「Traktor DJ 」はこれまでのようなアナログターンテーブルをコントロールするタイプのDJソフトウェアと違い、波形をタッチしながらDJプレーを行うDJソフトウェアです。Traktor DJ for iPadのリリースに続き、今度はiPhoneバージョンがリリースされましたが、果たしてiPhoneでもiPadと同じようにDJプレイを楽しめるのでしょうか?
Traktor DJ for iPhoneの基本的な操作はiPadバージョンとほぼ同じですが、iPhoneの小型スクリーン用にリデザインしたインターフェイスになっています。まず基本操作からみていくことにしましょう。
基本操作
メイン画面には2つのデッキ、ミキシング用の縦型クロスフェーダー、それぞれのデッキにはPlay/Pauseボタン、ループボタン、左側には結晶 の形をしたフリーズボタンが配してあります。各デッキには2種類の波形が表示され、メインの波形の下に細長く表示されている波形はトラック全体を表示し、トラックのどの部分がプレイされているのかを把握することができます。
またこの細長い波形を2本指でピンチするとメイン波形をズームイン・ズームアウトすることが できます。再生位置をジャンプしたい場合には、細長い方の波形でジャンプしたい場所をダブルタップ、その後でメイン波形をシングルタッチすると、ビートを 保った状態でジャンプしてくれます。
ループの設定の仕方は2種類あります。一つ目は右上にあるループボタンを押す方法で、このボタンを押すとループす る範囲の波形が黄緑色に変わり、ループが開始されます。ループの長さは初期設定画面で設定することができますが、この黄緑の波形部分を2本指でピンチすれ ば手動でループのサイズを変更することができます。
二つ目の方法では、再生中の波形を2本指でタッチするとその範囲が黄緑色に変わり、ループが開始されま す。(1本指でのタッチはレコード盤をスクラッチするような効果になります)2本指を下にスワイプするとループが解除されます。
トラックのタイトル右横に表示されているのがSyncボタンとビートグリッド設定ボタンで、Syncボタンをオンにすると緑で表示されます。Syncをオンにしておけば自動テンポ検出機能によってトラックAとトラックBのテンポはいつでも同期することになります。
トラックタイトルの左側に表示されているアルバムアートワークをシングルタッチするとライブラリー画面に移動し、Recommended Tracks (お勧めトラック)が表示されます。このお勧めトラックは再生中のトラックのBPMや、キーが似ているトラックが表示され、次にどの曲をプレイするのか困った時に役立つものです。ここでプレイしたいトラックをシングルタッチした後で、画面右上のLOADボタンをデッキAかデッキBにスワイプすると 選択したトラックがセットされます。あとはタイミングのいいところでプレイボタンを押して、クロスフェーダーを動かせばミックス完了!ここまでが基本的なTraktor DJ for iPhone の使い方です。
フリーズモード
ここからはややアドバンス向けの使い方です。
結晶の形をしたスイッチをオンにするとフリーズモードがアクティベートされ、ボタンは水色になります。メイン波形はフリーズ状態になり動きを停めます。ここで区分けされた波形をタッチすることでフィンガードラムのような演奏をするこ とができるようになります。フリーズモードのクオンタイズ設定は環境設定画面から行う ことができ、クオンタイズ値を上げると、より細かいビートを刻むことができます。
ループモードに入った状態でフリーズモードをアクティベートするとメイン波形はより大きく表示され、フリーズモードプレイをよりいっそう楽しむこ とができます。ブレークビーツやチョッピングなど、トラックを再生するだけではなく、トラックを演奏する楽しみも味わうことのできるTraktor DJならではの機能です。
シングルトラックモード
再生中のトラックをもっと細かく操作したい場合にはスクリーンをシングルトラックモードで表示するといいでしょう。メイン画面左側のスライダーを上げ下げすることで各デッキがズームアップされ、メイン画面では表示されていなかったFX・EQ・CUE・トラック情報(トラックキー、BPM、アーティスト名)が表示されます。
CUE
フリーズモードスイッチの右側にある旗のマークのスイッチを押すと8つCUEポイント・スイッ チが表示されます。トラックの再生中にCUEスイッチを押すとその場所にCUEポイントが打たれ、もう一度同じスイッチを押すとそのCUEポイントに戻っ て再生が続けられます。
または、旗のマークのスイッチを押さえたままにすると波形は動きを停めるので、ここでメイン波形をタッチすることでより確実に CUEポイントを打つことができます。CUEマークは一つのトラックに付き8つまで設定することができ、CUEポイントを削除したい場合には×マークのス イッチを押すとCUEスイッチは赤色に変わり、ここで削除したいCUEを選択することができます。
さらに、本家コンピューター版のTraktor Proを利用し ている人にとっては特に嬉しい機能なのですが、設定したCUEポイントはDropBoxを経由することでコンピューター内のデータと同期することになりま す。つまり、移動中や外出の間はiPhoneつかってトラックにCUEポイントを付ける作業をし、コンピューターを使う本番のDJプレーでも同一のCUE ポイントを使うことができるわけです。DropBoxの設定はDropBoxアカウントを取得した後で(無料)Traktor DJ初期設定で行うことが出来ます。
エフェクター
メイン波形の右側のFXスイッチを押すとX-Yパッドが表示され、指をこのパッドの上で動かすことによってエフェクターを操作することができます。縦軸は エフェクトのセンドレベル、横軸はエフェクトのパラメーター値がセットされています。コンピューター版Traktorではノブによるエフェクト操作だけな のでiPhoneならではのタッチスクリーンによるエフェクト操作を堪能することが出来ます。
パッドの上には3つのエフェクタータブが表示されており、このタブを下 にスクロールすると8つのエフェクターが表示され、この中からエフェクター選択することができます。X-Yパッドをタッチしている間はエフェクターはアク ティベートされ、パッドから指を離すとエフェクターはディアクティベートされますます。
また、パッドの右側の鍵マークを押すとエフェクターのパラメーター はロックされた状態になり、パッドから指を離してもエフェクターはアクティベートされたままの状態になります。仮にエフェクターをロックしたままの状態で メイン画面に戻ってもトラックタイトルの横にFXの文字がオレンジ色で表示され、このボタンを押すことでロックを解除することが可能になります。
Traktor DJのエフェクター試聴はこちらよりどうぞ。
EQ
メイン波形の右側のEQスイッチを押すとイコライザー画面が表示されます。左からLow/Mid/High/Volumeのフェーダーが表示され、それぞ れのレベルを調節することができます。
イコライザータブの右横にはフィルタータブがあり、ここでもX-Yパッドを使ったフィルター操作を行う ことができ、ロック機能も付いています。仮にフィルターをロックしたままの状態でメイン画面に戻ってもトラックタイトルの横にFxの文字が水色で表示さ れ、このボタンを押すことでロックを解除することが可能になります。
ライブラリー
ライブラリーにアクセスするには各デッキのアートワーク(ジャケット)をタップしてください。Traktor DJのライブラリーはプレイリスト、アーティスト、アルバム、ジャンルによってカテゴライズされ、トラックを選択下後で画面右上のLOADボタンをAかB にスワイプすることでトラックがデッキに読み込まれます。
その他の画面
メインスクリーンの左はしをスワイプするとマスターテンポセッティング、アウトプットセッティング、ノーティフィケーション(告知)のページが表示されま す。♥アイコンのスイッチを押すと丸いグラフィックが表示され、これを時計回しに動かすとマスターテンポは上がり、反時計回しに動かすとマスターテンポが 下がり、微妙な指の動きにも対応しています。
スピーカーアイコンを押すとアウトプットの設定を行うことができます。マスターボリュームでは全体の音量を調節。レコーディングボタン を押すとDJプレイを録音することができます。仕上がったDJプレイのファイルはライブラリーに表示され、このファイルを再びデッキにロードして再生することも可能です。
また、コンピューター側のiTunesのファイルシェアリングにも表示され、WAVファイルとして保存することもできます。)
インフォメーションアイコンはTraktor DJアプリのインストラクションの他に注意事項が表示され、すべて読み終わるとカウンターから数字が消えます。インストラクションはすべて英語ですが、イラスト入りなので非常にわかりやすく、Traktor DJのタッチ操作方法を覚えることができます。NIサイトには日本語による解説もあるので困った時には参照してみてください。
まとめ
フリーズモードはiPhoneのタッチスクリーンの特性が生かされている部分で、他のアプリとは違ってクリエイティブなDJプレイを楽しめる部分です。DropBoxを使ったメタデータの同期に関してはユーザーの間で賛否両論あるようで、なぜiCloudを採用しなかったのかという意見もあるようです。しかし、多くの量の音楽を聞きこなさなければならないプロフェッショナルDJにとってはありがたい機能で、これからはiPhoneさえあればどこででもDJの準備を行うことができ、時間の節約になるでしょう。DropBoxの同期もネットワーク環境さえあれば一瞬にして行われます。
iPhoneのスクリーン用にリデザインされたインターフェイスは美しくまとめられており、さすがNIといったところです。
iPadバージョンと機能的には同じものではありますが、iPhoneを使ってクラブでDJするというのはさすがに度胸のいる話で、おそらくハウスパーティなど気軽な場所でのDJプレイを楽しめるアプリになるのではないでしょうか。またこれからDJを初めてみたいと思う人にとってもかなりお勧めできるアプリです。
iPadバージョンも含め、Traktor DJがこの先、コントローラ、MIDI、AudioBusやJackへどのような対応をしていくかによってDJアプリバトルの展開も変わっていくように感じます。
追記:Traktor専用のコントローラKontrol Z1 を使うことで本格的なミキサー操作が可能になり、DJプレイはさらに白熱します。Kontrol Z1についてもたくさん書いているので参考にしてみてください。
NI Traktor DJ for iPhoneはAppストアにて¥450
必要要件:iPhone 4 または iPod Touch (第 4 世代)、iOS 5.0 あるいはそれ以降
推奨要件:iPhone 4S、iPhone 5またはiPod touch(第5世代)
はじめまして。突然のコメント失礼いたします。Traktor DJ for iPhoneにてDJ mixを録音したのですが、こちらの記事に書かれている”コンピューター側のiTunesのファイルシェアリングにも表示され、WAVファイルとして保存することもできます。”のやり方がわからなくて困っています。NIのナレッジベースも探したのですが見当たりませんでした。もし宜しかったらご教授お願いできませんでしょうか?
画像を追加しておきましたので参考にしてみてください。
iPhoneをコンピューターとUSB接続した後にiTunesを立ち上げ、iPhoneのページに入るとFile Shareingという項目があるので、そこでTraktorを探してください。traktorを選択すると録音したファイルが右側に表示されるはずなので、ファイルを選択した後、画面下のSave toを押せば、保存が出来るはずです。
ご丁寧にありがとうございました。おかげさまで無事mix trackをシェアすることができました。
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[…] Native Instruments Traktor DJ for iPhoneを使ってみた | いっかい/ikkai […]
録音したのですがどこにファイルがありますか?上の説明にかいてあるかもしれませんが聞いた方がわかりやすいので聞きます