海外シンセニュース(2025年6月第3週)Pro Tools × Splice 統合、Torso S-4 OS 2.0Pro tools、SONICWARE LIVEN Evoke 出荷開始


先週(6 月 17 〜 23 日)は、制作ワークフローを加速させるアップデートが立て続けに発表されました。

中でも注目すべき三つのトピックを、背景やクリエイティブへのインパクトとともにまとめます。

1. Pro Tools 2025.6 ― Splice とのネイティブ統合

Avid が公開した最新版では、世界最大級のサンプルサービス Splice が Pro Tools 画面内にそのまま組み込まれました。数百万点のサンプルやループを DAW のブラウザでそのまま試聴し、気に入った素材をタイムラインへドラッグ&ドロップするだけで即使用できます。さらに 「Search with Sound」 機能を使えば、セッション上のオーディオを投げ込むと AI がキーやテンポを解析し、相性の良い素材を自動提案。取り込んだファイルはタイムストレッチやピッチ補正が自動でかかるため、配置した瞬間からセッションにぴたりとフィットします。

従来は「ブラウザで検索 → ダウンロード → フォルダ移動 → インポート」と複数ステップを辿る必要がありましたが、今回の統合により操作はほぼワンクリックで完結。サンプル主体の楽曲制作はもちろん、ポストプロダクションの効果音探しでも大幅な時短が期待できます。

「Pro Toolsにようやく現代的なビートメイク環境が整った」という歓迎ムードが大勢のようです。Avid

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2. Torso Electronics S-4 ― OS 2.0 で“ライブ志向サンプラー”として大幅強化

コペンハーゲン発 Torso Electronics は、ハードウェア・サンプラー S-4 向けに無償アップデート OS 2.0 を公開。OS を全面的に書き換え、機能・操作性ともに大きく向上しています。

本バージョンでは、複数のパラメータを 1 つのノブでまとめて操作できる Global Macro が新搭載され、ワンアクションで劇的なシーンチェンジを行えます。さらに Scene スナップショット によりパターンごとのサウンド状態を保存し、瞬時に呼び出せるため、ライブ中の展開がいっそうスムーズになりました。加えて 可変速度ループディスクストリーミング が実装され、長尺ステムやフィールド録音をラップトップなしで扱えます。Elektron 系マシンの Parameter Lock に匹敵する即興性と、テープループ風のオーガニックな質感が共存したことで、ハード機材だけで緻密かつ大胆なライブパフォーマンスを目指すプレイヤーにとって見逃せないアップデートと言えるでしょう。

S-4 は発売当初から長期の品切れがたびたび発生し、初期ファームでは動作の不安定さも指摘されるなど、せっかくのポテンシャルを十分に発揮しきれない状況が続いていました。しかし、今回の OS 2.0 ではこれらの課題にも本格的にメスが入り、安定性と機能面が大幅に向上。ようやく“真価を発揮し始めた”と言える段階に突入した印象です。Torso Electronics

 

 

 

3. Sonicware LIVEN Evoke コンパクト筐体で“映画的アンビエント”を完結させる新シンセ

LIVEN Evoke は、34 種類の アコースティック・フラグメント と 20 種類のウェーブテーブルを同時に鳴らす Acoustronic Flux Oscillator を核に据えたポリフォニック・シンセです。逆再生モジュレーション “Backtide” が有機的な揺らぎを生み出し、22 波形+ホワイトノイズ 2 種のサブオシレーターで厚みを自在に補強できます。

制作フローは、ワンフィンガーのコード・ジェネレーターで進行を用意し、4 トラックにレイヤーを重ね、Granular FX でフレーズをグラニュラー化――という 3 ステップで完結します。さらにライン入力から取り込んだ外部音も同じ Granular FX やリバーブにルーティングできるため、他シンセやフィールド録音をそのまま粒状変換して空間演出に溶け込ませることが可能です。リバーブは 10 種類を備え、新アルゴリズム「Mirage」がシマー系倍音でサウンド全体を包み込みます。

64 ステップ × 128 パターンのシーケンサーはプロバビリティ演奏やパラメータロックに対応。3.5 mm ライン IN/OUT、MIDI、SYNC 端子と単三 6 本駆動で屋外での演奏もこなします。価格は ¥37,800で初回生産分100台はソールドアウト、第2次出荷分 (7月4日より) の予約受付中。

手頃な価格でありながら深い表現力が得られる点が好意的に受け止められており、私自身もぜひ試してみたい機材の一つです。

Sonicware

 



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