
先週(2025年6月第2週)は、DAWの大型アップデートや、大手メーカーによる新製品の発表など、制作まわりの話題がにぎやかでした。
ハードウェアとソフトウェアの両方で注目の動きがあり、「今これ触ってみたい!」というネタがいくつも登場しています。
1. Moog Messenger:伝統と革新が融合した新モノシンセ
Superbooth 2025で発表されたMoogの新作アナログモノフォニックシンセ「Messenger」は、伝統的なMoogサウンドと現代的な機能を融合させた意欲作として注目を集めています。価格は$899(日本価格およそ¥119,800)と、同社としては比較的手頃な設定。これは、より幅広いクリエイター層へのアプローチを意識した戦略とも言えるのかもしれません。
主な特徴は、ウェーブフォールディング機能を備えたVCO、低域の力強さを保持する「Res Bass」スイッチ付きの次世代ラダーフィルター、そして32鍵フルサイズ鍵盤に256プリセット、64ステップシーケンサーといった充実のスペック。これまでのMoog製品とは一線を画し、即戦力となる現代的な利便性も備えています。
ユーザーからは、「クラシックなMoogらしさ」と「パワフルなサウンド」、頑丈な筐体、プリセットの利便性などが高評価。一方で、「見た目がチープ」「従来のMoogほど太くない」といった否定的な声や、パラフォニー非対応、シーケンサー挙動への不満も見られます。
そのコンパクトな筐体と直感的なUIは、スタジオ制作のみならずライブパフォーマンスでも活躍が期待される設計。Messengerは、ハードウェアシンセが再びライブシーンで脚光を浴びている現在のトレンドに合致しており、DAWやモジュラー環境との連携も視野に入れた柔軟性を持ち合わせています。

2. Ableton Live 12.2:ワークフローを加速する実用的アップデート
6月12日にリリースされたAbleton Live 12.2は、Live 12ユーザーにとって無料アップデートでありながら、制作現場に即効性のある改良を多数含んだ注目のアップデートです。まだチャックしてない方はこちらのレビューをどうぞ。
ユーザーからは「ワークフローが一気に快適になった」「待望のアップデート」といった声が多く寄せられる一方で、UI変更への戸惑いや、一部サードパーティプラグインとの互換性に関する報告も見られます。
Abletonは今回、ネイティブ機能の強化によって「外部プラグインに頼らないプロ品質の制作環境」をさらに推進。これにより、CPU負荷の軽減やシステムの安定性といった恩恵も得られる構造となっています。
3. WWDC 2025:Appleが示すオーディオ機能の新たな展開
6月9日に開催されたAppleのWWDC 2025では、音楽・オーディオ関連の機能強化が多数発表され、Apple製品全体での音響体験の向上を意識した内容が目立ちました。リスニングから音楽制作まで幅広いユーザー層に影響を与える内容となっています。
主な発表は以下の通り:
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AirPodsの録音・再生機能の向上
新世代AirPods(AirPods 4 / Pro 2)では、スタジオ品質のボーカル録音が可能となり、Voice Isolationの精度も強化。空間オーディオの録音・編集を可能にする新APIも公開されました。
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Apple Musicに「AutoMix」搭載
曲と曲をAIが自動でミックスする「AutoMix」機能が新たに導入。加えて、歌詞の翻訳や発音補助といった機能も追加され、音楽鑑賞のアクセシビリティ向上が図られています。
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Apple Podcastsの改善
再生速度の調整範囲が広がり、「Enhance Dialogue」機能によってノイズの多い環境でも音声が聴き取りやすくなるなど、快適なリスニング体験をサポート。
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Logic ProのAI機能強化
WWDC直前に発表されたLogic Proのアップデートでは、AIによる「Stem Splitter」が進化。ギターやピアノなどの楽器ごとの分離精度が向上しました。また、録音し忘れた演奏をあとから復元できる「Flashback Capture」も注目されています。
これらのアップデートは、Appleが音楽やオーディオ分野においてもAI技術の活用を広げ、制作・再生環境の強化に取り組んでいる姿勢を示すものです。一方で、Apple Intelligence(AppleのAI戦略)に関しては、「競合と比べてやや慎重な印象」という指摘も一部で見られます。
まとめ:進化し続ける音楽制作の現場
今週の動きを見ていると、ハードもソフトも、そしてAIも、それぞれのペースでしっかり進化しているのがわかります。
Moogは新しい世代に向けた音を、Abletonは制作のスピードを、Appleは“音楽まわり全部”をちょっとずつ変えてきました。
全部を追いかけるのは大変ですが、ちょっと触ってみるだけで制作の風景が変わるかもしれません。
来週はどんな音のニュースが飛び込んでくるでしょうか。
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