I AM CHOIRレビュー:Sunoのボーカルから大人数の合唱を作ってみた


デモトラックを作るとき、Synthesizer Vのような歌声合成プラグインを使う場面はかなり増えた。メロディや歌詞を詰める段階なら、音程やタイミング、発音まで調整できる歌声合成は、いまや個人制作でも自然な選択肢だと思う。

主旋律に3度や5度を重ねるような、ソロのハモリも作りやすい。ただ、「複数人が歌っている」感じのコーラスを加えようとすると、少し話が変わってくる。声を何本も重ねれば厚みは出せるが、人数の多さや、同じ場所で歌っているようなまとまりまで作るには、それなりに手間がかかる。

そこで今回は、AM I AUDIOのAI合唱プラグイン、I AM CHOIRを試してみた。実験用にSunoで作った曲から日本語女性ボーカルを取り出し、その声をもとに合唱を作っていく。

I AM CHOIRは、単声ボーカルを読み込むと、歌詞やメロディ、タイミング、フレージングを手がかりに、別の合唱パートを作ってくれるプラグインだ。よくあるコーラスエフェクトのように原音を複製して広げるというより、「このフレーズをコーラス隊に歌ってもらう」感覚に近い。

今回はAbleton Live上で使いながら、Suno由来のボーカルとどれくらい自然になじむのか、実際のアレンジで使えるのかを見ていく。

SunoのステムをLiveへ並べる

まずはSuno AIで、シンプルなデモ曲を作った。書き出したステムをボーカル、ドラム、ベース、その他の伴奏に分けて、Ableton Liveの各トラックに配置する。

今回はI AM CHOIRの変化を聴き取りやすくするため、Sunoでは日本語女性ボーカルの単声を指定し、バックコーラスやダブルはできるだけ入れないようなトラックにした。

ステム分離したSunoのボーカルは完全にドライなアカペラにはならず、伴奏や別パートの成分が少し混ざってしまった。ただ、今回見たいのはSunoのステム分離の精度ではない。少し現実的な条件のボーカル素材でも、I AM CHOIRがどんな合唱を作れるのかを試してみようと思う。

I AM CHOIRの使い方

Ableton Liveの「MIDIトラック」にI AM CHOIRを挿すと、最初に出てくる画面はかなりシンプルだ。中央のエリアへボーカルファイルをドラッグ&ドロップするか、Browserから読み込むだけでいい。

読み込めるオーディオは45秒以内。今回はSunoから書き出したボーカルステムから、サビを含む範囲を切り出して使った。

I am choirの初期画面、ここにボーカルのオーディオファイルを入れる

I AM CHOIRの使い方とモデル選び

ファイルを読み込むと、選択画面に切り替わる。ここでコーラスの種類、マイク、上下オクターブ、曲のキー、3度または5度のハーモニーを設定する。

コーラスのモデルは3種類あり、声のキャラクターだけでなく、対応する音域や向いている役割も少しずつ違う。

  • Gospel Choir:E2〜G5。男性と女性による混声コーラスで、3種類の中ではいちばん幅広く使える。ユニゾンで主旋律を太くしたいときはもちろん、3度や5度のハーモニー、サビのロングトーンにも向いている。まず最初に試すなら、このモデルがいちばんわかりやすい。

  • Kids Choir:A2〜E5。明るく軽い、子どもコーラスらしい響きが特徴だ。主旋律のオクターブ上に重ねたり、曲の上のほうにもう一枚レイヤーを足したりすると、声が少し上へ開いていく。低いフレーズよりも、高めのメロディで使うほうが自然に聴こえる。

  • Shout Choir:E2〜E4。男性によるシャウト/ギャングボーカル。メロディを滑らかに歌わせるためのモデルではなく、「Hey!」「Oh!」のような短い掛け声や、サビ終わりの一言、ブレイク前のアクセントに向いている。曲の中で一瞬だけ人数が増えたような勢いを出したいときに使うと面白い。

今回のように、メロディを持ったサビのバックコーラスを作るなら、まずはGospel Choirが基本になる。その上にKids Choirをオクターブ上で薄く重ねると、高域に空気感や浮遊感を足せる。

設定が決まったら、あとはCreate Vocalを押すだけだ。元のボーカルをもとに、I AM CHOIRが新しい合唱パートを生成してくれる。

コーラスのモデル、マイクの種類、オクターブ、ハーモニーなどの設定を選択する 準備ができたらCreate Vocalsボタンを押す

 

生成からLiveへ戻す

Create Vocalを押すと、すぐに合唱パートの生成が始まる。終わると波形が表示され、その場で試聴できる。

この画面では、生成したコーラスの質感も少し調整できる。Low Cutで低域を整理し、Brightnessで声の明るさを決め、Reverbで空間の広がりを足す。

原音のボーカルと混ぜるなら、Low Cutで下の帯域を少し整理しておくと扱いやすい。Brightnessを上げれば声は前に出るし、少し抑えれば主旋律の後ろに回しやすい。リバーブはここで加えてもいいが、最終的にはLive側でほかの楽器と一緒に調整してもいいだろう。

音を確認したらExportを押す。ボタンの表示がStemsに変わるので、それをAbleton Liveのオーディオトラックへドラッグ&ドロップする。

生成されたコーラスにローカット、ブライトネス、リバーブを加えることができる 設定ができたらExportボタンを押そう

生成したコーラスは、Live上では普通のオーディオクリップとして扱える。必要な場所だけ切り取り、Warpでタイミングを少し直し、EQやコンプ、リバーブを加える。プラグインの中だけで完結させず、普段のボーカル編集と同じように仕上げられるのは便利だ。

StemsスイッチをDAWにドラッグ&ドロップしよう

 

Sunoの女性ボーカルを合唱にする

ここからは、実際に作ったコーラスについて。

まずはSunoで作った曲から取り出した女性ボーカルを、I AM CHOIRに読み込んだ。今回は2種類のコーラスを生成している。

一つ目はGospel Choir。元のメロディと同じピッチで作り、主旋律の後ろに人数感を足す役割にした。いわゆるユニゾンのコーラスで、ボーカルをもう少し太く、大きく聴かせるための土台になる。

二つ目はKids Choir。はじめにオクターブ上を設定したのだが、これはピッチが高すぎたらしい。そこで3度上に設定し直した。主旋律を補強するというより、サビに明るさや浮遊感を加えるイメージだ。結果としては、高音がややキツい音になってしまい、子供らしさが少し足りなかったように聞こえる。

私が作った以下のデモ音源では、1.Sunoオリジナルボーカル 2.ゴスペルコーラス 3.キッズコーラス 4.全部のステムをまとめたので、聴いてみてほしい。

 

どうだろう? 7、8人のシンガーが合唱しているように聞こえないだろうか(笑)

個人的にいちばん面白かったのは、自宅のコンピュータの前で、これだけ人数のいるコーラスをすぐ試せることだった。

実際のコーラス隊に歌ってもらうなら、歌い手を集め、アレンジを準備し、録音して、編集して、ミックスする必要がある。経費もかかる。

でもI AM CHOIRなら、単声のボーカルを用意して、モデルと音程を選ぶだけで、曲の中に人数のいる声を加えられる。サビをどこまで開くか、どの言葉を複数人で歌わせるか、曲のどこで急に人数を増やすか。そういうアレンジを、デモ段階から試せるのは大きい。

整っているから、重ねやすい

I AM CHOIRは、元のボーカルのメロディ、歌詞、タイミングをかなり正確に追ってくれる。そのぶん、生成されたコーラスはきれいにそろって聴こえる。

単体で聴くと、少し整いすぎていると感じる場面もあった。実際のコーラスであるならば、個々の声の違い、語尾の揺れ、わずかなタイミングのズレがあってもう少し生々しいに違いない。

ただ、この均質さは悪いことばかりではない。I AM CHOIRを、一発で完成した合唱を出すためのプラグインではなく、合唱のレイヤーを作るための素材生成器として考えると、むしろ使いやすい。

今回のように、Gospel Choirをユニゾンの土台にして、その上へKids Choirをピッチ上で重ねる。さらに、別のマイク設定で作ったGospel Choirを小さく混ぜたり、必要な部分だけ3度上のハーモニーを足したり、Shout Choirで短い掛け声を入れたりする。こうして少しずつ違う素材を積み上げると、1種類だけでは出にくい広がりや、声の層が作れる。

もし実在のシンガーに歌ってもらえるなら、同じメロディでも歌い方の違うテイクを何本か録り、それぞれをI AM CHOIRに通して重ねていくことで、より自然で立体的なコーラスに近づけられるのはいうまでもない。

 

AIモデルと歌い手への還元

I AM CHOIRのモデルは、既存の有名歌手の声を無断で集めて学習させたものではない。各モデルは、実際の歌手やコーラスグループと直接協力して作られている。参加者は、自分たちの声がAIモデルの学習に使われることを理解し、同意したうえで録音に参加している。

そして、参加した歌い手には録音時の報酬だけでなく、製品の売上に応じたロイヤリティも支払われる。つまり、声を一度買い取って終わりではなく、I AM CHOIRが使われ、売れていくことで、モデル作りに関わった歌い手にも継続的にお金が戻る仕組みになっているそうだ。

まとめ

I AM CHOIRは、ボタン一つで完璧な人間の合唱を再現するための魔法のプラグインではない。入力ボーカルの状態に結果は左右されるし、生成された声が整いすぎて聴こえることもある。

それでも、自宅のコンピュータでGospel Choir、Kids Choir、Shout Choirという違うキャラクターを呼び出し、曲のとあるセクションに「人数」を足せる体験は新鮮だった。

単一のモデルをそのまま使うのではなく、複数のモデル、オクターブ、ハーモニー、マイク設定、入力テイクを組み合わせていく。そう考えると、I AM CHOIRは単なるAIコーラス生成ツールというより、合唱アレンジのための素材を作る道具として面白い。

169ドルは気軽に買える価格ではない。ただ、これまで予算や制作環境の都合で諦めていた「コーラス隊を使ったアレンジ」を、デモ段階から試せるようにする価値はある。

まずは14日間の無料トライアルを手に取ってみよう。現時点ではmacOS 12以降に対応し、VST3、AU、AAX形式で利用できる。Windows版は開発中となっている。

Am I Audio


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