Spectrasonics Omnisphere 3 — プラグインシンセの王者が10年ぶりのアップデート、MPE対応、表現力と直感操作がさらに深化


10年ぶりに、Spectrasonicsがフラッグシップ・ソフトシンセ Omnisphere 3 を発表しました。

数多くのシンセが登場しては消えていく中で、

このシリーズだけは“シーンの定点”として存在し続けています。

新バージョンでは、テクノロジーの進化を誇示するのではなく、

「音と人との距離を、もう一度近づける」ようなアップデートが行われています。

 

主なアップデート内容

新しいブラウザー

Omnisphereの魅力といえば、ハリウッド作品でも使われるほどの豪華なサウンドが、膨大なプリセットとして収録されている点にあります。

その一方で、数が多すぎるがゆえに目的の音へ辿り着くのに時間がかかる——というのが、長年の課題でもありました。

ブラウザーの設計が古く感じられる場面もあり、実際の制作現場では“検索の重さ”を指摘する声も少なくありませんでした。

今回のバージョン3では、このブラウザー部分が大きく刷新されています。

カテゴリーやタグ、ムード(雰囲気)での検索がしやすくなり、

不要なサウンドを一時的に非表示にできる “Hide” 機能も追加。

さらにディレクトリツリー形式のレイアウトになり、

パッチ、マルチ、エフェクトなどをより直感的に整理・閲覧できるようになりました。

ライブラリ画像の表示やスクロール動作も滑らかになり、

これまで感じていた“プリセット探しの重さ”がかなり軽減されているようです。

この部分は、実際に触って確認してみたい改善点のひとつです。

拡張されたサウンドライブラリ

Omnisphereの大きな魅力であるサウンドコレクションが、今回さらに拡張されています。

18の新しいライブラリコレクションが追加され、

アコースティック楽器を綿密にサンプリングした音源から、アナログ系のシンセトーン、

そして実験的なテクスチャーや環境音まで幅広く収録されています。

既存のOmnisphere 2パッチもすべてリマスターされ、

新しいエンジンとエフェクトで再構築されています。

その結果、音の明瞭度やステレオ感が向上し、

古いプリセットにも新鮮さを感じられるようになりました。

さらにSpectrasonics独自のロスレス最適化技術により、

ライブラリ全体の容量は従来とほぼ同じサイズに保たれています。

エリック・パーシングが語るように、「音は科学ではなく詩的なもの」という理念のもと、

ひとつひとつの音に録音者や空間の“物語”が息づいています。

今回のアップデートでも、他社とは一線を画すOmnisphereならではの音作りの哲学が感じられそうです。

 

Adaptive Global Controls

いわゆるメインのコントロールページが刷新されました。Tone、Ambience、Filterなど、すぐにいじりたくなる6項目が見やすく並べられており、トーンのバランスを素早く整えるのに便利です。


Patch Mutations

サイコロ機能のようなものだと思うのですが、Muteateというボタンを一つ押すだけで、膨大な数のサンプルを自動で組みわせて新しいバリエーションを生成してくれるという機能。

“Subtle”から“Extreme”まで変化の幅を指定でき、元の状態にも戻せます。


Quadzone モジュレーション

ノートレンジやベロシティを使って、4つのレイヤーを自由にブレンド可能。

MPEやポリフォニック・アフタータッチとも連携し、演奏中のモーフィング表現を強化。キーボードプレイが盛り上がること間違いなし。


MPE対応とポリフォニック・モジュレーション

MPEコントローラーで、ノートごとにスライドやプレッシャーを反映。

LFOやエンベロープも各ノート単位で独立して動作し、より自然で表情豊かな演奏が可能になりました。


新しいフィルターとオシレーター機能

7つのトーンカラーに分類される36種類の新フィルターを追加。

さらにオシレーター・ドリフトやポリフォニック・デュアル周波数シフターを搭載し、

より有機的で奥行きのあるサウンドを実現しています。


Omnisphere FX Rack

新たに35種類のエフェクトが追加され、リバーブ、ディレイ、サチュレーションなど合計約100種類のプロセッサーを利用できます。

内部エフェクトを単体プラグインとして使用することも可能になりました。


ハードウェア統合と互換性

バージョン2の頃からあった機能ではありますが、厄介な設定なしに、ハードウェアシンセを使ってOmnisphereをコントロールできる機能です。MIDIキーボードだけでなく、いわゆるハードウェアシンセからでもコントロールできる機能で、そして今回その対応機種が大幅に増えました。

300以上のシンセ/MIDIコントローラーに対応、主要ブランドとの連携を強化、既存のOmnisphere 2パッチもそのまま動作します。

⇩はOmnisphere 3のオフィシャル紹介動画。Spectronicsの創設者Eric Persing氏 が登場し、まるでApple社の新製品発表会のような雰囲気になっています。Apple同様にとても丁寧な英語で喋ってくれているおかげで、Google 自動翻訳をつけてもちゃんと理解できるのがありがたい。

全体の印象

Omnisphere 3のアップデートは、見た目の派手さよりも“体験の質”を高める方向に焦点が当てられているようです。

ブラウザーの刷新による検索性の向上、Adaptive Global Controlsによる操作の簡素化、

そしてPatch MutationsやMPE対応による表現の拡張など、

長年のユーザーが日常的に感じていた「もっとこうなれば」という部分を丁寧に磨いた印象です。

特に、音色ブラウジングとエディットの流れが非常にスムーズになり、

これで、ワークフローが改善されることが期待できそうです。

“作るより先に鳴らしたくなるシンセ”が再び息を吹き返しました。

価格とリリース情報

Omnisphere 3 は 2025年10月21日 にリリース予定です。

価格はフルバージョンが $499 / €399

既存ユーザー向けアップグレードは $199

さらに、Atmosphere からのアップグレードパス($249)も用意されています。

すべてのバージョンでOmnisphere 2のサウンドとの互換性が確保されており、

既存プロジェクトへの影響を心配することなく導入できます。

Spectronics






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