ドイツの首都ベルリン。多くのアーティスト、レコードレーベル、クラブシーンを抱える音楽にもっとも寛大な街。東西が融合され、人の流れが大きく変わりつつある中で、ベルリンの人々の音楽への愛情はコンピューターサイエンスと融合し、Ableton Live、Native Instrument、SoundCloudなど、この十数年の間にドイツベルリンに拠点を置く音楽ソフトウェアメーカーの成長は著しく、人々の音楽制作のあり方そのものを大きく変え、それに伴いエレクトロニックミュージックそのものが成長変化することに大きく貢献している。今日紹介するSugarBytesは次の時代のベルリンミュージックソフトウェアメーカー。
Robert Fehse氏(下の写真右)とRico Baade氏(写真左)の二人によって創立されたSugarBytesは旧東ベルリン、現在では閑静な住宅街で知られるプレンツラウアーベルク地区にオフィスを構えている。気さくにオフィス訪問に応じてくれたRobert氏、思った以上にリラックスした雰囲気のオフィスに派手派手しさはなく、これもまた好印象。二人の出会いは10数年前、ともにNative InstrumentのReaktorのプログラマーとして活躍、当時はNI創立者Stephan Schmittの傍らで「どのようにしてうまくDSPを動かすのかを見て学んでいた」というRico氏。その後二人は独立しSugarBytesの創立に至っている。「とにかく僕らの出会いはラッキーだったよ」
SugarBytesのプラグインはオーソドックスなプラグインとは違い、どれもユニークなアイデアが詰まったものだ。複雑化しがちなコンピューターソフトウェアをシンプルで面白く操作できるインターフェイスに、そして新しいサウンドを生み出すサウンドエンジンの開発に情熱が注がれている。エレクトロニックミュージックやダンスミュージッククリエーターの視点を見据えた彼らのマーケティングは特に冴えており、昨年はTurnadoという8種類のエフェクターを複合利用するマルチエフェクターがヒット。そのパワフルでいてクリエイティブなプラグインはスタジオ内だけではなく、ライブパフォーマンスでの表現の仕方も変えつつある。Kid606、Mouse on Mars、Herbert、Modeselektor、SiriusMo、Teddy Riley、UNKLEなどの新旧ときめくエレクトロニックミュージックアーティストに支持されているのも頷ける話だ。
「とにかく僕の頭の中にはアイデアがいっぱいあるんだ。以前はスクエアプッシャーの大ファンで、あの絶技巧的なサウンドをどうやったら自分でもつくれるんだろう?っていうとこらから創作意欲が生まれたり、それからKorgのMS-20も大好きで、スタジオであのフィルターをいじりながら、どうやったらこのフィルターの味を出せるんだろうなんてことを考えたりね」とRico氏。
「僕らは現在のエレクトロニックミュージックシーンの成長をとても良い方向に受け取っているよ。そこには多様性があって、型にはまらず、新しいものを作り出そうというエネルギーがある。例えばダブステップには多くのハーモニーやメロディが組み込まれているけど、ミニマルテクノは全くその逆だったり。僕らはこのバラエティが好きで、僕らの作る大概のソフトウェアもそういったバリエーションを持っていて、新しいサウンドを作る、というアイデアのもとに取り組んでいる。それもシンプルでパワフルな方法でね。これから先も新しくてユニークなサウンドを作る可能性を持ったクリエイティブなツールを作って行きたいと思っているよ」という現在のベルリンのエレクトロニックミュージックシーンを象徴するようなRobert氏の言葉が印象的だ。
SugarBytesから初のリリースとなったマルチエフェクター。MIDIキーボード上に様々なエフェクターをアサインすることができ、キーボードを押さえるとアサインされたエフェクターが作動し、同時に複数のエフェクターを動かすこともできる。かつては膨大な時間と労力がかかった作業を、一つのプラグインエフェクターの中で、それもリアルタイムな操作を可能にし、エフェクターを演奏するという概念を広げたプラグイン。エフェクターの種類はアンプ系、モジュレーション系、ディレイ、フィルター、ルーパーなどのターンテーブルテクニック、スペシャルエフェクターとしてカラオケ(ボーカルの帯域をキャンセルするもの)なども用意されている。
14種類のエフェクターが縦に並び、それぞれのエフェクターを32ステップのシーケンサーのように操作することができる。マルチエフェクターを備えた斬新なルーパーとでも言うのが適当か?例えば、ある1小節の中で最初はフィルター、その後にフェイザー、そして最後には両方のエフェクターをトリガーするなんて複雑な技を瞬時に行うことができてしまう。さらに12のシーケンスパターンを作ることができ、MIDIキーボードからこれらのパターンを呼び出すことが可能だ。操作はシンプルで、数分で大量のパターンを作ることがでる。あとは一番ベストなものを選べば良い。
これが昨年リリースされた話題のプラグインエフェクター。エフェクター一つにつきノブが一つというシンプルなデザイン。ノブを回すとエフェクターがオンになり、回し続けるとパラメーターが変化し、ノブを戻すとエフェクターがオフになる。同時に利用できるエフェクターは8種類。24種類のエフェクターの中からの選択ができる。ではこの8つのエフェクターノブを同時に回したらどうなるのか??その答えはDictatorというスライダーによって表現され、思いもよらないサウンドが飛び出すのはもちろんのこと。SugarByteとしてはこの大胆なアイデアをノイズやクリックなしにスムーズに動かすことには相当な苦労があったそう。しかしその成果は十分あったようだ。
Cyclop
そしてこれがもうすぐリリースの予定のソフトウェアシンセCyclop。ウォッブルモノシンセサイザーといわれているように、ダブステップシーンを視野に入れた方向性が打ち出されているが、もちろんただのダブステップ用シンセではない。パラメーターがリアルタイムで動きまくる、そして音も激しく動き回る。詳しくは次回のポストで。
Sugar Bytes デモバージョンあり。まだ試したことのない人は是非!
いっかい Sugar Bytesの新プラグインシンセ Cyclop スクリーンショット公開!
いっかい マルチエフェクター Sugar Bytes Turnado