いつもならこの時期はMusikMesseについてあれこれと話題が昇る頃なのですが、今年は少しばかり様子が違います。というのも今年はドイツ・ベルリンでは3月31日から4月2日までSuperbooth16というシンセサイザーのエキシビションが開催されるのです。展示参加メーカーは100以上、その他メーカーによるプレゼンテーションやDIYワークショップ、コンサート、ライブイベントも催され、最大級のシンセサイザーイベントとなる模様です。
Superbooth16はモジュラーシンセファンならばきっとご存知のベルリンのシンセショップ/ディストリビューターSchneidersLadenが主催するイベントです。例年ならフランクフルトのMusikMesseで、この一団がヨーロッパ産のモジュラーやアナログ系シンセなど大小様々なユニークな製品を展示するのですが、今年はMusikmesseから独立。そして記念すべき第一回目のイベントがベルリンで開催されます。
Superbooth16が開催されるFunkhausは旧東ドイツ国営放送局の跡地で、現在は音楽教育機関やレコーディングスタジオ等で使われるなど、ベルリン新しい音楽文化の拠点となりつつ場所です。特に大きく目を引くのが50年代、60年代のレトロ感溢れる敷地内の建物なのですが、それだけではなく、元国営放送局というだけにスタジオやコンサートホールの音の響きが桁外れに素晴らしいのです。イベント当日は夜通しパーティー/コンサートも行われ、ベルリンらしい長い夜を堪能できるに違いありません。
SchneidersLadenというとアナログ、モジュラーシンセの代名詞とも言える/ショップディストリビューターなのですが、Superbooth16はデジタル・ソフトウェア系メーカーも多く参加します。特にMusikMesseにはしばらく参加していなかったNative InstrumentsやAbleton、その他ローランド、ヤマハ、コルグ、moog、DaveSmithといった大手メーカー、またはモジュラーシンセのブティックメーカーも多数参加。シンセサイザーの祭典と言えるイベントとなりそうです。
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日本と違って、ドイツ(ヨーロッパ)のシンセサイザーシーンの面白いところは、小さなメーカーが多く存在して活躍していることです。ベルリンにはそういった製品ばかりを取り揃えるSchneiders Büroという楽器店があったり、またはJust Musicという幅広い品揃えのある大手の楽器店でも、ユーロラックモジュールや日本ではほとんど知られていないようなメーカーのシーケンサーやドラムマシンを見かけることがあります。その一方ではAbletonやNative Instrumentsといったこの数十年間で急成長したソフトウェアメーカーもあったり、現在のドイツ(ベルリン)のエレクトロニック音楽の層の厚さや勢いには並々ならぬものを感じます。
さて、今週は実にラッキーなことに、MFBが新しくリリースしたばかりの2種のアナログドラムマシンTANZMAUSとTANZBÄR LITEを試す機会を得ました。MFBもベルリンに拠点を置く、特にテクノ・エレクトロニック系ミュージシャンの間では知名度の高いガレージ・メーカーの一つです。
MFBの新しい2種のアナログドラムマシンは、同社のMFB503とMFB522の後継機で、TANZMAUSはローランドTR-909、TANZBÄR LITEはTR-808のクローン的な位置付けと言えばイメージしやすいかと思います。TANZMAUSはドイツ語で「踊るネズミ」、TANZBÄRは「踊る熊」という意味で、これまでのドラムマシンにはなかったネーミングがナイスです。小さくてキュート、1950年代のドイツではブロンド髪のポニーテイルの女の子がペチコートスカートを履いてロックンロールのリズムに合わせて踊るのが流行だったそうで、そんなイメージが背景にあるようです。
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世界で最も有名なクラブの一つとされるドイツベルリンの「トレゾア」。ベルリンの壁崩壊から間もない1991年に開業、東西統合の象徴としても歌われることもある伝説のクラブだ。今なお人気クラブの一つとして存在するトレゾアだが、2000年前のカリスマ的な輝きは失われつつも、東ベルリン時代の火力発電所を改造したおよそ8000㎡のイベントスペースを有する「巨大さ」はやはりカリスマクラブというにふさわしく、一度訪れたら忘れることのできない独特なオーラを放っている。
人気音楽ウェブサイトFACTは、この「トレゾア」のオーナーDimitri Hegemann が現在アメリカデトロイトを訪問中というニュースを報じている。
Dimitri Hegemann が訪れた元自動車部品工場Fisher Body Plant No. 21 は、ほとんどすべての壁に落書き、半分以上の窓は破壊され、ガラスの破片やアスベストが至る場所に散る廃墟ビル。しかしDimitri Hegemannはこの廃墟ビルをシリアスなテクノクラブに改造することに意欲的だ。この荒廃した様子はかつて彼がドイツベルリンで「トレゾア」を作った時と同じような状態だと言う。
Dimitri Hegemann はこの後にデトロイト市の役人との面会をし、この廃墟ビルの再開発に関する提案を行った。具体的な交渉までには至ってはいないようだが、敷地購入という選択肢は残されているそうだ。
しかしDimitri Hegemann が乗り越えなければいけない問題はまだ多くある。クラブについて否定的な規制取り締まりの存在。失業問題、人種問題、犯罪問題など多くの社会問題抱えるデトロイトの住民がそろって巨大クラブの誕生を喜ばしく受け入れることができるのかどうかという点については疑問が多い。
また、デトロイト市では午前2時以降のアルコールの販売提供が禁止されている。夜中の12時にクラブが開店し、午前1時30分になって人々がやってくるベルリンのクラブシーンとは状況が異なる。しかしDimitri Hegemann は「夜はクリエイティブな人々のための時間なのだ」と強調する。では、午前中から午後にかけて営業するアフターアワーパーティというコンセプトはどうなのか?という問いに対してはDimitri Hegemann は「ヨーロッパ人として言うのであれば、それは全くありえない」と答えている。
デトロイト市は2013年7月に財政破綻。負債総額は180億ドルを超え、アメリカ自治体としては過去最大のものとなっている。一方、デトロイトの音楽産業は2013年では10億ドル相当の売り上げを記録している。
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結成21周年を迎えたドイツのテクノデュオ Mouse on Mars がイギリスFACT magazine にて「21分間で21曲のトラック制作」という企画にチャレンジしています。
およそ1曲に付き1分という過酷な制限時間。しかしさすが、21周年を迎えたベテランアーティストのスタジオワーク、チームワークは抜群で、見事な集中力でチャレンジをクリアーしていく様子を伺うことができます。アナログシンセであろうがiOSアプリであろうがサンプリングであろうが、あらゆるエレメントを詰め込みまとめあげてしまうパワーにはいつもながら驚かされます。先日発売されたばかりのMouse on mars のiOSアプリWretch Up も随所で使われているようです。
最後にJan St. Wernerが言った言葉が印象的です。「トイレのような小さいアレンジウインドウに向かっている仕事でも、アマゾンのような広大なものとなる。そこが音楽の美しいところなんだ」と。
Mouse on Mars 21周年記念アルバムは明日発売。
via FACT Magazine