Native Instruments POLYPLEX は8つのスロットにドラムサンプルを並べ、DAWソフトウェアからドラムパターンを打ち込んでいくことができるドラムサンプラーなのだが、このソフトウェアのすごいところは、1つのスロットの中に4つのサンプルを置くことができ、MIDIノートをひとつたたけば、4つのサンプルが同時に音を出すことができる。そして各サンプルの設定も細かく行うことができ、例えばサンプル1の音はディケイの長い音キック、サンプル2の音はピッチの高い音キック、サンプル3の音はサウンドエフェクトにする、サンプル4の音にはキックの逆再生の音にする、、、など、かなり細かいドラムサウンドの音創りを行うことができる。
付属するサンプルの数もかなりの量で、しかもサウンドクオリティもかなり高い。4つのサンプルを派手にエディットしても、ゴミのような音になることはまずなく、迫力ある音が不思議と作れてしまうのだ。
もう一つ、このPOLYPLEXの大きな特徴をあげるなら、各スロットや各パラメーターに『サイコロ』が用意されており、この『サイコロ』を振ればランダムにサンプルを選択できたり、パラメーターをランダムに設定することができる。キットを丸ごと全取っ替えしてしまう『サイコロ』もある。乱暴な言い方をしてしまうと、「適当に・・」音が作られるということなのだが、気に入った音が見つからず悩んでいる時にはこの『サイコロ』を振ってみると、予測外のいい結果になったりもする。いや、いかんいかん、元の設定に戻ろうという時のためのUNDOボタンもちゃんと用意されている。
POLYPLEX バージョン1.1
このPOLYPLEX が最新バージョン1.1をリリースした。バージョン1.1の大きな特徴は、NI のMASCHINEとの統合が行われたことだ。NIといえばこれまでもBatteryやDrum Lab などドラムサンプラー・ソフトウェアをいくつかリリースしているのだが、NIの看板ドラムマシンであるMASCHINEとは上手い統合ができずにいた。MASCHINEユーザーで、しかもKOMPLETE 10 のユーザーであるならば、同じメーカーのドラムマシンをひとつでまとめて操作したいと思う気持ちは当然のことだろう。
その点、POLYPLEXの最新バージョンは、MASCHINEのワークフローと見事に統合し、MASCHINEからでも不憫な思いすることなしにPOLYPLEX を操作することができるようになっている。
MASCHINE × POLYPLEX キット
まず、POLYPLEX のキットをMASCHINEのSOUNDに読み込んでみた。
これまでのPOLYPLEX のバージョンでは、MASCHINEからはマスターのパラメーターのみしか操作することができなかったのだが、今バージョンからはPOLYPLEXの8つのスロットすべてにアクセスすることができる。下の画像を見てもらえばわかるように、各サウンドのボリューム・バランス・チューン・ディケイ・インサートA・B・SEND1・SEND2これら8つのパラメーターを操作することができる。MASCHINEコントローラのノブを回しながら、オートメーション録音することも可能だ。
MASCHINE × POLYPLEX シングル・バンク
そしてもう一つ、POLYPLEXバージョン1.1 ではキットだけでなく、シングルサウンドのバンクも用意されている。たとえば、「キック」のバンクを開いてみるとブラウザーには60種類ほどのキックサウンドが表示されるのだが、これを開いてみると、
このように、ひとつのサウンドのみを扱うインターフェイスが表示され、MASCHINEのサウンドスロットにひとつのサウンドをアサインすることができようになる。
仮にMASCHINEのサウンドスロットにPOLYPLEXのサウンドをいくつかアサインしてみた。(画像下)MASCHINEのSOUND1 にはキック、SOUND2 にはスネア、SOUND3 にはパーカッション、、、など。
つまり、MASCHINEの標準プリセットと同様に、ブラウザーがらPOLYPLEXの音色を探し、パターンを作り、各サウンドのパラメーターいじることができるようになるのだ。すべてのパラメーターがMASCHINEに表示されるわけではないので、サウンドデザインを細かく行う際にはPOLYPLEXのインタフェイスを開いた方が良さそうだが、ライブパフォーマンス最中に音色を操作するような場合には十分な量のパラメーター数といえるだろう。
残念ながらMASCHINEコントローラからは『サイコロ』を振ることはできないのだが、POLYPLEXインタフェイスを開けば、これまでと同様に『サイコロ』を振ることもできる。
まとめ
まるで、MASCHINEに新しいシンセエンジンが追加されたかのようにPOLYPLEXを使うことができるようになる。MASCHINEユーザーとしては、これまでのワークフローを損なうことなくPOLYPLEX のハイファイサウンドを扱うことができるのがとても嬉しい部分だ。このような形の統合であればNIファンも十分に納得できることに違いない。問題はといえば、POLYPLEXはかなりのCPUハングリーであることだ。
おまけ
POLYPLEXのディベロッパーであるTWISTED TOOLSがこのリリースを記念して、POLYPLEXの無償エクスパンションパック「BLAST OFF」をリリースしている。30キット、128サンプルを含む大迫力拡張音源。POLYPLEXユーザーはダウンロードしておくことをお勧めしたい。インストール方法も中で解説されているので、ぜひ。