ArturiaのソフトウェアドラムマシンSPARKがアップデート、「SPARK2」がリリースされたばかり。さっそくこのソフトウェアを試しているところです。
SPARKは(NI MaschineやAKAI MPC Renaissance と同様)ハードウェアコントローラとソフトウェアが一体となった ’ハイブリッドドラムマシン’ という位置付けがされているドラムマシンです。ソフトウェアが主体なのでソフトウェアだけでも音は出るし音楽を作ることもできるわけですが、ハードウェアコントローラを接続して初めて「楽器として演奏ができるドラムマシン」になる、今どきのスタイルのドラムマシンです。
ソフトウェアの価格は$129 (6月30日までのスペシャル価格 Arturia 方式HPにて)(これまでのユーザーは無償アップデート可能)、やはりコントローラも必要だという人は コントローラとソフトウェアがパックになった SPARK LE (6月30日までのスペシャル価格 $199)をチェックしてみてください。
SPARK 2 刷新されたインターフェイス
SPARK 2 のグラフィックインターフェイスは大きく改善され、以前よりも清楚になり操作しやすくなっています。タブ式のページ表示が採用され、迷わずに各ページ(エディットのページや・シーケンサーのページ・ミキサーのページ)に移動することができます。
新しくなったミキサーページでは各インストゥルメントのレベル調整・パン・インサートエフェクト・センドエフェクトの設定を行うことができます。オーソドックスなデザインのミキサーなので、ここでも迷わずに作業を行うことができます。
ミキサーの下に表示されているインストゥルメントアイコンをクリックすると音をトリガーすることができるのも些細なことのようでもありますが実はとても便利です。
エフェクターの種類は18種類、他社のドラムマシンではあまり見かけないものとしては 「SUB GENERATOR」 という低音を強化するためのエフェクターが含まれています。
シーケンサーページも見やすくなりました。パラメーターを選択してオートメーションの書き込みをすることもできます。
シーケンスパターンをMIDIファイルとして・オーディオファイルとしてエクスポートすることができるとても便利な機能もここにあります。
しかし、シーケンスを部分的に選択してコピーペーストを行うような作業ができないのはかなり不便で、これは是非次のアップデートで改善してもらいたい部分です。
モジュラードラムシンセ・エディター
SPARK2 のハイライトと言ってもいいのがモジュラードラムシンセ・エディターです。
これまではディベロッパーが作った音を使ってドラムパターンを作ることがSPARKの醍醐味ではあったのですが、このバージョンからは 1からドラムサウンドを作ることや既存のサウンドをエディットすることも可能になりました。モジュラーシンセを操作するように、マニアックな音作りを楽しみたい人は要チェックです。
ドラムシンセエディターには10種類のモジュールが用意されています。
– 最大9基のバーチャルアナログオシレーター
– 最大4基の8モードフィルター
– 最大6基のエンベロープ
– 最大2基のLFO
– 最大4基のミニミキサー
– 最大2基のリングモジュレーター
– 最大2基の CV モジュレーター
– 最大2基の Karplus ストロングフィルター
– 1基のステレオフィルター
– 1基のスプリングマスフィジカルモデリングエンジン
また、このドラムシンセエディターには6つのマクロノブが付いており、パッチングされている任意のモジュールから最大で4つのパラメーターまでを割り当て、リアルタイムに音色操作することが可能になっています。
MIDI コントローラとの接続
ソフトウェアのみの販売が開始されたことでこれからはSPARKを他社のコントローラで操作する人も多くなってくるでしょう。SPARK2 ではメインページのボタン操作をMIDI CC にマッピングすることが可能で、 [command]+[クリック]でマッピングモードに切り替わります。
残念ながらすべての機能をマッピングすることはできず、ソロ・ミュートスイッチ、X−Yタッチコントローラ、Tune、ソングの切り替えは手動で行うことになります。
スクリーン右にあるInstruments Parameter は画面上には3つのパラメーターしか表示されていませんが、選択できる全12のパラメーターに関してすべてMIDIマップが可能になっています。
個人的にはMIDIコントローラ(MIDIキーボード)を使ってSPARKのパターンを切り替えることをよくします。例えばMIDIキーボードのC3にパターン1を割当て、C#にパターン2を割り当てる、、するとMIDIキーボードを叩けばSPARK のパターンを切り替えることができる上に、ひょんなことから新しいパターンを発見したりすることもでき、なかなか楽しいです。
NI Maschineとの違い
同じハイブリッドタイプのドラムマシンということで比較されることの多いNI Maschineですが、値段を見て分かるようにSPARKの方が機能的にもコンパクトなものとなります。例えば、Maschine 2.0 は複数のキットの読み込みが可能ではありますがSPARKはあくまでも一つのキットを使った作業になります。
また、Maschineの場合はKOMPLETEと統合していることもありドラムパート以外のパート作りも可能で、大まかに言えばMaschine一台でライブ演奏を行うことも可能です。その点、SPARKはあくまでも一台の ドラムマシンと考えた方がいいでしょう。
サウンドの個性は大きく違います。Arturiaはこれまでバーチャルアナログシンセサイザーを多くリリースしてきたメーカーだけあって特にアナログビンテージ系のドラムサウンドが素晴らしく、Maschineよりも丸みのあるアナログなサウンドに聞こえます。80年代のドラムマシンファンの人は試す価値十分!
SPARK2にはサンプラーとして機能が少ない分、 シンセサイザーとしてよりマニアックな音色作りが可能です。
コントローラの比較になりますが、SPARKのコントローラには8つのパッドが横に並んでいます。16パッド付きのMaschineやMPCと比べると演奏するには物足りない感じはします。でもSPARKにはX-Yタッチセンサーが付いているのがプラスポイント。
Maschine はソフトウェアとコントローラがパックになった商品。SPARK2はソフトウェアだけでも購入できるので、コントローラを後から購入できるのもある意味親切です。
使ってみて
Arturiaがビンテージアナログマシンにこだわってきたメーカーであることを改めて感じるソフトウェアです。 SPARK 2 で網羅されているビンテージマシンは
Roland TR-909 / TR-808 / TR-707 / TR-606 / CR78,
EMU Drumulator, LinnDrum, Lynn9000, Oberheim DMX,
Korg KPR 77 / DDM-110 / DDM-220, Sequential Circuits Drumtraks,
Simmons SDS-V, Yamaha RX5, Casio RZ1
これらのサウンドに加え、SPARK 2 では素早くリズムパターンを作れることや、 X−Yタッチセンサーのような現代の機能を使って演奏することも楽しめるドラムマシンです。
SPARK LE コントローラとのコンビネーションを念頭に作られているソフトウェアということもありますが、サードーティ製コントローラを使った時にX-YタッチコントローラもMIDI CCコントロールできるようになればより素晴らしいように感じます。
ソフトウェアだけを見た時には、次回のアップデートではシーケンサーのページでの機能が充実されることに期待したいところです。
とはいえ、既成の音を鳴らすだけでなく、ユーザー自身がクリエイティブにドラムサウンドを作ることができ、過去を見つめながら未来を作ることのできる素敵なドラムマシンと感じました。