ホーンセクションの音をキーボードで表現することはとても難しく、ピアノのような音とは違い、どうしてもリアリティに欠ける音になってしまいがちです。もちろん本物の音をレコーディングすることが正しいこと分かってはいるのだけれどそんな予算はなく。また、すでに多くの高品質なサンプル音源もリリースされていますが値段が張りすぎることでなかなか手を出しにくいのが現状だったりします。
Native InstrumentsがリリースしたKontakt専用ライブラリーSession Hornsは4本編成のホーンセクションサウンドが収録されたサンプルプレーヤーで、トランペット×2、トロンボーン、テナーサックスのアンサンブルサウンドを簡単にアレンジ・演奏することができるようにデザインされています。アーティキュレーション機能を使い分けることで管楽器特有の奏法を再現することができたり、Animatorという自動演奏機能により収録されているフレーズを組み合わせながらホーンセクションのフレーズを演奏することができたりするなど、DAWソフトウェアで本物に近いホーンセクションアレンジをするための機能が搭載されています。

 

 

Section SetUp
Session Hornsはトロンボーン、テナーサックス、トランペット1、トランペット2、これら4つの楽器のコンビネーションを使いわけながら演奏をすることができます。例えばトランペット+トロンボーンの2本、トランペット2本、トランペット+トロンボーン+テナーサックスの3本、フルセクションではこれら4つの楽器、などといった具合。一つだけの楽器を使った演奏はできないので、注意してください。

 アーティキュレーション
ホーンセクションを演奏する際に不可欠となるアーティキュレーションも多くサンプルされており、演奏している最中にMIDIキーボードを強く押さえると選択しているアーティキュレーションをかけられる仕組みになっています。

アーティキュレーションの種類

  • Rip (グライドのような奏法)
  • Grace Note (装飾音符)
  • shake (トリル)
  • FoPiCre  (フォルテ>ピアノ>クレシェンド)
  • FoPiCre Time  (フォルテ>ピアノ>クレシェンド クレシェンドの速度がシーケンサーの速度に同期)
  • Staccatissimo (スタッカート)
  • Marcato  (ハッキリ)

Shakeはアニメの効果音にも使えそうなサウンドですが、シェイクする速度を変えることができればもっとよかったかもしれません。FoPiCreはホーンセクションならではの緊張感が上手く伝わってくる気持ちのよいサウンドに感じました。しかしこれらの切り替えはSessionHornsの画面から手動で行わなければならないのが残念。

ピッチベンドを使ったアーティキュレーション
これらのアーティキュレーション以外にも、MIDIキーボードのピッチベンドを上げ下げすることによってDoit(上に向かうグリッサンド)やFall(下に向かうグリッサンド)のアーティキュレーションをトリガーすることもできます。

 ボイスアシスタント
よりリアルなブラスセクションアレンジを行うために用意されているボイスアシスタントは、音楽の状況に合わせて使い分けることで、よりインパクトの強いサウンドを作ることができます。

1. Smart Voice Split
厳密なブラスアレンジメントをする場合、トランペット、トロンボーン、サックス、少なくても3つのパートのアレンジをしなければならないわけですが、Session HornsではこのSmart Voice Splitという機能を使うことによって、4本の指で和音を同時に押さえると一番低い音から順にトロンボーン、サックス、トランペット2、トランペット1が受け持ち、ブラス音源を分割されて発音させることができます。

たとえば下の3本をコードで押さえながら、トップであるトランペットでメロディを演奏するなど、キーボードをある程度弾くことができる人ならばリアルタイムで楽しめる機能でしょう。

しかしかなりクセのある動きをする傾向があり100%の動作をするとは言いがたいところです。和音を弾くことに特化した機能ではありますが、演奏している最中に和音を変えよとした場合 には発音されない音があったり、一つの音をトリガーするとすべての音がトリガーされてしまったりすることがランダムに発生します。

サポートセンターに問い合わせをしたところ、この現象を回避するためにはサスティーンペダルをつかうことで、幾分スムーズに発音するようになるとのことです。

 2. Octave さらにより厳密なアレンジを行うために、Octave機能によって和音を押さえた際に特定の楽器を1オクターブ下げて発音させることもでき、たとえばFullSectionの形態でDrop 1stを選択すると、FullSectionで一番低いパートを受け持っているトロンボーンが1オクターブ低い位置を演奏する形になります。同様にDrop 2ndでは2番目に低いパートを受け持っているテナーサックスが1オクターブ低い位置を演奏することになります。

 3.Legato
滑らかなレガート奏法を得意とするモードで、モノ(単音)で発音、映像が目に浮かぶような美しいメロディを演奏することができます。同様にOctave機能を切り替えることで、特定の楽器を1オクターブ低い位置で演奏することも可能。

4.Animator
このSession Hornsのハイライトの一つであるAnimatorは、収録されているフレーズを組み合わせながら自動演奏を行うことができる機能。ジャンルは6種類(RnB POP /NuJazz/Funk /Latin /Reggae)全174のフレーズが用意されており、オンスクリーンキーボードに表示されている赤の部分でフレーズを切り替え、青の部分でフレーズをトリガーすることができるようになります。急激なテンポの変化にも対応できます。
またRhythmOnlyスイッチを押すことでこれらのフレーズからハーモニーを除き、リズムだけを演奏させることができたり、サスティーンペダルを使うことでこのAnimator機能のオン・オフを行うことも可能になります。
本物のホーンセクションのサウンドをリアルタイムで操ることができる愉快な機能で、ここからインスピレーションを得て楽曲制作に入るのも一つの楽しみ方かもしれません。とにかくサウンドが明るく、一気にラテンフレーバーを楽曲にプラスすることができてしまう便利な機能。

 

サウンド
Session Performance Instrument Soundページでは音のミックスバランスを調整することができるプリセット、プリセットエフェクター、リバーブ、ステレオ幅の調整、デチューンの設定を行うことができ、細かくサウンドを作り込むことができます。

全体的なサウンドは明るく、時にはシャープすぎる印象も持ちます。特にベロシティを強くすると音の立ち上がりが強調され過ぎる傾向があり、個人的にはベロシティコントロールを外した状態の丸みのある音が好みではありました。

 

使用してみて
まず注意しておきたいのは、このSession Hornsはコンピュータのメモリを多く使います。筆者は当初4Gのメモリを積んだMac OS10.7.5+Ableton LIveで試していたのですが、音が途中で途切れ始めたりするなどの限界を感じました。その後、メモりを8Gにしたあとでは操作は快適で問題なく動作しています。

このSession Hornsは真面目なホーンセクションのためのサンプルライブラリーというよりは、楽しみながらホーンセクションを演奏するためのサンプルプレーヤーと考えた方がよいかもしれません。残念なことは、MIDIによるコントロールがピッチベンドとサスティーンペダルを使ったごく限られたもののみであるというところで、Animatorのフレーズやソング変更、アーティキュレーションの変更も同様に外部MIDIコントローラからの制御を行うことができるようになればより演奏が楽しくなるように感じます。しかしなんといってもこのサウンドクオリティで価格が¥9,800。通常のシンセでは表現することの難しい「自然の息吹」が吹き込まれたブラス音源は、きっと音楽制作の力強い味方になってくれるでしょう。

システム要件 NI Kontakt5もしくはKontakt 5 playerで動作。

Native Instruments

e-Insyrumentsによるチュートリアルビデオはこちらからどうぞ。

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3 Responses to ホーン・セクションのサンプルライブラリーSession Horns for NI Kontakt を試してみた

  1. abking より:

    前略 session horns を購入した者です。
    日本語のマニュアルがないので、ぶしつけとは、
    おもいましたが、しつもんがあります。NIに質問しても要領がえないものですから。
    アニメーターで演奏させたフレーズは、どのようにDAW ソフトに記録するのでしょうか?
    私はロジックプロを使っています。よろしくお願いします。

    • ik より:

      >Abkingさん

      (演奏させる場合)通常のプラグインシンセを操作する方法と一緒で、MIDIシーケンスに書き込みをすればアニメーターも同様に音がなります。MIDIキーボードのE1からF5の範囲内で。
      フレーズを変更させるには同時にC0〜A0の範囲内でMIDIノートを書き込めば、フレーズが変更します。

      (録音する場合)これも通常のプラグインシンセを録音する方法と一緒で、一度MIDIシーケンスに書き込みをした後で、録音したい範囲を指定してBOUNCEをすれば録音されます。

      もし分からなかったらまた聞いてください。

  2. abking より:

    ik様 御回答ありがとうございます。
    なにぶんDAW初心者です。参考にさせていただきます。

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