モジュラー好きなら一度は耳にしたことがあるであろうイタリアのブランド Frap Tools。これまで高品質なEurorackモジュールで定評のあった同社が、設立10周年を記念してなんと初のキーボード・シンセサイザーを発表しました。
その名も「Magnolia(マグノリア)」。
2025年5月に開催されるSuperbooth 2025(ベルリン)で、試作機が初披露されます。
Magnoliaは、アナログ回路による8ボイス・ポリフォニックFMシンセ。とくに注目すべきは、“リニア・スルーゼロFM(through-zero FM)”をアナログで実現している点です。
これは通常のFMよりも倍音が豊かで、うねりのある複雑な音色を生み出す方式で、ウエストコースト系シンセシスの代表的な技術のひとつ。Frap Toolsのモジュール「Brenso」でもおなじみのアプローチですが、これをポリフォニック鍵盤シンセでアナログ実装するのは非常に珍しいです。
なお、Frap Toolsは以前、Nonlinear LabsのC15の木製筐体デザインにも関わっていたことがあり、その美意識やクラフト感は今回のMagnoliaにも活かされている印象です。
現時点で確認されている主な仕様:
- アナログ8ボイス・ポリフォニック
- 2基のオシレーター(Oscillator 2ノブあり)
- スルーゼロFM(TZFM)ノブ搭載
- カットオフ/レゾナンスつきアナログフィルター
- ホールド&ディレイ付きADSR(スライダー式)
- Fatar製キーボード(ポリフォニック・アフタータッチ対応)
- ルーティングモード切替(Single / Morph / Dual / Split)
- ボイスモード切替(Poly / Mono / Legato)
- アルペジエーター&シーケンサー内蔵
- モジュレーションの流れが視覚的に把握できるLEDインジケーター
さらにFrap Toolsによれば、製品版ではデジタルエフェクトの搭載やUIのさらなる洗練も予定されており、一部の機能は調整される可能性があるとのことです。
すでに公開されているサウンドデモ(イタリア語ナレーション、英語字幕あり)では、繊細で複雑、かつ太さを感じさせるサウンドが確認できます。クラシックなサブトラクティブからウエストコースト的な音作りまで幅広く対応する柔軟性は、Frap Toolsらしい設計といえるでしょう。
発売は2025年夏の終わり頃が予定されています。モジュラー的な深みや実験性を、より演奏しやすい鍵盤スタイルで体験したい人にとって、Magnoliaは非常に魅力的な一台になるはずです。
Superbooth 2025の注目機種として、今後の続報にも期待が高まります。