ムジークメッセ 2013ではAlex 4のブースの奥の方で鎮座していたTrautoniks VT 2012。もとは、1929年頃にドイツで発明されたTrautoniumというモノフォニックの電子楽器で、鍵盤ではなく、横木の上に張った鋼線を押して演奏する、今でいうリボンコントローラ付きアナログシンセのような楽器。テルミンが発明されたのは1919年頃とされているので、そのちょっと後に登場したということになります。このTrautoniumは多くのホラー映画音楽で利用され、ヒッチコックの映画「The Bird」の音楽が特に代表的。クラシック音楽でもパウル・ヒンデミットという作曲家がこの楽器を使ったコンチェルト(1931年)を残しており、聞いてみると、最近のエレクトロニック音楽で頻繁に使われる「フィルターを開け閉めする」効果がつかわれていることに驚きます。興味ある方はYou Tubeよりどうぞ。シンプルな音色でありながらも、表現力の高いアナログシンセサイザーの元祖。

開発者の一人であるOskar Salaの死後とともにTrautoniumの生産は完了。しかしその後、ドイツのTrautoniksというメーカーによりこのTrautoniumのクローン機の生産が開始され、ムジークメッセで見ることのできたTrautoniks VT 2012はそのうちの一つだったわけです。Trautoniksは特注生産されているものですが、Trautoniks VT 2012(画像上)のほかに、CV・Gateコントローラモデル(画像下)、Mixtur-Trautoniumという見た目圧巻なモデルも用意されています。Trautoniks VT 2012はおよそ75万円するそうです。

このTrautoniksの受注を行っているのがドイツベルリンのアナログシンセサイザーショップSchneiders Büro。下のビデオでは現在ロンドンRough Tradeに展示中のTrautoniksの様子を見ることができます。案内しているのはアナログシンセ界の名物となりつつあるSchneider氏。


いっかい 「ベルリン楽器博物館」

いっかい 「ベルリンアナログシンセサイザーの聖地」

いっかい 「1929年生まれの電子楽器 オンドマルトノ」

 


ムジークメッセ2013ではAlex 4というヨーロッパ最大のアナログマシンのディストリビューターのブースに展示されていたMidiclock

このMidiclockはタバコの箱をちょっと太くした位のサイズのボックスで、これを使うとDAWソフトウェアとドラムマシンの安定した同期が可能になる「Midiクロック生成マシン」。

DAWソフトウェアが生成するMidiクロックは実は不安定な物で、微妙ながらもそのテンポに揺れをつくってしまうジッターという問題。たとえばBPMを120に設定していても実際のところは平均でBPM119.98になってしまうとか、ほんの0.02の違いではあっても、常にタイトなリズムを好むミュージシャンにとってこれは大敵。

このMidiclockをマスターにして、DAWソフトウェアとドラムマシンをスレーブ演奏させてみると、今までのルーズな同期演奏との違いに驚かされます。ノブを回すとBPMを変えることができるのですが、急激な変化でも混乱を起こしません。

Midi Out ×2 電源はUSBから。195€

midiclock


ムジークメッセ 2013  :  佐野信義氏率いるDetuneは、ニンテンドー3DS 専⽤ソフトウェア「KORG  M01D」を展示していました。この「KORG M01D」は、1988年のシンセサイザー「M1」をモデルとしたニンテンドーDSのソフトウェア「Korg M01」のリニューアルバージョンで、今回は「M1」のサウンドに加え、1991年のシンセサイザー「KORG 01/w」のサウンドも収録し、コルグファンとしては嬉しい内容になっています。懐かしのあのピアノの音もSFXサウンドも収録されています。

ニンテンドー3DSへの最適化(3D画面はあまり意味のある物ではないようですが、)、最大発音数は12音から24音に拡大され、SDカードへのセーブ、MIDIデータの出力も可能になっています。

しかしこのソフトウェアは「80年代へのノスタルジー」だけではではなく、内蔵する8トラックのシーケンサーとカオスパッドを使ってライブ演奏をできるのが面白いところ。それも、ニンテンドー・ゲームマシンのタッチスクリーンとタッチペンを使う操作は、他では見かけることのない21世紀のライブスタイル。このゲームマシンを音楽制作に使うというアイデアも佐野氏ならではの光るセンス。

「KORG M01D」はニンテンドー eShopを通し世界各国からの購入も可能になるということもあり、世界様々なメディアからの注目も集めている様子。シンセファンにはおなじみのCreate Digital Music (アメリカ)とDe:Bug(ドイツ)の二人のライター(画像上)も「ムジークメッセの他のブースとは全く異なった、日本ならではのアプローチ」に歓喜していたようです。確かに。これぞ「クールジャパン」。CDMの「KORG M01D」関連記事はリンクよりどうぞ。

 

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ムジークメッセでは見落としてしまい実物を見て来れなかったのですが、ZOOMは「マイクユニットを交換することができる世界初のハンディレコーダー」H6の発表をしています。6チャンネル同時録音が可能なH6にはXYマイクとMSマイクが本体に付属、ショットガンマイクと外部入力ユニットXLR/TRS inputはオプションとなるようです。6-in/2-outのUSBオーディオインターフェイスとしても機能。本体の正面に付いている4つのゲイン・ノブがナイス。価格、発売時期は未定。

 

  • XY mics capture stereo depth and clarity
  • Mid-side mics provide continuously variable stereo width
  • Four XLR/TRS inputs for external mic/line connections
  • Up to six channels of simultaneous recording
  • High-definition audio of up to 24-bit/96kHz
  • 6-in/2-out USB audio interface
  • Over 20 hours of operation with 4 AA batteries
  • Supports SDXC memory cards up to 128GB
  • Optional Shotgun mic and external XLR/TRS inputs available

 

ZOOM

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ドイツのアナログシンセメーカーMFBは、ドラムマシンTanzbärとシンセサイザーDominion 1を展示していました。まだプロトタイプの段階のようで、Dominion 1のシーケンサーとアルペジエーターは動作していませんでした。しかしサウンドはむちゃカッコよく、ごっついテクノミュージックを作ってみたくなります。もっとじっくりさわってみたかったのですが、デモンストレーターのUwe氏がちと怖かったっす。(下のビデオでサングラスをかけている人)

Tanzbär(800 euro)は今月中の完成予定、Dominion 1(1400 euro)はこの夏の発売予定


 

MFB


ドイツベルリンのアナログシンセメーカーJomoxが発表したユーロラックタイプのドラムモジュールModBase 09とModBrane 11。ムジークメッセ2013の会場では、ドラムパッドを使ったモジュールサウンドの演奏、Jomox XBASEを使ったシーケンス、プラス、Doepferのテルミン・モジュールを使ったデモンストレーションを見せてくれました。このセットアップ、個人的にはかなりの好み。モジュラーシンセと正面から向き合ってパッチングしていく「実験室」のような雰囲気とは違い、「音楽を演奏する」というアプローチをとることができるのはモジュラーシンセの新しい境地。ニューYMOはきっとこのあたりから生まれてくるのでは? 残念ながら会場のモニタースピーカーはごく小さいもので「jomox極太サウンド」を味わうことはできませんでしたが、jomoxならばその部分に関しては全く問題ないでしょう。

jomox