Waldorf Protein を試してみた──小型筐体で蘇る90年代デジタルシンセ


最近、90年代の音楽や映画を見返すことが増えている。

しばらく距離を置いていたはずなのに、あの時代の“音”や“色”が、妙に気になってくる瞬間がある。

90年代のデジタルは、今のシンセのように綺麗に整えられていない。

ざらつきや粗さ、エイリアシングのにじみ——そういった“不完全さ”がそのまま個性として残っていた。

完璧ではないけれど、どこか惹かれる、あの独特の質感。

ちょうどそんな感触を思い出していた時期に、Waldorf の新しいシンセ Protein に触れる機会があった。

 

Waldorf といえば、90年代に Microwave を生み出したドイツのメーカーだ。

私は実機の Microwave に触れた経験こそないものの、ソフト版エミュレーションや

PPG WAVE の系譜を継ぐ Groove Synthesis 3rd Wave などを試してきて、

「デジタルの冷たさ」と「よく分からない生命感」が同居する、

日本のシンセとはまた違った世界観を持つメーカーだとずっと感じていた。

そんな文脈をうっすら踏まえて登場した Protein。

実物を手に取るとまず “軽い”。

青いプラスチックの外装は AIRA Compact を思い出させるし、

サイズ的には Model:Cycles に近く、今どきのガジェット系シンセの仲間に見えてしまう。

——ところが、音を出した瞬間、その印象は一気に覆る。

「これは、いい意味でちょっと変わり者だな」と思わせる、独特の存在感がある。

1. まずは筐体と接続性:小型でも“ガジェットではない”作り

Protein の筐体はコンパクトで、机の上に気軽に置けるサイズだ。

実際に触れてみると、見た目のライトさとは裏腹に、

“楽器としての手応え”を持っている。

● 小型でも視認性の高いディスプレイ

ディスプレイ自体は、最近の小型デスクトップ機でよく見る小さなタイプだが、

思った以上に明るく、必要な情報が無駄なく整理されて表示される。

パラメーター名や数値、Shift 操作時の切り替わりも追いやすく、

小型シンセにありがちな“画面の窮屈さ”は意外と感じない。

● ノブは少ないが、配置と操作体系は論理的

ノブ数は必要最低限だが、音作りの導線は整理されており扱いやすい。

また、いくつかのノブは プッシュ式(押し込み式) になっており、

メニュー確定やパラメーター切り替えなどに用いられる。

ただし Protein は、後述するように Shift 併用が前提 の UI で、

“つまみを回せば即パラメーターが動く” というタイプではない。

ノブの押し込み+Shift の組み合わせによる二段階操作が随所にあり、

直感的な即興性よりも 構造を理解して扱うタイプ のシンセだと言える。

接続性:必要十分のシンプル構成

背面の端子は最小限ながら、運用に必要なものは一通り揃っている。

● MIDI IN / OUT(3.5mm TRS MIDI Type A)

5ピンDINではなく TRS MIDI を採用。

従来の DIN 機材と接続する場合は付属の変換ケーブルを使用する。

小型機では一般化してきた仕様だ。

● USB-C(電源 + USB MIDI)

USB-C で電源供給と USB MIDI を兼ねる。

製品には USB-C ケーブルと USB-A ケーブルがそれぞれ付属する。

内蔵バッテリーは非搭載なのが少し残念で、

モバイル使用では USB アダプタまたはモバイルバッテリーが必須となる。

USB 給電ゆえ、環境によってはノイズが乗る可能性もあるが、

Waldorf は対策として USB アイソレーターを標準同梱

この配慮は非常にありがたい。

● オーディオ出力

  • ステレオアウト(1/4”)

  • ヘッドフォンアウト

小型機としては十分な出力があり、

机上の音作りからライブセットまで不安なく扱える仕様だ。

付属のUSBケーブル、MIDI変換ケーブル、USB アイソレーター

 

 

2. オシレーター:alias の出方が、現代のウェーブテーブルとはまったく違う

Protein は一音鳴らした瞬間、

“最近のウェーブテーブルシンセとは方向性がまるで違う”と直感できる。

まず前提として、オシレーター素材は Microwave I の 8-bit 波形を継承している。

そのため、あの独特のざらつき、スキャン時の段階的な変化、

そして alias が跳ねるポイントまでもがしっかり残っている。

興味深いのは、エンジン自体は 250kHz という現代的な高サンプルレートで動いているにもかかわらず、

音が“綺麗に補正されてしまわない”よう設計されている点だ。

素材の粗さをあえて残し、それをキャラクターとして前に出している。

また Protein は Microwave と異なり、2つのオシレーターにまったく異なる WT を割り当てられる

これがサウンドデザインの幅を大きく広げている。

  • 一方は荒い Speech WT、もう一方はクラシックな Harmonic 系

  • 一方はローが強い WT、もう一方は alias が跳ねやすい WT

  • “粗い WT” と “滑らかな WT” を重ねる

  • キャラクターの違う倍音が干渉し、独特の“揺れ”を生む

こうした組み合わせは Microwave にはできなかった部分で、

Protein の大きな優位性でもある。

つまり Protein のオシレーターは、

Microwave の粗さを残しつつ、

現代的な“音色の自由度”を手に入れた構造だと言える。

その結果、単なる Microwave の再現ではなく、

より複雑で、より変化の余地が大きいデジタルサウンドが作れるようになっている。

オシレーター選択時のディスプレイ 表示

3. フィルター:ローパス / ハイパス、複数タイプの Drive、独立した Dirt レイヤー

Protein のフィルターは、

LPF / HPF / Drive の3つから “1つだけ” を選ぶ排他式の構造になっている。

LPF と HPF は素直なアナログ風の動作で、音の輪郭を整える役割。

Drive はフィルター後段の歪みではなく、フィルター自体が別モードになるイメージで、

Cutoff ノブが Drive Amount に切り替わり、倍音構造そのものを変える。

Drive には PNP(トランジスタ系歪み)Tube(真空管風サチュレーション)

Diode(ダイオードクリップ)Crunch(波形変形系の荒れた歪み)PickUp(電磁ピックアップ風の歪み)

など複数の種類があり、フィルターをスイッチする感覚で音のキャラクターが大きく変わる。

一方、Dirt はフィルターは独立したノイズレイヤーで、

Static(ホワイトノイズ系)Crackle(レコードのパチパチ)

Geiger(ガイガーカウンター)Burst 1/2/3(破裂系ノイズ)

などの質感を音に混ぜることができる。

Protein をしばらく触ってみて感じたのは、

Dirt がこのシンセのキャラクターそのものを象徴しているということだ。

一般的なウェーブテーブルシンセが「滑らかさ」や「高解像度」を目指すのに対し、

Protein は Dirt によって あえて“ざらざらとした質感”を残す方向へ舵を切っている。

フィルターカットオフ操作時のディスプレイ表示

4. Multi モード

Protein の Multi モードは、4つのレイヤーを重ねたり、順番に鳴らしたり、

あるいはランダムに切り替えたりしながら音を出すための仕組みだ。

このサイズのシンセで 4レイヤー構造 を持っているのは、かなり珍しい。

Multiボタンを押すとマルチモードが起動、A.B .C.D.の核スイッチが緑に点灯、エディット中のレイヤーは薄赤色に変わる

■ 発音ルールの種類

Multi モードでは、4つのレイヤー A〜D をどう鳴らすかを 4つの“発音ルール” から選ぶ。

● Layered

4つのレイヤー(Active のもの)がそのまま同時発音するモード。

わずかなピッチ差やパンのズレが“厚み”や“揺れ”を生み、

小さなシンセとは思えないリッチな広がりが出る。

● Round Robin

鍵盤を弾くたびに A → B → C → D と順番に鳴り分ける方式。

ドラム音源やストリングスでお馴染みの手法で、

連打しても“同じ音が続かない”自然さが生まれる。

● Random Robin

Round Robin をランダムにしたもの。

alias の出方や Dirt の噛み方、WT のスキャン位置が毎回違うため、

まるで生き物のように“気まぐれ”な反応になる。

アルペジオとの相性も抜群。

● MIDI Split

MIDI チャンネル 2〜5 にレイヤー A〜D を割り当てて、外部シーケンサーから直接鳴らせる。

これがなかなか強力で、外部のリズムマシンやステップシーケンサーと組むと音作りの自由度が一気に広がる。

✦ レイヤー構造が生む“乾いたのに有機的”な不思議な質感

Protein のレイヤーは、完全に別パッチというわけではなく、

同じ音色構造を共有しながら、それぞれを微妙にずらしていく 仕様になっている。

レイヤーごとに調整できるのは:

  • ピッチ

  • レベル

  • パン

  • Cutoff オフセット

  • モジュレーション量 など

この微差が積み重なることで、

「同じ鍵盤を弾いているのに、毎回わずかに違う反応が返ってくる」

という、独特の“デジタルの生命感”が生まれる。

これは、アナログシンセのドリフトとも違う。

アナログほど濃厚ではないけれど、

デジタルのパキッとした質感の中にふっと息遣いのような揺れが宿る。

この“乾いているのに有機的”な感じは、Protein のサウンドキャラクターを決める大きなポイントだ。

 

5. アルペジエーターとシーケンサー

Protein のアルペジエーターとシーケンサーは、

派手な機能ではないが、レイヤー構造との組み合わせで本領を発揮する

■ アルペジエーター

設定項目そのものはスタンダードで、パターン、オクターブ、スウィング、ゲートを設定できる。

Round Robin や Random Robin と併用したとたん挙動が変わる。

  • 同じパターンでも、発音レイヤーが切り替わるたびに音が微妙に変化

  • WT のスキャン位置や alias の出方がステップごとにわずかに揺れる

  • Dirt の入り方もレイヤー差分を拾って変化する

その結果、

一定のリズムを保ちながら、音色だけが“予測できない方向へ”微妙に変質していく

これは純粋に面白い。

アルペジエーターを起動中 パラメーターは最低限だがマルチモードと併用すると効果倍増

■ シーケンサー

最初に写真を見たとき、909 や 808 のようなステップボタンが並んでいるわけでもないのに、

どうやってシーケンスを打ち込むのか? と少し疑問に思った。

ところが実際はとてもシンプルで、

Record モードにして外部 MIDI キーボードを弾くだけで、

最大 32 ステップのシーケンスがそのまま録音される。

入力後のエディットも難しくなく、

ディスプレイに表示される(下画像)ステップごとの ピッチゲート値 を直接修正できる。

シーケンサーノートのピッチとゲートをエディットできる

 

そして何より、このシーケンサーは Protein の性格と驚くほど相性がいい

  • ステップの繰り返し × レイヤーのランダム性

  • Drive / Dirt のわずかな差がループのたびに鳴り方を変化させる

  • WT Position をモジュレーションすると、フレーズ自体が少しずつ“侵食”されていくように変質していく

こうした Protein 特有の動きが重なり、結果として、

“同じシーケンスを再生しているのに、毎ループ微妙に違う”

という、とてもデジタル的で、どこか生き物のような挙動が自然に生まれる。

エレクトロニカや IDM、あるいは反復の中で“変質”を楽しむタイプの音楽には、特に相性がいい印象だ。

 

5. Flavour

Protein のフロント一番右にある青いノブ Flavour は、

小さな見た目とは裏腹に音作りの最終工程を担う重要なパラメータだ。

Flavour を回すと、

  • 音の硬さ・柔らかさ

  • 曇り具合、乾き具合

  • ステレオ感の出方

  • Dirt・Drive・WT の関係性

といった“音の質感そのもの”がとても微妙なのだが一括で変化する。

単純な EQ でもなく、コンプでもなく、

Protein の個性的なパーツを“ひとまとめで整える(あるいは崩す)”ための仕上げノブ という理解が近い。

プリセットの微調整やライブでの一手として非常に便利だ。

6.エフェクト

Protein のエフェクトは派手ではないが、

どれも Waldorf のシンセで馴染みのある質感 を持っている。

Phaser、Chorus、Flanger、Delay、Reverb といった空間系に加えて、

Tremolo、Drive、Compressor、EQ

といったエフェクトも用意されている。

印象としては、Waldorf ハードウェアIridiumのエフェクター をコンパクトに搭載したような作りだ。

また Protein は 2系統のエフェクトスロット を持っていて、

空間系と補助系を組み合わせたり、

質感処理と空間づくりを分けたりと、

小型シンセにしては意外に柔軟な使い方ができる。

派手さはないが、Protein の乾いた有機性を損なわない誠実なエフェクト群という印象だ。

 

7. モジュレーション:LFO 2 基と、Waldorf らしいマトリクス方式

Protein のモジュレーションは、巨大シンセのように何でもできるタイプではない。

ただ実際に触ってみると、音作りで“ここが動いてほしい”というポイントに、ちょうど良く手が届く ように作られているのがわかる。

■ LFO は2基:派手すぎず、Protein の“揺らぎ”に噛み合う

Sync / Free を切り替えられるスタンダードな LFO が2基。

WT の位置揺らぎや Drive/Dirt に少し動きを加える用途に向いており、

Protein が元々持っている alias や WT の微振動と相性がいい。

LFO設定時のスクリーン表示

■ エンベロープ 3基:粒立ちやフィルターのクセ調整にちょうどいい

AMP / Filter / Mod の3つ。

複雑ではないけれど、WT の粗さと組み合わせると

短い Attack でも粒が立ちやすく、音の輪郭が出る。しかし操作はやや不便。

エンベロープ設定時のスクリーン表示

■ 8スロットの“Waldorf式マトリクス”が小型機とは思えない自由度を生む

Protein は伝統的な モジュレーションマトリクス方式 を採用している。

最大 8スロット の中で、

  • Source(LFO / Env / Velocity / Aftertouch / Random…)

  • Destination(WT Position / Filter / Drive / Dirt / Pan など)

  • Amount(深さ)

を行単位で割り当てる仕組み。

GUI はシンプルだが、欲しい動きを“ちょい足し”するには本当にちょうど良い

特に:

  • WT Position を薄く揺らす

  • Drive や Dirt をじわっと動かす

  • Pan をさりげなく揺らす

こういった設定がすぐに作れて、

Protein の“乾いてるのに、どこか有機的な動き” が自然と出てくる。

■ 設定方法

  1. 空いているスロットを選ぶ (Sourceノブに触れてから、Selectノブで1〜8のスロットを選べる)

  2. Source を選ぶ(例:LFO1)

  3. Target ノブを回しながらDestination を選ぶ

  4. Amount を調整

Amount を 10〜30% くらいにすると、Protein らしい“控えめな揺れ”が出る。

■ 派手さはないのに“音が勝手に生きる”

過剰に複雑なモジュレーションではなく、

必要十分+Waldorfらしい自由度 がちょうど良いバランスでまとまっている。

触っていると、

  • 大きく動かそうとしなくても音が勝手に立体感を持つ

  • ちょっと動かすだけで“粒立ち・ノイズ・alias”の表情が変わる

  • 小型シンセなのに、作り込む楽しさがある

という Protein ならではの魅力に気づくはずだ。

 

7. 実用面まとめ

Protein は“音の個性がすべて”と言っていいシンセだが、

その一方で、操作性や仕様にはいくつか特徴と割り切りがある。

■ SHIFT 操作は避けて通れない

まず最初に戸惑うのは、Shift 併用の多さだ。

たとえばエフェクト操作では、

  • Dry/Wet=Amount ノブ

  • Time の変更=Shift+Amount ノブ

というように、見た目と挙動が直感的に一致しない場面がある。

別パラメーターを触る際も Shift 操作を挟むため、

慣れるまでに少し時間がかかる。

そのため、Protein は

「即興でつまみをガンガン回すタイプのライブシンセ」とは違うかもしればい。

どちらかというと、構造を理解したうえで“音の性格を決めていく”方が向いている。

 

■ MIDI CC マッピングで外部ノブを補える

幸い、Protein は MIDI CCマッピングが簡単で、

外部コントローラーのノブにDrive量・Dirt量・WT Positionなど

“ライブで動かしたい部分”を割り当てておける。

これは本体の少ないノブ構成を補う手段として非常に有効。

ライブ使用の現実性をぐっと高めてくれる。

■ MIDI CC 設定方法

しかし救済策として、Protein は MIDI CC マッピングが非常に簡単だ。

例えば Drive / Dirt / WT Position など、

ライブで動かしたい要素を外部コントローラーに割り当てておけば、

操作性を大きく拡張できる。

CC マッピングの手順はシンプル

  1. 割り当てたいパラメーターを触る

  2. Shift + Settings

  3. “Map CC” を選ぶ

  4. 外部コントローラーのノブを回す → 完了

本体のノブ数が少ないことは事実だが、外部ノブと組み合わせればむしろ柔軟性が増す

■ USB-C給電のみ、内蔵バッテリーは非搭載

電源はUSB-Cのみで、モバイルバッテリーでも動作する。

ただし本体に充電バッテリーはないため、

“机に置くための小型デスクトップ”という性格が強く、

完全ポータブルではない。

ここは少し惜しいところだ。

 

■ 実用面の結論

Protein は、雑に触って音がどんどん変わるタイプではなく、

“音の性格を作り込んで、それを演奏で動かす” ためのシンセだ。

慣れてしまえば:

  • ノブと画面の対応は素直

  • CC マッピングにより操作性は大きく拡張可能

  • 小型でも視認性は高い

  • 音はライブで埋もれず存在感を保つ

という強みが見えてくる。

即興ライブ向けというより、

自分の音の世界観を明確に持っている人」に向くシンセと言える。

 

 

まとめ

Protein を一言でいえば、

“ヴィンテージ・デジタル” を現代的に再構築したシンセだ。

オリジナル Microwave の源流にある

8-bit ウェーブテーブルの荒さ、CEM 系フィルターのクセ、

軽いデチューンが生む揺らぎ──

そうした「未完成のままの美しさ」を、

現在のプロダクトとして丁寧に形にしている。

そのうえで、Round Robin や Dirt、4 レイヤーの微差、

アルペジエーター/シーケンサー、MPE 対応、2 系統エフェクトなど、

現代の制作環境に馴染む機能もきちんと備えている。

ただしそれらは “音を整えるための機能” ではなく、荒さや個性を前に押し出すための仕掛けだ。

 

一方で、Protein が “人を選ぶ” 部分も確かにある。

操作体系はモード切り替えと Shift が前提で、

直感的に「触れば全部わかる」という種類の機材ではない。

また、仕様としていくつかの割り切りもある。

  • 自作ウェーブテーブルの読み込み不可

  • WT のスムージングなし

  • 8 ボイスのため、4 レイヤー使用時は同時発音 2 音に制限

  • Arp の Hold 機能未搭載

  • MIDI インプリ未公開

  • 外部エディタなし

  • USB オーディオ非対応

どれも致命的ではないが、万能なワークステーション型シンセを求める人には向かない。

しかし、それでもこのシンセが魅力的なのは、

ノスタルジーに寄りかかっているからではない。

Wavetable + アナログ系フィルター + Dirty + 現代機能

という組み合わせにより、

“整いすぎたデジタル”とは異なる魅力を

もう一度、音楽の前線に引き戻しているからだ。

Protein は万能ではない。

だが 「この音でないと成立しない曲」 を確かに生み出せる。

どんな音楽ジャンルに向いているのか

Protein の 乾いた有機性

alias・Dirt・レイヤー差分による微細な揺らぎは、以下のジャンルと特に相性がいい。

  • IDM / エレクトロニカ

    ループが“毎回わずかに変質する”挙動がそのまま曲の強度になる。

  • グリッチ / インダストリアル

    alias の粗さ、Burst/Geiger ノイズ、Drive の歪みのキャラが自然に前へ出る。

  • アンビエント / サウンドスケープ

    デジタルの霞みやノイズの粒子が空間演出に強い。

  • テクノ / エクスペリメンタル

    WT ポジションの変化やランダムロビンが、ミニマルに良い違和感を与える。

万能なシンセではないが、ハマる文脈では圧倒的な存在感を放つタイプだ。

なぜ名前は “Protein” なのか?

触れているうちに、その理由が少しずつ分かってくる。

デジタルでありながら、どこか “生命のような揺らぎ” があるからだ。

4 レイヤーの微差、Round Robin の予測不能な切り替わり、

Dirt や alias のにじみ──

これらの小さな要素が積み重なり、

無機質な波形に わずかな“体温” を与えている。

そう考えると、Protein という名前はむしろ素直で、

このシンセの本質をよく言い当てている。

個人的な結論

私はこのサウンドがとても気に入っている。

派手さはないのに、トラックの中に置くとすっと馴染む。

プラグイン主体のプロジェクトでも、

Protein の乾いた有機感が混ざるだけでミックスにあの90年代デジタルのざらりとした奥行きがほんのり現れる。

主張しすぎないのに存在感は確かに残る。このバランスは整いすぎた

現代の制作環境だからこそ価値のあるキャラクターだと感じている。

Protein は器用なシンセではない。

だが、触っていると90年代のデジタルにしか出せなかった質感が現代的な文脈で文脈で息を吹き返しているのを感じる。

そして、このフォームファクターへの期待

今回の Protein は、Waldorf が

“小型デスクトップ・シリーズ” を本格的に展開する予兆にも見える。

もしこのシリーズが続くなら──

ミニ VA、ミニ FM、ミニ グラニュラー、ドラムマシン、

あるいは “Quantum / Iridium のエッセンスを凝縮した小型機”

といった未来まで想像してしまう。

このサイズで本気の音を作るという方向性は、

多くのユーザーにとって新しい魅力になるはずだ。

Protein は、その最初の一歩として

十分すぎる説得力を持っている。

 

 

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