ドイツのtubbtecは、Roland SH-101やMC-202といったヴィンテージシンセのMIDIアップグレードキットで知られる、小さなながらも注目すべき開発チームです。
そんな彼らがSuperbooth 25で展示していたのは、「uniMatrix(ユニマトリクス)」。見た目は手のひらに収まるような基板ですが、その中身はまさに“楽器の再生装置”とも言える柔軟さを備えています。
uniMatrixは、古いシンセサイザーやドラムマシン、あるいは電子楽器全般に使われているキーボードマトリクス回路に直接接続し、それらをMIDI対応機器として生まれ変わらせることができるモジュールです。MIDIノートやCCへの変換はもちろん、外部から信号を注入して「押されたように見せる」ことも可能。22本のI/OピンやCV入出力、個別に設定可能なMIDIクロック出力など、音楽と機械のあいだをつなぐあらゆる手段が詰め込まれています。対応するシンセもとても幅広く、カシオトーンやYAMAHAのCS70なども含まれています。発想次第では、古い電卓や冷蔵庫のボタンまでもMIDI化できる可能性があるとのこと。
とはいえ、MIDI 2.0が到来し、より高解像度で表現力豊かな新世代のプロトコルが広まりつつある今、こうした“地味”なアプローチにはたしてどれほどの意味があるのでしょうか。
わざわざ古い機材を分解し、配線を追い、場合によってはMIDIキーボードを一台買えるほどの手間やコストをかけることに、合理的な価値があるとは言い切れないかもしれません。それでも、過去に作られた音と回路に、もう一度光を当てること。
uniMatrixは、古いものと今とをつなぎなおす——そんな静かな力を感じさせるツールです。
対応機種リストと補足情報
uniMatrixは、主に3〜5Vで動作するキーボードマトリクス回路を持つ機器に対応しています。
下記は動作実績がある、あるいは動作が見込まれている機種の一例です。
Casio
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Casiotone CT-405 / CT-410V / 601 / 701
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MTシリーズ:MT-65, MT-68, MT-90, MT-100, MT-205, MT-210, MT-400V
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サンプリング系:SK-1, SK-5, SK-8, SK-10
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VL-Tone
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CS-01(要検証)
Yamaha
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VSS-30, VSS-100, VSS-200
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PSSシリーズ:PSS-140, PSS-170, PSS-270, PSS-380, PSS-390
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CS70
Korg
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Trident
Elka
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Synthex
Kawai / Teisco
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SX-210(タイミング問題あり、organDonor推奨)
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SX-400
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100p
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100f
PPG
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Wavecomputer 360
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Wave 2
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Wave 2.2
その他
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Texas Instruments Speak & Spell
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Oberheim OB-Xa
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Moog Memorymoog
…など、多数のレトロ機材に対応しています。
ご自身の機材が対応するかどうか不明な場合は、tubbtecに問い合わせてみるのがおすすめです。
取り付けにははんだ付けの作業が必要ですが、複雑なパターンのカットなどは不要で、基本的には元の回路を壊さずに後付けが可能です。tubbtecでは、対応機種ごとに丁寧な設置ガイドも提供しており、作業に不安がある場合は外部の改造業者リストも案内されています。日本ではModeless FactoryとVintage Standardがリストアップされています。