ドイツのシンセサイザーメーカーWaldorfがリリースしたデスクトップ型のアナログシンセサイザーPulse 2。このPulse 2 のアナウンスがあったのは2012年のNAMMショーでのことでしたが、その後コンパクトアナログシンセサイザーRocketやiOSアプリNAVE のリリースが続き、18ヶ月経った後遂に出荷開始となりました。
初代Pulseは90年代にヒットしたシンセサイザーで、私は当時サンレコの広告やレビューを指をくわえながら見ていた記憶があるのですが、ここドイツではやはりWaldorfファンは多く、今でもスタジオで見かけることの多いシンセサイザーの一つです。
まずPulse 2の主要機能ですが、初代Pulseから引き継がれた3オシレーター+ノイズジェネレーター+マルチモードフィルター+アルペジエーターはそのままに、USB MIDI、LEDスクリーン、8スロットのモジュレーションマトリックス、オーバードライブ回路、新しいフィルターモードなど現代的な機能が追加されています。また、Paraphonicモードは8ボイスまでのコードをならすことのできる機能で、Rocketにも搭載されている機能です。
Pulse 2 はメタルケースに収まったとても頑丈な作りになっています。今年始めにリリースされたRocketよりもやや大きめのサイズで重たさも感じますが持ち運びには問題ないでしょう。ラックマウント型のモジュールであった初代Pulseよりも断然に作業がしやすいデスクトップ型。銀色のステンレス製ノブは個人的な好みではありませんが、黒色のボディと黄緑色の文字のコントラストは爽やかなイメージです。
まずPulse 2のファクトリープリセットサウンドを聞いてみることにしました。プリセットを選択するにはLEDディスプレイ下にあるセレクションボタンまたはセレクションダイヤル(ノブ)を回します。このセレクションダイヤルはとてもスムーズな回し心地で、LEDディスプレイのフィードバックも円滑です。500種類のプリセットサウンドの中には90年代を思い起こさせるものが多く収録されているのですが、とにかく使えるものが多いです。そしてその太くパワフルなサウンドに驚かされます。ベース・リード・パッド・FXなどサウンドの幅もとても広く、3オシレーターの威力が発揮されています。
Pulse 2で音作りを行うためにはLEDディスプレイ右側のパラメーターマトリックスを使います。黒色のマトリックスボタンでエディットしたいセクションを選択した後に、6つのノブでパラメーターを動かすことができるようになります。自分が今何を操作しているのか明確に分かるシステムなので、スタジオ内であれば迷うことなくじっくりと音作りに取り込むことができます。しかし、例えばオシレーターとフィルターのような違うセクションのパラメーターを同時に操作することは不可能なので、ライブパフォーマンスの際にはたくさんのツマミやフェーダーが備わったMIDIコントローラを使った方が便利かもしれません。またはMax for Live専用エディタを使うのも便利かもしれません。Pulse 2 Editor
Pulse 2 はMIDI IN/OUT/THRU ・USB MIDI・CV Gate Outputを備えています。やはりUSB MIDIはとても便利なもので、Pulse 2をコンピュータと接続し、DAWソフトウェアを立ち上げ、MIDIトラックを作るだけですぐにMIDIレコーディングを開始することができます。ドライバー等のインストールも必要ありません。さらに便利なのはPulse 2 で作ったアルペジオのデータやパラメーターを動かしたデータもMIDIセンドアウトすることができるところです。残念なことにMIDI THRUスイッチをオンにすると本体がフリーズしてしまう現象が数回起こってしまたのでアップデートに期待したいところです。
シフトボタン+Modボタンを押すことによってモジュレーションマトリックスの設定ページがディスプレイに表示されます。この設定画面はとても見やすく、どのような設定がされているのかすぐに把握することができます。設定することのできるスロットは8つ。多すぎることもなく少なすぎることもない満足な内容です。
アルペジオを操作するにはマトリックスボタンArpを押します。6つのノブを使えばパターンを変更することやテンポの変更をおこなうことができノブアクションが楽しくなる機能です。LEDスクリーンにはアルペジオ設定画面が表示され、様々な設定を行うことができます。しかし1からパターンを製作するのはやや億劫な作業になってしまいます。LEDに表示されるステップエディターはやや小さすぎるように感じました。
まとめ
ややネガティブな部分も指摘してしまいましたが、個人的にはこのPulse 2の大ファンです。とにかく音が素晴らしく良いのです。最近は特にダーティーな音を得意とするアナログシンセサイザーが多くリリースされていますが、Pulse 2はそれらの流行には左右されていない、ストレートなシンセサウンドを作ることができます。出音はとても大きく、無駄にエフェクターを使わなくても十分に気持ちのよい自然なサウンドを作ることができ、ドイツ人が好むサウンドというのも何となく理解することができます。
エディット方法が複雑すぎることなく、アクセスしたい場所に瞬時に飛ぶことができるのも気に入っている理由の一つです。Rocketと比べた時にはやや保守的に感じる部分ですが、Pulse 2の方がはるかにロジカルです。
もう一つ付け加えておかなければいけないことは価格についてでしょう。日本国内での価格はやや高めのようですが、現在ドイツベルリンの楽器店での価格は€499となっています。この価格も含め、Pulse 2 は本当に良い楽器だと感じました。