Arturia V Collection 11に収録された新音源「Pure LoFi」は、従来のエミュレーションとは一線を画す、Augmentedシリーズの流れを汲む新しいアプローチのプラグインです。この音源は、ワウやフラッター、ノイズ、アナログ感、デジタルのざらつきなど、LoFi音楽のキーワードを網羅しており、LoFi好きが「こういうのが欲しい!」と思う要素が詰まっています。

まさに「音のスケッチブック」のような存在で、アイデアをすぐに形にできる柔軟性と親しみやすさがあります。このプラグインを使っていると、早速LoFiトラックを作りたくなってくることでしょう。

同じくLoFiサウンドに特化したBaby AudioのBA-1と比較すると、BA-1はYamaha CS-01をベースにしたシンプルで直感的な操作性が特徴で、内蔵スピーカーやバッテリーの劣化を再現することで、独特のLoFi感を演出します。一方、Pure LoFiはより多機能で、サウンドデザインの幅が広く、より多彩なLoFiサウンドを追求できます。

 

 

どんなシンセ?

 

  • 音のエンジンは3種類:
    • リアルな楽器音(ピアノ、ストリングス、クラリネットなど)
    • クリエイティブ・サンプラー(自分のサンプルも読み込めて、ループポイント、再生方向、フェードまで細かく設定可能)
    • LoFiオシレーター(ちょっと壊れたデジタル感やアナログ感のある波形を使ったサウンド)

 

  • それぞれのエンジンに、9種類のハードウェアエミュレーションを適用可能:
    • CMI、EMU、SP-1200、MPC、SK-1などのクラシックサンプラー系
    • Arturia独自の「Deteriorate」「Damage」「Crush」などもアリ

 

  • LoFiプロセッサーモード(6種類):
    • 「Golden Age」「Velvet Frost」「Vintage Glow」「Dim Memories」「Cathodic Tube」「Fuzzy Line」
    • それぞれ異なる質感のLoFiエフェクトで、テープのワウフラッター(揺れ)、ビットクラッシュによるザラつき、デジタルアーティファクト、ノイズ、サチュレーションなどを表現できます
  • LoFiパラメータは6つ:
    • Drive、Wear、Wobble、Tone、Speaker、Vintage
    • 画面上部の「LoFi Amount」ノブで全体の劣化感をまとめて調整できるのも便利

 

  • エフェクト類も充実:
    • テープエコー、リバーブ、ビットクラッシュ、コーラスなど
    • エンベロープ(AMP / FILTER)もちゃんと搭載。ゆるいアタックや長いリリースでドリーミーな質感にも。

 

  • ノイズテクスチャ:
    • 森林の雨音、レコードノイズ、カセットのヒスなど。空気感を演出するのに効果的。ノイズにもEQとステレオ設定あり。

 

実際に触ってみて

 

Pure LoFiの魅力は、やはりその“音の質感”に尽きます。ワウやフラッターによるピッチの揺れ、サチュレーションで歪んだ温かみ、レコードのヒスノイズやフィールドレコーディングのような環境音。そういったLoFi特有の「劣化」を自在にコントロールできるのがとても面白いです。

UI(ユーザーインターフェース)は非常にわかりやすく、プリセットを選んで軽くツマミをいじるだけで、すでに完成度の高いLoFiサウンドが出てきます。特に「Golden Age」モードは、ほんの少しの操作でアナログテープっぽいまろやかさが加わり、チルでメロウな雰囲気に仕上がります。

Teenage Engineering 的なセンスと言いますか、プロセッサー名がカタカナ表記されているのも、私たち日本人にとってはホッとする部分かもしれません。

Creative Samplerでは、自分のサンプルを読み込んで加工できるのも大きなポイント。再生方向やループ、フェードなどの設定も細かくできるので、ただの再生装置ではなく、音を“育てる”ような楽しさがあります。

プリセットひとつで「うわ、これもう使える」って感じになるのがすごい。トラックにそのまま挿して、雰囲気をグッとLoFiに寄せられます。

LoFi、Chillhop、アンビエント、フィールドレコーディング系が好きな人にはかなりおすすめ。音楽だけじゃなく、サウンドデザインや映像用BGM制作にも使えると思います。

 

Pure LoFi

 

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