先週、ドイツベルリンで開催されたMusic Tech Fest、音楽テクノロジーに焦点を当てたアカデミックなリサーチや実験的なデバイスの発表を行なう定期イベントなのですが、そのイベントでの今回の優勝者が見せてくれたものは「デジタルアルゴリズムとスタンドアローンハードウェアを合体させるプラットフォームAxoloti」 というものでした。
Axoloti はAxoloti Patcher というMax /MSPのようなソフトウェアを使ってシンセパラメーターパッチを作り、これをAxoloti Core というマイクロコントロールボードに転送することによってパッチが動作。さらにAxoloti Control というコントロールボードを使うことによってパッチを手で操作することが可能になり、コンピューターなしで、スタンドアローンのハードウェアとして使うことができるようになるものです。
ちなみにAxoloti Core というサーキットボードはステレオインプット、アウトプット、ヘッドフォン、 MIDI IN/OUT 、microSDカード、mini-USBポートのような端子を備えたデジタルオーディオプロセッサー。Axoloti Control というボードはLCDスクリーン、ナビゲーションボタン、4×エンドレスエンコーダー、4×4プッシュボタンを取り付けることが可能なコントロールプロセッサーです。
簡単に言ってしまえば、自分でデザインしたソフトウェアシンセサイザーをスタンドアローンのハードウェアシンセサイザーとして使うことができるもので、ソフトウェアをハードウェアに読み込ますというアイデアはローランドのAira Ststem-1 の持つPlug-Out 機能と同じようなことと考えて良いでしょう。上の画像で見えるように、簡単な段ボールのなかに二つのボードを詰め込み、ノブなどのコントローラを取り付けることだけで立派なシンセサイザーになってしまうのはとても驚きです。ソフトウェアからハードへの転送時間も、Airaと同様で1分もかからないものです。
私がイベントで見たシンセサイザーはまだ開発段階のもので、音的にはモジュラーシンセサイザーを鳴らしたかのような実験的なものでしたが、十分に楽しめるクオリティであるということは理解できました。ソフトウェアでのデザイン次第ではバーチャルアナログポリシンセ、エフェクター(コーラス、ボコーダー、ワウ、トレモロ、エコー)、サンプルルーパー、ドラムシンセ、16ステップシーケンサーのようなものを作ることも可能のようです。
私のようにプログラマーでない人にとってはまずはこの複雑そうなソフトウェア(画像下)を操作しなければいけないという難関があるわけですが、自分だけのハードウェアシンセサイザーを作ることができるかもしれないという夢は着実に近いところまでやって来ているということは確かです。価格的なことを考えてみてもこれらのサーキットボードは今の時代なら格安で手に入る物に違いなく、そう考えると今から少しでもプログラミングの学習を始めておくのは、この先、経済的においても、もっとシンセをもっと楽しむ点においても得策なのかもしれません。
Axolotiは現在プロトタイプ段階で、価格販売時期は未定です。
詳しくは公式ページよりどうぞ。
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TED Talk は、学術・エンターテイメント・デザインなど様々な分野の人物がおよそ20分のプレゼンテーションを行なう講演会のようなもので、講演内容はインターネットを通じ無料配信されています。ミュージシャンが登場することも稀にあり、これまでと違った考え方やパフォーマンスが披露されてきています。
Native Instruments のReaktorエフェクターThe FingerやThe Mouthの開発者としても知られるイギリスのミュージシャンTim Exile もTED talkに登場し、彼自身がデザインしたライブインストゥルメントThe Flow Machine を披露しています。
まずはオーディエンスの「おーー」という声をサンプリングし、この声を使ったTime Exile による即興演奏が始まります(ビデオ2分12秒あたりから)。音楽は静かに始まりますが、後半に向けスピード感を増していきます。リアルタイムで音楽を作り上げていくTim Exile の手腕にオーディエンスは魅了され、最後にはTEDの会場はダンスフロアーと化すのでありました。
Time Exile のライブインストゥルメントThe Flow Machineはボコーダー・シンセ・ドラムマシン・サンプラー・ルーパーが合体したユニットで、各コントローラを操作することによって機能がトリガーされていき、心臓となるプログラムにはNI Reaktorが使われているそうです。http://youtu.be/9r38r3BIgew
プログラミングへの情熱+ハードウェアへの情熱+Time Exileの音楽への情熱がブレンドされたライブインストゥルメントThe Flow Machine。テクノロジーを使った音楽のあり方についても考えさせられたTED talkでした。
日本人が普段見慣れている「回転寿し」、でも外国人がこれを見ると全く違うインスピレーションを受けるようです。例えば、回転レーンをシーケンサーにしてみるとどうなるのか?というRed Bull Music Academyによるエピソードビデオ。Native Insteruments によるテクニカルサポート、そしてビデオにはTokimonstaとJust Blaze がフィーチャーされています。
レーンの上に設置されたカメラが、回転皿の色を識別。それぞれの色に割り当てられたNI Maschine のシーケンスパターンやエフェクトがトリガーされる仕組みになっているようです。おそらく以前みたことがある「レゴシーケンサー」と同じ仕組みなのでしょう。
実際の効果の方はいまいち見て取ることができませんが、音楽と回転寿を合体させるアイデアは新しいエンターテイメント系レストランとなる可能性がなきにしもあらず?
みそ汁が出てきたらブレーク、大トロが出てきたらピークタイム、そんなドラマがあっても良かったかもしれません。
iPadやiPhoneのタッチスクリーンは確かに便利なものですが、ここぞという時の音楽的表現には物足りないものがあります。以前、このブログでもTuna Knobsという吸盤付きのノブを紹介したことがありましたが、インターラクションデザイナーFlorian Bornのアイデアはもっと大胆でクール。
アルミ製のフレームと3種類(ノブ・スライダー・スイッチ)のコントローラモジュールでiPad を覆うことによって、iPadをフィジカルインターフェイスに変えてしまうModulares Interface B.A。タッチスクリーンに「触れる」感覚を与えることがコンセプトとして作られたことが強調されています。
確かに、これならiPadを大胆にコントロールできそう。でもここまでしてiPadを使う意味があるのだろうか、、と、ぼそり。
製品化についての情報はいまのところないようです。
via Synthetopia
サウンドデザイナー・音楽家、Diego Stocco によるサウンドデザインのためのチュートリアルビデオの第3弾「クリエイティブ・マイキング・テクニック」のリリースが開始されました。
数々のプログインソフトウェアやコントローラが世に出回る今日この頃ですが、本当の意味でのオリジナルサウンドを作るためにはマイクロフォンを効果的にそして独創的に使うことが必要だと力説するDiego Stocco。ビデオでは様々なタイプのマイクロフォンを使い、様々な物を、いかにダイナミクスを保った状態で録音していくかが解説されています。
何をどのように録音するか、、というところでDiego Stocco は桁外れの独創性を持っています。
たとえば、2本の指に小型マイクロフォンを取り付けピアノの弦をはじく音。弦楽器の弓にマイクロフォンを取り付けた状態でコントラバスを演奏する音。2本の箸に付けたマイクでギターアンプからならされるシンセサイザーの音をステレオレコーディングをする音。医者が使う聴診器を改造し様々なアコースティック楽器を録音する音。大小さまざまなサイズの電球にコンタクトマイクロフォンを取り付けパーカッションのように叩く音。マイクロフォンを入れた風船を水の中に浸けた音。煉瓦を通して鳴らしたシンセサイザーの音をコンタクトマイクで拾った音など。
様々な物のバイブレーションを至近距離から捉えていく彼のレコーディングテクニックに圧巻。ワイルドでありながらも暖かな印象を抱く結果を見て聞くことができます。
ビデオを見ているだけでも十分に楽しめる内容ですが、自分でも何かしたくなってくるインスピレーションを湧かせてくれるビデオでもあります。
そしてDiego Stocco は最後に一言、「Everything starts with your imagination…」と。
FFS 03 // Creative Miking Techniquesは$9.99
アドビ システムズが公開したビデオ「The future of Adobe creative applications on Microsoft devices」はオーディオ・ビデオ・グラフィックアーティストに向けられた、アドビの将来のビジョン示しているデモンストレーションビデオです。どこまでが夢の話で、どこまでが現実的な話なのかは分からないのですが、そんなに遠い話でもなさそうなところが胸を躍らせます。
ビデオで取り上げられているコンピューターはマイクロソフトがこの夏にリリースをしたSurface Pro 3 。タブレットとPCを合体させたスーパースリムなノート型デバイスで、CPUには i7とi5 プロセッサー、高解像度ディスプレイ、大容量のRAMやストレージを装備するかなりのハイスペックなデバイスです。そしてWindows 8 デスクトップコンピューター用のソフトウェアを使うことができるところがiPad/iPhoneとの大きな違いです。
アドビが示す将来のビジョン(上のビデオ)はSurface 3 の持つデスクトップコンピューターとしての機能+タブレットとしての機能をうまく引き出し、タッチジェスチャーの次の可能性を予感させるものに感じます。音楽ソフトウェアにおいてもタブレットだけではできない、デスクトップコンピューターだけではできない、何か新しいソフトウェアが登場することを期待してやみません。