いよいよ3月8日に発売開始されることになったローランドの期待のAira シリーズ。ブログ「いっかい」では先日そのうちの一つであるボーカルエフェクターユニットVT-3 にさわることができました。さっそく今日はその報告をしてみたいと思います。
VT-3はその名の通り、BOSS VT-1 の後継機となるボーカルエフェクター。簡単に言ってしまえば、このVT-1/VT-3はマイクをつなげ、喋ったり歌ったりした声がロボットのように変化するエフェクターです。たくさんの機能が詰まっている機材ではないのですが、そのシンプルさが逆にこの機材の魅力で、今なおカルト的人気を誇っているVT-1です。Yahoo Auctionの取引価格はおよそ3万円。それを考えるとこのVT-3が21,000円というのは実にナイスな話です。
VT-1 はフランスのインディーロックバンドAirやスェーデンのエレクトロバンドKnifeなどがその使い手として有名。個人的にはVT-1と言えばドイツのエレクトロアーティストSiriusmoをまず思い浮かべます。(SiriusmoについてはこちらのYouTubeを見てみてください、3:18あたり、VT-1が机のセンターに置かれてます)
VT-3フロントパネル
VT-3 はその他のAIRAシリーズと同様に黒のアルミパネル、黒のプラスティックケース、緑の縁取り、緑のライトが光ります。そして同じくその他のAIRAと同様ですが、とにかく軽量です。
フロントパネルには4つのスライダーが並んでいます。左側にあるピッチスライダーを上に上げると声が1オクターブ上がり、下に下げると声が1オクターブ下がります。フォルマウントフェーダーを上に上げるとピッチはそのままの状態で声が女性的(初音ミクのような声)になり、フェーダーを下に下げると男性的な声に変わります。右側のフェーダーはリバーブエフェクターでミックスバランスとリバーブの量を操作することができます。リバーブの量を上げるとかなり大きなホールサウンドになり、クオリティも上質で真新しさを感じる部分です。残念なのはリバーブの種類や時間の設定ができないところです。
フロントパネルのやや上に並んでいる6つのスイッチ。まず左側のROBOTスイッチを押すと、ピッチは強制的に一定に保たれ、いわゆるロボット的な抑揚のないサウンドになります。
真ん中の4つのスイッチはセッティング内容を記憶させておくためのもので、特にライブパフォーマンス中にお気に入りのサウンドに素早く切り替えたい時には便利でしょう。セーブは3つまで、セーブ方法も簡単で、1~3までのスイッチを長めに押すだけです。一人で3役の声優をこなさなければならないなんて時にも便利でしょう。
マニュアルスイッチを押すとライブモードになり、フロントパネルでセッティングされているフェーダーやエフェクトタイプのサウンドに切り替わります。一番右側のバイパススイッチを押すとエフェクト無しの素のサウンドになります。また、フットスイッチをVT-3に接続することでこのスイッチを切り替えることもできるので、ライブ最中には便利なものとなるでしょう。
10種類のエフェクター
フロントパネル中央にあるダイヤル式のノブ。ここでエフェクターの種類を変えることができます。エフェクターの種類は10種類。
- Direct
- Auto pitch 1
- Auto pitch 2
- Vocoder
- Synth
- Lead
- Bass
- Megaphone
- Radio
- Scatter
VT-1にはなかった新しいエフェクターとなるのがSynth/Lead/Bass。これらはマイクで喋ったり歌ったりした声がシンセサイザーのサウンドになるもので、特に鍵盤を弾けない人にとっては嬉しいものかもしれません。Leadはテルミンのようなサウンド、低い声でBassエフェクターを使うとかなり深いサウンドになります。
MegaphoneやRadioはローファイで周波数域の狭い音になります。メガフォンといって思い出すのはやはりYMOの「体操」ですね。
Auto Pitch やVocoderはいわゆるいわゆる昨今のEDMで聞くことのできるボーカルエフェクトです。
Auto Pitchは微妙に外れた音程を自動的に正確なピッチに修正してくれるものと期待したいところですが、実際試したところ、よほど正確に歌わない限り思った通りのピッチにはなりませんでした。
Vocoderに関しても同様で、正確なピッチで歌わないと思わぬ場所にピッチが飛んでしまいます。本来ボコーダーはストリングスのようなサウンドをキャリアとして使い、声をモジュレータとして使うものではありますが、VT-3にはキャリアの入力がなく、これまでのボコーダーの代替品とはならないでしょう。
Scatterは今回のAIRAシーリズで大きく取り上げられているエフェクターですが、昨今のダブステップシーンで使われることの多いチョッピングエフェクトを作るものです。細かい設定ができないのは残念です。
まとめ
残念なのはAuto PitchやVocoderエフェクターで、うまい具合にピッチが安定しないところです。Vocoderに関しても本来のボコーダーと同じような機能が欲しかったです。
MIDIコントロールがサポートされていないのも残念です。フロントパネルに並ぶパラメーターをMIDI CC コントロールできればより面白かったような気がします。
VT-3にはその他のAIRAシリーズと同様にUSBオーディオインターフェイスが内蔵しています。DAWソフトウェアを中心に音楽制作をしている人にとってはこれは大きなプラスポイントです。
声を使うことで様々なサウンドを作ることができる楽しいマシンです。様々な声色を使うことや、声だけでなく様々な楽器を通すことでも楽しい実験ができます。使い方次第では他にはないオリジナルサウンドを得られるような気がします。
電子音楽界の殿堂入りアーティスト、ジョルジオモロダー。ディスコ音楽の父とも称されています。今でも彼がプロデュースしたドナサマーの「I feel love」や映画「ミッドナイトエクスプレス」のテーマ曲は今でも世界中のクラブで耳にします。ポップ音楽をベースにシンセサイザーを駆使して映画音楽やクラブ音楽に通じていった彼のアプローチは、音楽を聴いての通りとても親しみやすく楽しい音楽で、僕の尊敬するアーティストの一人です。
上のビデオは1979年、オスカー受賞後に出演したドイツのテレビ番組。でも、」もしかしてこれってフィンガーシンキング?!