昨年の夏にNative Instrumentsがリリースしたキーボード・コントローラKONTROL S-シリーズは、それまでのMIDIキーボードの常識を超える先進的な機能とデザインによって大きな注目を浴びた。私自身もユーザーの一人ではあるのだが、NIのソフトウェアバンドルKOMPLETE 10 を演奏する上では切っても切れないキーボードコントローラと感じている。KOMPLETEの数え切れない位のプリセットを、KONTROL-Sのエンコーダノブを使いながら選択する感触は素晴らしいものがある。これがソフトウェアシンセサイザーの進化系なのかと思う反面、KONTROL Sキーボードを使っていると、「あれ?」と思ってしまうようなギャップを感じてしまうことも事実なのだ。たとえば、、
- KONTROL-S はNIソフトウェアだけのものなのか? KONTROL-S はNATIVE MAPというテクノロジーによってNI ソフトウェアのパラメーターをスクリーンに表示する。しかしNI以外のプラグインを読み込んだ時にはこれは動作しない。つまりKOMPLETEソフトウェアを持っていなければ面白みは半減?一般的MIDIコントローラとして見た時にはかなりユースレスといえる?
- 「アルペジエーター」や「スケールモード」はKONTROL-Sの一番キャッチーな機能ではあるのだが、DAWソフトウェアへのレコーディング(MIDI OUT)を行うことができない。
- KONTROL Sで音色のエディットを行っても、それをすぐにセーブすることができない。
- コンピューターとのUSB接続を絶ってしまうとKONTROL Sは何もできなくなる。
しかしこのようなギャップを感じるのも5月まで。先々日、Native Instrumentsはドイツ・フランクフルトでPRODUCT SHOWCASEを開催し、KONTROL S-シリーズ・キーボードの大きなバージョンアップを発表した。
1.KOMPLETE SELECT
これまでのKONTROL-S はNIのソフトウェアを使わなければ面白みはほとんど感じることができなかったのだが、5月から、すべてのKOMPLETE S-シリーズ登録ユーザーそしてMASCHINE 2 ソフトウェア登録ユーザーはKOMPLETE SELECT(10種類のNIプラグイン)を無償で手にすることができる。つまりKOMTROL-Sを買ったその日からKOMPLETEソフトウェアを堪能することができるのだ。
KOMPLETE SELECTに内包するソフトウェアは以下の通り。
- MASSIVE
- MONARK
- REAKTOR PRISM
- RETRO MASCHINE
- THE GENTLEMAN
- VINTAGE ORGAN
- SCARBEE MARK 1
- WEST AFRICA
- DRUMLAB
- SOLID BUS COMP
KOMPLETE KONTROL 1.1
KONTROL-S とKOMPLETEソフトウェアをつなぐソフトウェアKOMPLETE KONTROLがアップデートバージョン1.1 をリリースする。
- Smart Play 機能を使った演奏のMIDIアウト(アルペジエーターやスケールモードの演奏情報をDAWソフトに書き込むことや、ハードウェアインストゥルメントを使ってアルペジオ演奏などが可能になる)
- タッチストリップの機能向上 (テンポシンクが可能に、たとえばリズムパターンを作ることができるようになる)これはユニーク
- セーブ、リコール、プリセットマネージメントの向上 (どのような形でセーブをおこなうことができるようになるのかはまだ明らかではないが、これは絶対必要)
いままでたくさんのプリセットを読み出すことができたにもかかわらず、エディットした内容をキーボードの上からセーブすることができなかったことは奇妙な話だ。はたしてどのような形でセーブができるようになるのかは見てのお楽しみ。
NATIVE KONTROL STANDARD
サードパーティ製VSTプラグインへの対応。
2015年夏からは、KOMPLETE KONTROL からサードパーティ製のVSTプラグインを開くことができるようになり、VSTプラグインのパラメーターも自動的にスクリーンに表示されることになる。これまでは NI KOMPLETEソフトウェアしか対応していなかったので、KOMPLETE-S の使い道はかなり大きく広がることになる。
ということは、 VSTに対応していないLogic Pro からでもKOMPLETE KONTROLソフトウェアを通せばVSTを開けるのか?(これは要確認)
サードパーティ製のAUプラグインへの直接対応はまだ予定されていない。
どちらにしてもNovation のAutomapを超える形での対応になることを期待したい。それから、AKAI が間もなくリリースするADVANCE KEYBOARD ではすべてのVSTプラグインへの対応がすでに実現している。この辺りはメーカーの面子にかけた争いが展開されている模様ではあるのだが、私たちユーザーにとってはコントローラとすべてのプラグインソフトウェアがスムーズに統合がしてくれることが一番嬉しいことだ。どのような形でのアップデートになるか楽しみだ。
NATIVE KONTROL STANDARD
NATIVE KONTROL STANDARD (NKS)というプロトコルが公開される。つまり、サードパーティ製のプラグインメーカーがKONTROL-S に対応したプログラムを提供することができるようになる。たとえば、どのようにパラメーターを表示するのか、タッチストリップをどのように動かすのか、カラーLEDをどのような配色でどのような配列にするのかなど、試行錯誤が多い分野ではある。しかしすでにArturia を始めとするソフトウェアメーカからの賛同を得ているとのことで、メーカー間のコラボレーションが実現する予定となっているそうだ。これは早くお手並みを拝見したい。
KONTROL-SがMIDIキーボードの「スタンダード」になりうるのかどうかは疑問が多いところだが、NIの勢いを感じる部分だ。
MASCHINEとの統合
以前にもレビュー記事を書いたのだが、MASCHINEとKOMPLETE-Sの相性はとても良い(おそらくコーデックが一緒?)。ただ一つ不満だったのは、ひとつのインスタンスしか演奏することができなかったことで(MASCHINRスタンドアローンモード)、MASCHINEでドラムキットを演奏している間はKONTROL-S でも同じキットしか表示できなかった。この先のバージョンアップでは、MASCHINEでドラム演奏を行い、KONTROL-Sでベース演奏を行うようなこともできるとのことだ。MASCHINEとKOMTROL-Sを2台使う派手なパフォーマンスに大きくを期待したい。左手でドラムトラック、右手でベースラインを弾くなど。
「ソフトウェアとハードウェアの融合」はNative Instruments が提唱する大きなテーマだ。
個人的に注目したいのは、Native InstrumentsはMIDIキーボードというスタンダードなコントローラをどこまで昇華することができるのか?MIDIキーボードをもっと面白いインターフェイスにすることができるのか?ソフトウェアインストゥルメントをどこまで快適に操作できるようになるのか?というあたりだ。MIDIキーボード全体の動向にも注目していきたい。
いつも拝見しております。お世話になっております。
/////「アルペジエーター」や「スケールモード」はKONTROL-Sの一番キャッチーな機能ではあるのだが、DAWソフトウェアへのレコーディング(MIDI OUT)を行うことができない。////
この点についてですが、現在(バージョン1.7.1)では改善されているのでしょうか?
私は、昨日komplete-sを購入して、いま色々調べているのですが..
簡単にできる方法をもしご存知でしたら、お教え頂けると幸いです。