2025年5月のSuperbooth 25で正式発表されたMoog Messengerは、Moog Musicが送り出す最新のアナログ・モノフォニック・シンセサイザー。Minimoog Model D、Voyager、Grandmother、Subsequent 37といった名機たちのエッセンスを受け継ぎつつ、現代の音楽制作に求められる柔軟性と創造性を融合した、まさに“クラシックと革新”のハイブリッドモデルです。
メーカーいわく「Moog史上もっとも手に取りやすいアナログ・シンセ」とのことですが、その言葉通り、価格(899ドル)・サイズ・機能性のバランスが絶妙な一台に仕上がっています。
一見するとMessengerは、ごくオーソドックスなモノシンセ。ベースやリード、クラシックなモノサウンドに必要な機能をすべて備えており、MinimoogやGrandmotherなど過去の名機を思わせるデザインです。
- 32鍵のセミウェイテッド・フルサイズ鍵盤(ベロシティ+アフタータッチ対応)
- ノブ=1機能の直感的な操作系
- クラシックな見た目に収まらない革新的な内部設計
こうしたスペックからも、従来のMoogファンにとっても、これからMoogを触ってみたいという人にとっても、注目のモデルといえそうです。
新世代のウェーブフォールディング・オシレーター
最大の目玉は、2基の電圧制御オシレーター(VCO)。これらは、ハイブリッドなウェーブフォールダーを搭載しており、
- トライアングルからソウ、スクエア、パルスまでをシームレスにクロスフェード可能
- その波形変化はモジュレーション可能
- ハードシンクとFM変調にも対応
と、倍音豊かな音作りができる設計になっています。さらに、波形可変のサブオシレーターとノイズソースも搭載されており、Moogらしい図太いローエンドにも一切の妥協はありません。
フィルターも新解釈、でもMoogの魂は健在
Moogといえばやはりラダーフィルター。Messengerでは、この伝統的な回路を再構築し、以下の4モードに対応:
- 4ポール・ローパス
- 2ポール・ローパス
- バンドパス
- ハイパス
さらに、RES BASSスイッチにより、高レゾナンス設定時でもローエンドを損なわない補償が行われる設計。クラシックなMoogサウンドを保ちつつ、音の表現幅が格段に広がっています。
モジュレーション & サウンドデザイン機能も充実
モジュレーション関連も非常に強力:
- 2つのベロシティ対応ADSRエンベロープ(ループ可能)
- 2基のLFO(うち1つはモジュレーションホイール連動、もう1つはシンク/リセット可能)
- 64ステップ・シーケンサー(確率ベースの変化やパラメータ記録に対応)
- 多彩なパターンや再生方向が選べるアルペジエーター
柔軟な接続性と即戦力のプリセット
Messengerはスタンドアロンでも、他の機材と組み合わせても活躍します:
- MIDI In/Out(DIN)
- USB-C
- Clock In/Out
- CV/Gate端子(6系統)
- オーディオ入力(フィルターにルーティング可能)/出力
- エクスプレッションペダル/サスティンペダル端子
- ヘッドホン端子
プリセットは16バンク×16音色の計256音色を保存可能。ライブや制作で即座に呼び出せるのも魅力です。
発売日と価格
- 発売予定日:2025年6月2日
- 価格:$899(公式発表)※一部媒体では$799と記載ありますが要確認です
Moog Messengerは、単なる“入門機”という枠を超えて、アナログ・シンセの楽しさと深みを丁寧に詰め込んだ一台。クラシックなMoogを愛する人にも、これからシンセを始めたい人にもおすすめできる、まさに“Messenger=伝え手”の名にふさわしいシンセといえそうです。