段階に入っているAudiobus、およそ¥1.000のアプリとしてのリリースが予定されていますが、気になるのはこのテクノロジーをどのアプリがサポートしていくのかというところでしょう。詳細は発表されていませんがすでに100以上のディベロッパーによってサインされているとのことで、その数が増えていくことは間違いないでしょう。その中にはAudiobusのディベロッパーであるA Tasty Pixel ( Loopy HD ) とAudanika  ( Sound Prism )はもちろん、AuriaMultitrack DAWBeatmaker2NLog、Moog (AnimoogFiltatron)、FunkboxDrumjamが含まれているとのことです。ディベロッパーに対してはライセンスフリーのAPIが配布されるようで、日本のiOSディベロッパーの方々にも参加してもらいたいと思っています。

この先、このAUDIOBUSは複数のiOSディバイスとのルーティングも可能になるという話。たとえばiPhoneで演奏したものをiPadに録音すことや、2台のiPhoneでジャムをすることなどができるようになるわけですが、そうなれば一台のマシンを使うよりも遥かにパワフルな動作が期待できるわけです。残念ながらiPad1はサポートから外れています。それだけではなく、もっと先にはデスクトップコンピューターとのルーティングも視野に入っているようで、iOS音楽制作は従来の音楽制作との境界線がなくなり、より実用的な音楽ツールになっていくことが予想されます。またこのテクノロジーを利用したどのようなアプリが今後開発されていくのかも非常に興味深いところです。AUDIOBUSに関してはリリース後にまたレポートしようと思います。

Audiobus

参考 Synthetopia  CDM


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