20年前、DJはライブ用にCDを焼いてクラブへ持ち込み、プレイしていました。
10年前にはrekordboxからUSBドライブに音楽を書き出すのが一般的になり、USBスティックがDJの必需品となりました。
そして今――スマートフォンをタップするだけでクラウドにアクセスし、ストリーミングでDJする時代に突入しています。
この大きな流れを象徴するのが、AlphaThetaから登場した最新モデル CDJ-3000Xです。
9月26日発売、¥396,000
CDJ-3000Xの主要進化ポイント
CDJ-3000Xは前モデル「CDJ-3000」(2020年9月のパンデミック期に発売)をベースに、現代のワークフローに合わせてブラッシュアップされています。
1. クラウドとワイヤレス対応
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内蔵Wi-Fi & NFC:LANケーブル不要、スマホをタップするだけでクラウドやストリーミングに即接続。
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対応サービス:Tidal、Beatport、SoundCloudなど。rekordbox CloudDirectPlayにも対応
2. 大型タッチスクリーン & UI改善
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10.1インチ高精細ディスプレイ(従来9インチ → これからは16曲表示可能に)。
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プレイリスト編集機能:曲順の並べ替えやコピー&ペースト検索が本体上で可能に。
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タグリスト強化:USB/クラウド/ストリーミング曲をひとつに集約、自動ダウンロードでロード時間短縮。
3. パフォーマンス機能の進化
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Gate Q:ホットキューを押している間だけ音が鳴る、タッチスクリーンを使ったライブ的プレイ。
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Touch Q強化:モニタリング中に正確なホットキューを即設定可能。
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Smart Q:呼び出したキューに合わせてQボタンが自動更新。
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耐久性:Play/Cueボタンが50万回以上多くのプレスに耐える仕様に。
4. 音質と信頼性
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新DAC(ESS Technology製):S/N比115dB、よりクリアで迫力のある音質。
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改良された電源設計:低域のパワー感と安定性が向上。
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キャッシュ拡張:ロード済みの曲はUSBを抜いても最後まで再生可能。
5. デザインと接続性
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マット仕上げで高級感アップ。
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ジョグホイール調整範囲拡大。
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USB-Cポート追加(A/C両対応、背面にも装備)。
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SDカードスロット廃止、テンポフェーダー目盛り削除など、賛否を呼びそうな変更も。
「Pioneer DJ」は終わるのか?AlphaThetaの真実
今回から「Pioneer DJ」のロゴが外れ、「AlphaTheta」ブランドとして発表されたことで、多くのDJが「Pioneer DJはなくなるのか?」と疑問を抱きました。
実際にはこうです:
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2019年:投資会社KKRがPioneer DJを所有。
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2020年:社名を AlphaTheta Corporation に変更。
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現在:Naritsu傘下で、新ブランド「AlphaTheta」を展開。
開発チームは従来と同じで、CEOは初代CDJ-500の開発者・吉織賢剛氏。つまり、製品の中身や品質は変わらず、ブランド戦略として名前が変わっただけというのが事実です。今後は「Pioneer DJ」より「AlphaTheta」が前面に出る可能性が高いですが、DNAはそのまま受け継がれている様子ではあります。
まとめ:CDJ-3000Xは「未来対応の洗練版」
CDJ-3000Xは「現代化され、未来に対応したCDJ-3000」と位置づけられます。
これは「CDJ-4000」と呼べるような大幅な飛躍ではなく、洗練された改良版です。
Wi-Fiやクラウド、ストリーミング、Serato連携など、ワイヤレス機能をフルに活用してデジタルDJの世界に没頭したい人にとっては、間違いなく最適な選択肢でしょう。
ただし、まだ欠けているものもある
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Stems機能非対応:楽曲のボーカル/ドラム/ベースを分離してプレイする最新トレンドには未対応。
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Apple Music非対応:TidalやBeatportに対応する一方で、Apple Musicを利用しているDJにとっては残念なポイント。
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OTAアップデート非対応:Wi-Fi搭載にもかかわらず、ファームウェア更新は依然としてUSB経由。
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ストリーミング対応範囲の限定:Spotifyなど一部サービスはサポート外。
つまり、CDJ-3000Xは「完成されたクラブスタンダード」でありながらも、最新のDJワークフローをすべて網羅しているわけではないという点も押さえておきたいところです。
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