Minimal Audio が、macOS/Windows 向けの新しいボーカルエフェクト・プラグイン Evoke をリリースしました。
現在、期間限定のイントロ価格 $79(通常価格は $129) で販売されています。
Evoke は「ハイパーモダンなボーカル・プロセッサ」として紹介されており、
実際に試してみると、その呼び名がぴったりだと感じます。
声を“作り直す”というアプローチ
Evoke は、一般的なピッチ補正やボコーダーのような仕組みではありません。
ボーカル・モデリングとスペクトル分析を使い、
入力された音声をもとに新しい信号を再構築(リシンセシス)します。
単なる音程修正ではなく、「声を素材として再生成する」ような動作です。
モジュレーション、リチューニング、ハーモナイズまでこのプラグイン一つだけでカバーします。
直感的な操作とスムーズな始まり
使い方はとてもシンプルです。
ボーカルトラックに Evoke を挿して、プロジェクトのキーを設定するだけ。
すぐにボーカルの再構築やハーモナイズを始められます。
コーラスのボーカルに使ってみたところ、
プリセットをいくつかクリックするだけで、
シンプルなポップ・リードがハーモナイズされた重厚なスタックへと変化しました。
内蔵のマルチボイス・ハーモナイゼーションは非常にタイトで自然に感じられ、
複数の声が自然に溶け合うようなハーモニーになります。
MIDIモードで“歌声を演奏する”
MIDIモードに切り替えたときの動作も面白いです。
このモードでは、外部のMIDIノートに合わせてボーカルのハーモニーを直接操ることができます。
たとえば単音のボーカルフレーズをMIDIでコード進行に沿って再構築したり、
キーボードを弾きながらボコーダーのように歌声を演奏することも可能です。
それでいて、従来のボコーダーのような人工的な質感はなく、
声の自然な表情がしっかり残るのが印象的です。
柔軟なFXラックとモジュレーション
Evoke のエフェクトラックはモジュラー構造で、
マルチバンド・コンプレッサー、リバーブ、ディストーション、
周波数シフターなど 8種類のプロセッサを入れ替えて使えます。
特に周波数シフターは印象的で、
ほんの少し動かすだけでボーカルに夢幻的なトーンを加え、
リバーブを混ぜると洗練されたポップスにも溶け込みます。
さらに掘り下げていくと、モジュレーションの面白さが際立ってきます。
Evoke には、Minimal Audio の「Current」や「Rift」でおなじみの
モジュレーション・システムが採用されています。
LFO、シーケンサー、エンベロープ・フォロワーをほぼあらゆるパラメータにアサインできます。
これにより、わずかなピッチ変化を設定したり、
時間の経過とともに進化するハーモニーを自動化したり、
さらにはリバーブのサイズをモジュレーションして
現代的な“変化する空間(モーフィング・スペース)”効果を作ることもできます。
まさにボーカル・サウンドデザインのための実験的なプレイグラウンドですが、
複雑さはあくまでオプションであり、ワークフローを妨げることはありません。
豊富なプリセット
Evoke には 350種類以上のプリセット が用意されており、
ポップスの微調整から実験的な音響まで幅広く対応します。
特にバックボーカル用のプリセットは秀逸で、
R&B やモダンEDMにみられるワイドなボーカル・スタックをすぐに再現できます。
調整はリバーブやトーンEQ程度で済み、ミックスにすぐ馴染みました。
リードボーカル用にも、リチューニング、ピッチトラッキング、スタッキングなど
用途別のプリセットが揃っています。
補正ツールから、創造の楽器へ
Evoke の魅力は、ピッチ修正ツールというよりも創作のための楽器のように感じられるところです。
ボーカルトラックに挿すだけで新しいアイデアが浮かび、
その音の変化自体がインスピレーションになります。
または、FKA Twigs や SOPHIE のように、
声をデジタルで再構築しながら感情を表現する
Experimental Pop/Hyperpop 的な制作スタイルにも、
Evoke は強く響くでしょう。
Evoke のより高度なテクニックを解説する6本の動画
1.「Level(レベル)」にモジュレーションを割り当てることで、演奏に反応する繊細なダイナミクスを加えることができます。
それによって、各ボイスに動きや鼓動、そして自然な揺らぎが生まれるのです。
2. Follow は、ボーカルのダイナミクス(音量の強弱)を“動き”に変えることができます。
たとえば「Rate(レート)」などのパラメータにルーティングすると、
入力に応じてモジュレーションがリアルタイムに反応し、
演奏のニュアンスに合わせてスピードが上がったり下がったりする、
生きたリズム感を生み出します。
3. Evoke のモジュレーション・システムを使えば、ボーカルから直接メロディを“描き出す”こともできます。
4. Followモジュレーションを使って「Freeze(フリーズ)」をボーカルのダイナミクスにリンクさせることで、
演奏に合わせて脈打つようなリズミカルなテクスチャを作り出すことができます。
5. Characterモードとフォルマント・シェイピングを組み合わせることで、
ボイスを重厚で“トランスフォーマー的”な領域へと押し上げることができます。
6. このテクニックは、**Bon Iver の「715 – CRΣΣKS」**から着想を得ています。
Pitch Trackモードを使うことで、Evoke はソースとなるボーカルのメロディを自動で追従し、
複雑なルーティングを行わなくても、豊かで旋律的なハーモニーを構築できます。
深い!
対応環境
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macOS 10.11 以降(Apple Silicon対応)
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Windows 10 以降
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AAX / AU / VST2 / VST3 対応
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