ふとした瞬間に流れ出し、いつまでも止まらない「あの曲」。頭の中で延々とリピートされ、気づけばつい口ずさんでしまっている…。あるいは、メロディが脳内で勝手に再生され続け、集中できなくなったり、イライラしたり。音楽制作に取り組んでいる方なら、きっと一度は経験したことがあるのではないでしょうか。
日本語では「頭から離れない曲」や「脳内で再生されるメロディ」といった説明的な表現が使われますが、英語ではこの現象にイヤーワーム(Earworm)──“耳のミミズ”というちょっとユニークな名前がついています。
このイヤーワーム現象について、アメリカの科学メディア Scientific American のポッドキャスト「Science Quickly」では、脳と記憶、感情の関係性などを交えながら、科学的な視点で深掘りしています。
どうしてイヤーワームが起きるの?
研究者たちは、いくつかの「トリガー(引き金)」を突き止めています:
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最近その曲を何度か聴いた
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何かのイメージや言葉が曲と関連していた(例:「雨」で「Purple Rain」を思い出す)
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感情と曲のリンク(悲しい時にいつも浮かぶ曲など)
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ぼーっとしている時(散歩中、何もしていない時など)
さらに、イヤーワームになりやすい曲には共通点も:
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テンポが速め(平均124BPM程度)
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メロディに抑揚があり、キャッチーな繰り返しがある
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人間が「自然に口ずさみたくなる」リズム感を持っている
イヤーワームを止める方法はある?
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別の曲に“上書き”する
関連する曲や全然違う曲を思い浮かべて脳内ラジオを切り替える。
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実際に音楽を聴く
脳内で想像している音楽と、外部からの音は同じ神経経路を使うため、実際に曲を流すことで置き換えることができる。
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そして、最も意外な方法――ガムを噛む!
ガムでイヤーワームが止まる理由とは?
2015年、イギリスのレディング大学の研究によれば、ガムを噛むことでイヤーワームを抑えられるという結果が出ています。
ダラム大学の心理学者ケリー・ヤクボウスキー氏はこう説明します:
「私たちが頭の中で歌を再生するには、“口で歌う”ような神経の準備(運動計画)が必要なんです。
でも、実際に口を動かしていると、そのプロセスが妨げられます。つまり、ガムを噛んでいると“頭で歌う”ことができなくなるんです」
これは、“内なる声”を物理的に遮断するというユニークなアプローチで、強迫性障害(OCD)など他の侵入的思考への応用も検討されています。
イヤーワームとうまく付き合うには?
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イヤーワームは脳の記憶・感情と密接に関係
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トリガーは「聴く」「見る」「感じる」「ヒマ」など様々
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止めるには「別の音楽」「実際に聴く」「ガム」が有効
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嫌な曲は困るけど、好きな曲なら脳内BGMとして楽しむのもアリ!前向きに捉えると言うことですね。
イヤーワームに悩まされるのは、脳が音楽を深く記憶している証拠でもあります。制作に集中したいときは、脳内ラジオを切り替えるテクニックを上手に活用して、心のノイズとうまく付き合いたいものですね。
via Boin Boin